第十五話 少女の狂気

あれから一週間。まなかは部屋に篭りっぱなしだ。


静那の方は元気そのものだ。もちろん、何が悪くて何を反省しなければならないかはきちんと教えた。その結果、自分からまなかの心配をするに至ったので、教育としては成功したと言えよう。


「まなか、起きてるか?朝飯持ってきたぞ」


と言いつつも、部屋の中からは出てこない。口調は元に戻ったが、人に対する懐疑心は強まってしまったようで、俺にすら顔を見せてくれない。たまに部屋に入れてくれるので、その時に色々と話を聞いている。


「お兄さん…いつもありがとうございます」


今日は起きていたらしい。扉越しだが返事が返ってきた。


「ドアの外に置いておくからな。しっかり食えよ〜」


俺としては、あまり刺激しないようにするべきだと考えた。故にしばらくは様子を見ようと思った。


村人との関係も良好である。顔見知りも増え、俺の存在を認められ始めた気がする。と言っても、基本的に村へ行くことはない。なぜか子育てに困っているおばさまが来るが、俺なんかの意見で役に立つのだろうか?


そして、成人と話すとイライラしてくる症状も緩和してきた。具体的には、何も感じなくなった。好きの反対は無関心だと誰かが言っていた。だが、俺は思う。好きの反対は嫌悪。無関心な人間というのは人生に必要ない人間。存在自体が救われる人というのが好意を抱いている人間ならば、存在自体が不愉快極まりない嫌悪感を抱く人間がその逆に位置するのは必然的である。

一方、無関心な人間は人生に必要でもなければ不必要でもないため、好きの逆ではない。


また、子供がここに来る回数も増え、静那にも数人友達ができた。まあ、向こうが一方的に静那に関わる形であり、静那にコミュニケーションをとる意欲は見受けられない。まなかもたまに、窓越しに庭で遊ぶ静那達の様子を見ているようである。そこは良い傾向だ。


子供達二人は、突然の環境の変化に驚いていたが、静那はそもそも興味がないし、まなかも特に聞いてこない。落ち着いたら質問攻めにあうだろうが、今そんなことを考えても仕方ない。


ーーーーーーー


私、何しちゃったんだろう。


静那ちゃんに刺されて、一週間。私は何もできなかった。お兄さんも心配してくれたけど、顔を真っ直ぐ見れなかった。どうしよう、このままじゃ嫌われちゃう。静那ちゃんもせっかく話しかけてくれたのに、謝ってくれたのに。


私は背中の傷を撫でる。跡形もなく消えているが、痛みだけは忘れられない。背中に冷たい何かが入ってくる感覚。同時に襲ってくる痛くないようで燃えるように熱い痛み。意識が飛びかけても感じたお兄さんの手の感覚。


気がつくと目に涙が溜まっていた。視界が滲む。ふと、窓の外を見てみると、静那ちゃんと見たことない子が遊んでいる。いいなあ、私もあんなふうにお友達と遊べたらなあ。どうして誰も私に構ってくれないんだろう。私のことを思ってくれないんだろう。静那ちゃんにはお友達がいるのに、私にはいない。私が話しかけても、相手してもらえないんだろうな。私だけ寂しい。なんで?なんで?なんで?なんで?


もう…イヤだ……。


ーーーーーーー


私に新しいお友達ができた!


静那ちゃんっていうらしいんだけど、可愛くてとってもいい子なんだ!私の遊びに付き合ってくれるし、ちょっと不思議だけど、守ってあげたくなるというか、一緒にいると、お腹の下の方がキュンってなって、なんだか泣いちゃいそうになるんだ。


静那ちゃんのくちびる、細くて折れちゃいそうなお腹、強く握ったら壊れちゃいそうな手。全部好き♡


今日も静那ちゃんとおままごと。今日はどんな静那ちゃんが見れるかな?どんな静那ちゃんも可愛いし、どんな静那ちゃんが見れても嬉しいんだけどね♪


あ、そうそう静那ちゃん、この間おもらししちゃったんだよ?私はお姉さんだから、お片付け手伝ってあげたんだ〜。普通はおしっこって汚いんだけど、静那ちゃんのは特別なんだ♪


静那ちゃんと結婚できたらなぁ…。


〜〜〜

さて、ややこしくなってきましたねw

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