赤城あげはの見解
毎週月曜日の一時限目は数学です。二学期に入って、勉強にもそこそこ慣れて来ました。
いつもなら私の席は一番前、教卓のすぐ目の前の席ですが、今回は席替えの日に風邪で休んでしまい最後尾です。こんな席順は小学生以来なのでちょっと新鮮です。
それにしてもおかしいですよね。いつもならクラスの誰かがくじ引きの紙を持って来て、「お願い!赤城さん、一番前と交換してくれない?」と交渉してくるんです。私も最前列の方が授業に集中できるので、利害の一致ということで毎回受けています。仮にもクラス委員ですが、そこはクラスで仲良くしていくための処世術ということで黙認することにしています。
「ちょっと伊東!授業の邪魔なんですけど。」
「うおっキツいキッカワにバレた〜、すんまテーン、あはははは」
なぜか絶対嫌がっている最前列に座ってふざける伊東くんと、それに注意する美玲さん。美玲さんはルールに厳しいので、毎回丁寧に注意している。
美玲さんとはいいお友達です。お互い勉強面でも生活面でも高め合う部分が多いので、とてもいい関係を築けています。融通がきかないところを除けば、とても完璧な人物だと尊敬しています。
なにせ木村さんや鈴木さん、立花さん、橋本さんのように何時も一緒に行動して、おしゃれをして、出かけて、SNSに投稿して、といった高校生女子らしいことは苦手なので、恥ずかしながらお友達は美玲さんと、好きな本つながりで汐田さんくらいしか居ないです。男子でもクラス委員で同じの須藤くん、席が近い上田くんとしかお話したことがありません。クラスの長として、もっと交友関係を広げて、皆さんのことをよく知らないといけませんね。
それにしても。
「...やっぱり最前列の方が良かったですね。はぁ。」
後列だとクラス中が見渡せてしまって注意が散漫になってしまいます。先生の声も心なしか聞こえづらいほど、教室のざわめきが気になって仕方ありません。
数名スマホでゲームをしたり、紙を回して盛り上がったり...後ろからなら全部丸見えです。まるで違うことをしているクラスメートを見ていると、同じ授業を受けていると思い難い時が多いです。クラス委員として、何か解決策を考えた方がいいのか、いやいやそんな所まで気にかけるのはうざい、というものなのでしょうか。まあでも、特に誰かが目立って何かおかしなことをしていて授業が崩壊しているという訳ではありませんし。...最近は伊東くんが少し、少ししつこいくらいかな。それでも大きく妨げている問題では無いですし。何より美玲が場を鎮めてくれます。
何か問題があれば、担任の斉藤先生から直々にお話が来ることでしょう。
私の目の前に座っている渡辺さんを頼まれた、あの時のように。
渡辺さん、あなたは何を考えているの?
四月の出来事を、葉桜の色が鮮明に思い出される。
「あの、渡辺さんって...女の子、ですよね、」
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