二回目『起きた、けど』

「んー、まだ起きないのか……」


 静かな寝息をたてるお姫様の顔を見ながら呟く。


 僕が目を覚ましてから既に三十分は経過していた。

 なぜ正確にわかるかというと、服はいつの間にか着替えさせられているのに、腕時計はなぜかつけられたままだったからだ。方法は考えないことにした。

 どうやら、別世界と言っても時間の流れは変わらないらしい。

 横で寝ている少女この女の子が寝てくれていたおかげで頭の中が大体整理できた。


 今、僕のいるこの世界は、元々いた世界とは違う世界らしい。いわゆる、別世界……異世界と呼ばれるものだ。


 その名も――アルデ・ヴァラン。

 僕のもといた世界を、科学が発展した世界と言うなら、この世界は“魔法が発展した世界”と言うのだろう。

 なぜなら、驚いたことに機械なんてものはこの世界には存在しない。

 それはこの世界の始まりが大きく関係しているらしいけど……色々あって結局よくわからなかった。


 この世界では僕のもといた世界と同じく国がいくつか存在する。その中でもファーレント王国、ファーレンブルク神王国、アインガルドス帝国の三大勢力を筆頭に世界のバランスは保たれていた。

 この三つの国は、それぞれが『三大神』と呼ばれる神様の末裔が王となっている。


 だからこそ数百年の間、小さな争いはあれど、大きな戦争と呼べるものはなくほとんど平和な日常が続いていた。


 ――魔法。

 僕がいた世界には無かった神秘的とも言うべき力のこと。

 原理はファンタジー小説に出てくるような魔法とほとんど変わらない。


 でも僕の知っている魔法とは少し違っている部分もあった。

 この世界の魔法は、『基本魔法ノーマル』と『特有魔法ランク』と呼ばれる二つの分類に分けられているのだ。



 『基本魔法』は一般的な魔法で、魔力を宿した者なら誰でも使える初歩的なものとされる。

 昔は主に争い事に使われていたが、今は私生活でも使われるようになっている。と言うより、今はそちらの方が色々と重要視されているようだ。

 争い事、つまりは戦争の数自体が少ないのだから当然だろう。


 基本的に使う際には単純な詠唱が必要とされるが、騎士のように稽古すれば、ほぼ無詠唱で使うことも出来る。

 中には、稽古をしなくても無詠唱で使うことが出来る人もいる。いわゆる天才だ。



 『特有魔法』は一部の人が“発現”することによって使えるようになる。発現とは、特有魔法が使えるようになることの呼称らしい。

 発現する時には、詠唱すべき言葉が頭に浮かぶらしく、それを言うことで初めて特有魔法を使えるようなる。逆にこの詠唱を行わなければ、特有魔法は残念ながら発現しないらしい。


 これは個性みたいに、一人一人違った属性や効果になる。

 時折似たようなものが発現することもあるらしく、特に血の繋がった親子や兄弟で発現する場合が多く確認されているとのこと。でも、それも極めて稀らしい。

 特有魔法と言う名前の通り、基本魔法より必然的に能力は上回っている。


 特有魔法は誰が、いつ発現するかは全くわからず、産まれたての赤ん坊から死ぬ間際の老人までと幅は広い。僕としてはどうやって詠唱したのかが気になるんだけど……。詠唱自体したこともないんだから、そう簡単に忘れるはずがない。記憶力は元々良い方だし。まぁ、今は置いておこう。


 例えるなら、基本魔法がマッチで、特有魔法が火炎放射器ぐらいだ。ものによってはロケットランチャーとかミサイルとか、とにかくすごいものになるらしい。どちらの魔法も、使うには魔力・・が必要になる。

 身体の中に流れる魔力を、空気中の魔力マナと融合させて新しいものを現出させる……。正直に言って良くわからない。なにせ今まで触れることのできなかった事だから仕方ないだろう。


