最高級の笑顔を、あなたに――
――とまあ、「告白」とやらをしてみたわけなんですけどね……
「……で、両想いだとわかったわけだけど、この後どうする?」
「………………はぁ?」
思わず、変な声が出た。めっちゃ間抜けな声。
いや、さすがの私もそんなこと言われるとは思ってなかったのよ、うん。
だってさ、普通こうだよね?
告白をする
↓
「俺もだよ」
↓
両想い発覚
↓
付き合う
――これで一セットだよね? 告白の後にあるであろう分岐ルートなんて知らん。私にゃ関係ないからね、どやぁ。
んで、私達は見事全四段階のうちの三番目まで来たわけだけどさぁ……ここ、分岐ルート無いよね。普通に一本道。私間違ってないよね?
なので私は、彼にジトーッとした視線を送る。
「……逆に、付き合う以外の選択肢なんてあるの?」
「えーっと……例えば、『これからもずっと友達で居ようね』みたいな?」
「いやそれ告白断るときのセリフか、どこぞの仲いい小学生同士の会話じゃない? 高校生ならウジウジしてないでさっさと付き合うべきでしょこの場合。というかそもそも論として、付き合いたいみたいな願望ないわけ?」
「無くは無いけどさ……でも、よく言うじゃん? 『中学生とか高校生で恋人作っても、どうせいつか別れる』とか」
いや、ヘタレかよ。
両想いってわかっててもあと一歩踏み出せなくて、見ている側からするとじれったくもありもどかしさで怒りに身を震わせたりする、あのヘタレかよ。
見た目は、モテモテで女子なれしている雰囲気ムンムンのクセして、実際はヘタレとか……あ、やばいギャップ萌えする。
思えば、彼は何度も告白されているのは知ってたけど、今まで一度も誰かと付き合ってるって報告は聞いたことが無いな。……まさか私、昔から好意を抱かれてたりしたのかな? ……何その鈍感女。こんなイケメンに好意持たれてても気付かないとか、死刑ものでしょ。私の前にその女を連れてきて欲しい。この手でぶん殴ってやる。痛いからやらないけど。
……まあ、これについては後からまた聞くとして。
せっかくいい感じで告白したのに、すぐにこんなグダグダとか、あんまりじゃないかい? とびっきりの告白で、過去最高の自信あったのに……まあ、今回が初恋ですけど。その初恋が叶う瞬間とか、ロマンチックだったと思うのに。なお、うちの学校の校舎裏は雑草で溢れていますがその場所の何がロマンチックなのかという反論は受け付けてませんからね~。
……おっと。彼のあまりのヘタレさに、頭の中でいろいろ考えてしまったよ。
返答しよっと。
「それはさ、お互い受験やら何やらで忙しくなって、ロクに連絡を取らなくなって疎遠になるからって理由でしょ? 私達家近い系の幼馴染にとってはそんな気にする必要なーし。だから、このまま付き合ったとしても私達なら結婚できる可能性が……――っ!! け、け、け、結婚んん~!?」
結婚ですと!?
「中高生で付き合っても別れるから~」ってのは、将来を見据えてのことだったワケ? 遠回しなプロポーズだったってコト?
……え、ちょっ、待って。プロポーズは流石に早くない? だって、まだ私達付き合ってすらいないし、子供もいないし……あ、子供がいないのは当然か。間違っても「できちゃった婚」だとか不名誉な称号は貰いたくない。
というか、彼のことヘタレだと思ってたけど、逆に付き合う前から告白するようなプレイボーイだったのか……それもまた、ヘタレ認識からのギャップ萌えで良き。極論を言えば、彼に対してなら私は全肯定botとなりうるのだ。
しかし、彼は今更自分の言った言葉に込められた意味を理解したようで、「……あ、ちょ、ちがっ……違くないけど、違う! 撤回させてくれ!」と、顔を真っ赤に染め上げながら叫んでいる。
いつもは爽やかなオーラを振り撒いている彼の、こんなに焦っている姿は珍しい。珍しいの姿を見られて、嬉しいな。
そして、その珍しい姿を私がただ見ているだけというはずもなく――
「ふーん、俊之介は私と、け、け、結婚したいんだぁ……ふぅーん」
「結婚」のところで少し恥ずかしさや照れくささが勝ってしまったが、それでも見事(?)私のドSモードが発動した。
「だから……そういうわけじゃ……無くも無いけどさぁ……」
「正直に言ったら? 『俺は留衣のことが好きで好きでたまらなくて、結婚したいと思ってます』ってさ」
「ぐぬぅ……間違っていないせいで否定できない……」
悔しそうに拳を握り締める彼。なんか可愛い(全肯定bot発動中)。
「とっ、とにかく、俺達は付き合うってことでいいなっ!?」
「え~結婚じゃなくていいの~?」
「お、お願いですからもうその話はしないでください留衣様ぁ……」
「しょうがないなぁ……」
やれやれ、とあからさまな溜め息をつく私。もう満足は出来たし、やりすぎは何においてもダメだからね。
「――今度は、そっちから言ってよ」
彼の瞳を覗きながら、私は言う。
「ん? 何をだ?」
「察し悪いなぁ……もう」
「なんか……ごめん」
本当に申し訳なさそうをする彼。
仕方が無いから、助け船を出すことにする。
「付き合うんでしょ、私達」
「あ、ああ、そうだが……なるほど、分かった」
一拍。
彼は深呼吸をして、真剣な顔つきへと変化させる。
私も、心と、身体――主に、顔の部分の準備をする。
思い出に一生残してもらえるような。
一輪の花が、とてもとても美しく咲くような。
――そんな笑顔を、彼のために。
「留衣」
「なに? 俊之介」
「――俺と、付き合ってください」
「喜んで」
にっこり、と、私にできる、最高級の笑顔を、彼のためだけに頑張って創り出す。
自然に出るような笑顔は、これからたくさん見せれるだろう。
だからこその、全力で、最高の笑顔。
どうだろうか。
彼の記憶に思いっきり残るような、最高の笑顔になっただろうか。
それが分かるのは、数十年も先のこと。
私は――私達は、その時まで一緒に暮らせるだろうか。
――断言する。
絶対に、私達はずっと一緒。
彼となら、いつまでも飽きることの無い人生を送れそうだから。
ねえ、そうだよね――
――彼は、私の問いに答えるように、優しく、穏やかな笑みを見せてきた。
――ああ、これは絶対に、忘れられない思い出として残るだろうな……。
☆あとがき
二話目を出すことに抵抗が無かったわけじゃありません。
一話目の雰囲気を壊してしまいそうでしたから。
ですが、満足の行く話となりました。少なくとも僕は、ですが。読者の皆様がどう感じたのかは僕にはわかりません。
楽しんでいただけたら何よりです。
そして、この物語も本当に終わり――にはしません。ネタがたくさん湧いてきてしまったので。
ネタが尽きるまでは、不定期に、ぼちぼちと更新していく予定です。
面白いと思った方は☆やコメント等を残していってもらえると嬉しいです。
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