第5話 寝ないよ冴える鳥のうた

 寝苦しいときの寝返りは無意識。体が楽な姿勢、環境を勝手に探してる。


 目が覚めた。隣には早織ちゃんも姉貴もいない。夢か、太陽は目を閉じても眩しいなあ。絵のうまい子としたお願いはかなわなかった。くもりの花火大会は結構多い。その子といつものみんなで花火大会に行った。晴れの花火大会の方が花火が綺麗に見えるから、だから晴れてほしいの。彼女が夏休み明け賞をとった花火の絵は、そりゃもう上手だった。本当の花火よりも綺麗だった。冴えない僕の絵は虫取りの思い出。かろうじて網を持った人がわかるくらいだ。


 セミの鳴き声のカナカナとなにやら楽しそうな早織ちゃんの声。だんだんと冴えてくる頭、重たい体。体を起こしてカーテンを閉めに行く。入道雲を飛行機雲が突き刺していた。あれはわざとできるのだろうか?どちらも姿を変えていく。夕方の風がカーテンを揺らす。夏の夕方の明るさと寂しさはなんとも言えない。日が長いと夜は短い。それでも夜に一人迷う。


 このぐうたらな生活は僕の人生の中できっと悪い思い出だろう。今は気分は悪くないけれども。姉貴にも友だちにも、まだこれからだよと言われる。まるで眠れない日の長い夜のよう。まだ明るくならないのか。まだ先があるのか。いつか明けることなんて知っている。知っているけど今が辛いんだよ。僕はいつだって弱い。

 夜眠れないと昼寝してしまう。だけどまさか姉貴と姉貴の子と川の字で寝る生活になるとは思わなかった。

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