 まぁ、根底にあるのは、身体に流れる魔力が無ければ魔法は使えないってこと。

 でもそんな人は、ちょっと調べてみたけど、この世界の歴史上でも数える程しかいない。それこそ千年に一人二人程度。

 特に有名なのは、アインガルドス帝国の初代皇帝も身体に魔力を宿していなかったから、魔法を一切使えなかったらしい。

 もし、今のこの世界で魔法が使えない状態で生き残ってる人がいたら、すごく心の強い人なんだろうな、なんてことを思った。周りとは違う。たったそれだけのことで人はすぐにやっかみをつける。そんなことをしても、所詮はその場凌ぎで意味なんて無いのに。じゃなくて、今はこっちに集中しなきゃ。


 だから僕のこの知識を与えてくれるのも、特有魔法の一つなんだと思う。やっぱり詠唱をした覚えがないから、どうして発現したのか……あれだな。思い当たるのはあの夢だな。


 そんな摩訶不思議な世界に僕はいる。


 加えて一昨日、この子の父でもあるファーレント王国の国王が何者かによって殺された。

 これでバランスが崩れて戦争が起こるのも時間の問題だと思う。


 殺された、と言うことは暗殺か?

 どこの誰がやったのかは……わからないみたいだな。


 それに、どうしてこんな世界に来てしまったのかはわからない。

 こう言う風に異世界に来る場合は大抵、何かの意味を持っているはず。少なくとも僕が読んだ本ではそうだった……。

 なら、僕にも使命みたいなものがあるのだろうか。


「………………だめか」


 ため息が出てしまう。

 理由はわからないが、この世界に来た理由、またはそれに繋がるようなことはどうやらわからないようだ。もとの世界に戻る方法もわからず。

 この力はやっぱり微妙だな。しばらくはこの世界にいなきゃいけないみたいだ。と言うか、戻り方が全く分からない。どうやって来たのかも覚えてないもんなぁ。幸いなのか、もう心配してくれるような人もいないから、すぐに戻らなくちゃいけない訳じゃない。なら、戻る方法を探りながら、異世界を堪能するのも悪くないはずだ。


 そして、僕がいるのはその三大勢力の一つであるファーレント王国の城の、姫の部屋。

 で、いまだに眠っているこの子がこの王国の姫なのだが……顔を覗いてみるが全然起きる気配がない。

 もしかして――、


「――いい加減起きてくれませんか?」


「…………ば、バレた?」


 やっぱりか。と言うか本当に起きてたんだ。

 チラッと片目だけ開けて僕を見つめるお姫様。

 思わずため息が出てしまう。こういう人をいたずら好きと言うのだろうか。


「どうして……それより、僕はどうしてここにいるのですか?」


 いくつか聞きたいことはあるが、ゆっくり聞いていこう。質問攻めされても困るだろうし。もじもじしてるから、僕としても聞きにくい。



「私が昨日庭園で、その、一人でいたら、急に目の前が光って、その光が消えたらあなたがいたの」


「光って、消えたら僕が……」


 目が泳いでいるのは緊張でもしてるのかな?

 ほんとに本にでもなりそうなありきたりな異世界転移のようだ。僕は彗星にでもなっていたのか?

 まぁ、今さらその事について考えるつもりは無いけど。原因がわからないんだもん。


「うん。それで、その、……えっと、私があなたに、ひ、ひ……」


 言いにくいことなのか、言葉がちぐはぐだった。

 無理に聞き出すのも悪いか。


「一目惚れしたの!」


 つい一昨日に王様が――つまりお父さんが殺されたと言うのに、そのすぐ後にそんな怪しい僕を自分の部屋に置き、あまつさえ一緒に寝るなんて……凄いなこの子。……いや、違う、逆なのか。


「それで、私はあなたのことを一目惚れしたから、一緒に寝ることにしたの」


 一回言ったからなのか、照れながらだったけど“一目惚れ”をスラッと言ってのけた。


「そう言うことでしたか。まぁそれならばなっと……く?」


 ――ん? 今、何て言った? さすがの予想外な発言に理解が追い付かなかった。だって、初めてだったから、なんてのはさておきだ。思わず姫様の顔を凝視する。


「でも大変だったのよ。あんなに反対されるなんて思ってなかった」


「それは当然でしょう! あなたは一国の姫である上に、なおかつ、ついこないだ――」


 僕は先を言ってはいけないと思った。いってしまったら、何かが崩れてしまうような不思議な、でも強いものが込み上げたんだ。

 だから、


「……大体わかりました。では、僕が何者なのかご存じですか?」


「わからないわ。何者であっても私が一目惚れした、それでいいの」


 胸を張ってそう言いきるお姫様。


「………………えぇ?」


 今、とんでもないことを聞いたような気がするが、気のせいだよな?

 たとえそれが気のせいでなくとも、王国のトップであるお姫様ともあろうものが、自分で言うのもなんだが何者かも知れないやからと結ばれていいはずがない。

 僕が口を挟むことじゃないだろうけど、自覚が無さすぎるんじゃないか?

 確かに国の政治や政権に詳しい訳じゃない。そんな僕でもさすがにこの状況が異常なのはわかる。


 ……周りの人たちはいったい何をしているんだ?


 そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえ、


「ミルダです。姫様、お話がございますので入ってもよろしいでしょうか?」


 そのすぐ後に凛と透き通った声が耳に届いた。

 優しくて、同時に落ち着いている印象が持てる綺麗な女性の声だった。


「ミルダね。入って」


 そして、扉が開き、入ってきたのは――、


「失礼します」


 セミロングで全体的に整えられた黒髪が……いや、黒ぶち眼鏡が目立ち、スーツのような服を着た女性だった。いかにもお姫様の付き人っぽい人だ。瞳は眼鏡越しでもわかるほど綺麗な水色だった。


「おはようございます、姫様」


「おはよー」


「おはようございます」


 さすがは姫様の付き人。しっかりしてるなぁ。


「それはそうと姫様、一つよろしいでしょうか?」


「なに?」


「…………え?」


 今、一瞬にして一本のナイフが目の前に飛んで来て止まった。

 僕は驚いて動けなくなってしまう。

 そんな中、黒ぶち眼鏡の女性がキリッとした表情を崩さずにこうなった経緯いきさつを説明した。


「この怪しい者を抹消してもよろしいでしょうか?」


「ち、ちょっとミルダ!?」


 ものすごく簡潔に。……って、いやいやいや、許可出される前から抹消されかけてます!

 確かにその反応・・・・が当たり前だと思うのですが、やめていただけますか!


「……あ、あのぉ」


 声が出ないぃぃぃ!

 かなり焦っているのか思うように舌が回らない。って言うか、なんでナイフが浮いてるんだよっ!?


 その理由は、このナイフの持ち主である女性、ミルダ・カルネイドがエアーズ・コントロールと言う触れたものを自由に動かせる特有魔法を使っているからである。


 ……なるほど。やっぱり便利だな、これ。


「姫様っ、なぜ止めるのですかっ? こんな怪しい者をあなたがお目覚めになるまで待っただけでも、私にとってはどれだけ気絶しそうになったか!」


 そんな自分の能力に感謝している場合ではないことを、ミルダと呼ばれた人は姫様を見つめながら自身の意見を訴えていたことで思い出した。

 この能力は便利だけど時と場合を考えなくては駄目だな、と思う。


「て言うか、それよりこれをよけてください!」


「だから、それは昨日説明したでしょ! この人を私のそばにいさせるって!」


「私は反対したはずです!」


 二人はまるで僕がいないかのように僕を挟んで言い合っていた。

 無視なんですね。それより、このナイフを……て、お姫様、今なんと言いました?

 この人をわたしのそばに?

 ……頭が回らなくなってきた。

 …………少し頭の中を整理しよう、無視されるし。


 そんな僕を置いて、二人は今も言い合いを続けている。


「だから、ミルダ、何度言ったらわかるのよ!」


「姫様こそ、このミルダ、さすがに今回の件は見逃すわけにはいきませんっ」


 二人とも似た者同士なのか、なかなか譲らない。

 でもこんなにお互いの気持ちをぶつけ合えるのは、どこか羨ましいな……。

 そう思ったときだった。

 今、姫様には一番言ってはならないことを、ミルダが言った。


「国王亡き今、あなたまで失う訳にはいかないのです!」


「あっ、……それ、は……」


 僕は二人の気が済むまで待つつもりだった。

 そうしようと思っていたが、それでも、この言葉にはさすがに口を挟まずにはいられなかった。


「ミルダさん!」


「なんですか! あ……姫様、ですから――」


 ミルダは名前を呼ばれて反応してしまったが、声の主がわかった途端に話を戻そうとしたが戻せなかった。


「いい加減にしろぉ!」


 先程から無視していた怪しい者僕みたいなのたが声を張り上げたからである。

 さすがにこれを無視することはできなかったらしく、驚いた表情をしてこちらを向いた。 


「ミルダさん。すみませんが、それ以上何も言わないでください。僕も怒りたくないんです」


 そう言って僕は当たり前のように、今にも泣きそうな顔をしている隣のお姫様の頭をそっと撫でた。

 すると、それがきっかけになったのか、姫様は僕に抱きついて大声を上げて――泣いた。一国の姫ではなく、一人の少女として……。

 それと共にずっと僕の目の前で動きを止めていたナイフは、それが当たり前のように布団の上にポスッと言う気の抜けた音を出して落ちた。


「う、うわぁぁぁぁぁん! おとうさまぁぁぁぁぁぁ! うぅ、ひっく、ううぅん」


「そうだよな……悲しいよな。なんでって思うよな。大丈夫だ、ここには君を縛るものはないよ」


 僕は姫様を撫で続けた。

 これしかできないと思ったから。

 僕が両親を失ったときにしてほしかったこと。

 そして、両親の代わりに僕を育ててくれた祖父母がやってくれたこと。


 なんでこの異世界に僕が来てしまったのかはわからない。

 でも、本当の原因なんてどうでも良い。

 偶然なのか何なのかはわからないけど、怪しい者と言われる僕を助けてくれて、僕と同じように親を失ったこのお姫様この子を放ってはおけない。


 国の事情なんて難しいことはわからないけど、僕はこのお姫様と一緒にいてやりたい。


 そうだ、僕にとってはそれだけで充分だ。

 僕は馬鹿だな……。こんなに幼く、弱い子が一国を背負うなんて重すぎる。そんな簡単なことさえわからなかったなんて……、ほんと、馬鹿だ。それにもしかしたら、僕も――。


 だから、決めた。


「……ミルダさん」


 目の前の現状が信じられないと言ったように呆然と立ち尽くしている姫様の付き人に声をかけた。

 途端、表情をキリッとしたものに戻してここに来て初めてまともな返事をしてくれた。


「はっ、なんですか?」


 相変わらず嫌われてるようだけど。

 まぁ、そんな簡単に受け入れてもらえるはずもないか。逆に今の現状では余計に怪しい者にされてるんだろうな……。


「お願いがあります」


「お断りします」


 あぁ、そう返ってくると思っていました。

 ですので、お返しにさっきのミルダさんを真似させていただきますね。


「僕を姫様を守る騎士として、鍛えていただけないでしょうか?」


 王国と言うからには、国を守るための騎士がいるはずだ。

 だったら僕がそれになってしまえば少なくとも部外者ではなくなる。


「お断りし、ま…………あなたはご自分が何を言っているのか理解していただいてるのですか? それはこの私に、姫様のお側に怪しい者を近くにいさせろと言っているのですよ」


 目付きが変わっていた。

 さっきまでもそうでなかったわけではないが、それよりも真剣な表情をして、と言うより明らかに睨んでいる。


 でも、屈するわけにはいかない。

 僕だって半端な気持ちで決めた訳じゃないんだ。ここで押し負ける訳にはいかない。


 今のこのお姫様この子には、誰かがそばにいてあげないと駄目な気がするんだ。僕にとっての祖父母のような存在が。

 調子に乗っているように思われても良い。できることなら、僕がその存在になってあげたい。


「……僕も両親を小さいときに失いました。だからって言うわけではないですけど、この姫様の気持ちはわからなくもないんです。国や政治より、誰かにそばにいてほしいってどうしてわかってあげないんですか!」


「なっ、それはあなたに言われなくてもわかっています。姫様はまだ幼いですが、一国の姫様として産まれたのですから、その覚悟はできていなくてはならないのです! 部外者のあなたに、何がわかるんですか!」


 あぁ、……そうか。

 この人はその存在になろうとしてたんだ。

 それなのに周りが、何より付き人として仕えて、一番そばにいたからこそ、その自分が許さなかったんだ。


「なら――僕と決闘してください」


「それはっ、まったく、どういうつもりなのです」


 驚いた表情を一瞬だけ見せたが、すぐにもとのキリッとした表情に戻し聞き返してきた。

 それもそうだろう。


 ――決闘。

 それは、この世界で互いが自分の意見を譲らなかった時の最後の方法として使われる。

 負けたものは勝者に従う。

 その決闘での勝敗は、どちらかが降参するか、気絶したりなどの戦闘不能になるか、あるいは――死ぬか。

 古くから行われてきた儀式のようなもの、らしい。


 それをいきなり言われたのだから、驚いて当たり前だよな……。


「ミルダさんが勝てば、僕を煮るなり焼くなり何でもします。ですが僕が勝てば、王国の騎士として鍛えてもらいたいんです」


「…………」


 ――ミルダは少し考えた。

 姫様に気に入られていようと、この怪しい者をできるだけ早くに抹消しなければならない。だがしかし、それは姫様が許さない。が、決闘と言う儀式の上でなら姫様には申し訳ないが、可能ではないか、と。

 そもそも、こんな怪しい者に負けるはずがない、とも思った。


「良いでしょう。その決闘、受けて差し上げます」


 相変わらず表情は崩さないまま受けてくれた。


「では、すぐに移動しましょう」


「なぜです? ――そう言うことですか、わかりました」


 僕はすぐにと言うことに疑問の表情を浮かべたが、姫様が泣き疲れて眠ってしまっているのに気付いてくれたらしい。


 そぉーっと起こさないように眠ってしまった姫様をベッドに寝かせ、ミルダさんの後に続いて部屋を出た。




 ーーーーーーー




 勝たなければお姫様ともお別れになってしまう。

 それどころか、この世とも……。

 どうしたものか。

 思わず見惚れてしまいそうなほどスタイルの良いミルダさんの後ろを歩きながら勝つ方法を考える。

 ……だめだ、変なことは考えるなよ。


 まぁ、僕自身もずぶの素人と言うわけでもない。

 相手はいつ戦争が起こるかわからないようなこんな世界で育ってきて、国のトップであるお姫様のそばにいられる人。

 かなりの実力のはず。


「武器はこちらで用意します。希望はありますか?」


 そんなことを考えていると前を歩いているミルダさんから声をかけられた。

 僕ではなく、歩く方を向いたまま。


「そうですね。…………棍棒があればそれでお願いします」


 使える武器と言ったら考えなくてもそれしかない。剣や銃、ましてや魔法なんて使いこなせないから。使ったこと無いから、当たり前だよな。


 だから祖父母の家で振り回して、すごいなと褒められたものにした。

 ちょっと違うような気がするが、そこは気にしないことにしよう。


「わかりました、用意させます。ですが、私に勝つことなんて、あなたのような素人には不可能だと思いますが」


「どう思われようと構いませんよ。僕は負けませんから」


 いつの間にかあなたと呼ばれるようになってる。怪しい者と比べるとちょっと嬉しいかな。


 だが、確かに言う通りだ。

 でもだからこそ、負けられない。

 この世界で生きていくには、姫様と一緒に居るためにはそれくらいの覚悟を持たなくてはやってられない。

 僕自身のための戦いでもあるんだ。



 ――これから戦争が起こりうる世界。

 そんな世界で生きていくためには強さを身に付けなければならない。己自身がまだ弱いと言うことを、彼は理解していたのだ。

 彼自身の強くなるための一歩として、決闘が行われようとしていた。

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