PHASE 10 :ロマンだけならMEGAサイズ
ドーン、と鎮座する、2mはあるリボルバーハンドガン。
いやもはやこれは……
「リボルバー……カノン?」
「その通り。
40mm砲弾を使う。
こんな見た目だけど、ちゃんと駐退機も複座機もある。
しかもその機構の応用でリボルバーだがガスカッティングが起こらないよう撃つ時は完全に閉鎖出来る!」
「本当に砲では……!
でも、なぜそんなちゃんとした砲をこんな……」
そう、その説明はこのリボルバーカノンの前半分にしか適用されない。
そのグリップは、そのトリガーは、
まさに巨人の腕で引き金を引く為としか思えない。
「ああ、もちろん、
この武器を『使う者』は
まさか、とレギンレイヴは、先ほどストーネが出てきた巨大な扉を見る。
***
「オーライ!オーライ!
ストップ!!」
クレーンで吊るされた白い『装甲板』を、剥き出しのシリンダーやケーブルだらけの『フレーム』に取り付ける。
「ノービー!ズレてない!?」
「ズレてない!!大丈夫!!」
装甲板をフレームにつなぎとめる、黒髪ショートヘアーにメガネのどこか垢抜けない少女、
G.W.S.所属死神:『H&K G11』
銃種:試作型ケースレス弾専用アサルトライフル
弾種: 4.73x33mm ケースレス弾
TACネーム:『ノービー』
役職:『ブリティッシュサイド』研究員
座右の銘「無駄な物を無くそうという発想自体が無駄な結果を生む」
ノービーは、作業をしつつ手短に答える。
「PD、左手いくよ!」
「よっしゃ!任せな!!」
そしてクレーンを操る少し勝気そうな印象の女性、
G.W.S.所属死神:『ピダーセン・デバイス』
銃種:ボルトアクションライフル半自動小銃化キット
弾種: .30-18弾
TACネーム:『PD』
役職:『ブリティッシュサイド』研究員
座右の銘「秘密兵器だからって使わないのはもったいない」
PDはまた別の装甲板を持ち上げて、反対側の『腕』へ持っていく。
「な……!!」
ブリティッシュサイド、大型実験室。
そこには、巨大人型ロボットが横たわっていた。
レギンレイヴは、「とうとうやってしまった……!」という驚きのまま口を押さえてしまう。
いつか、やるとは思っていたのだが、こんなに早くとは……!
「重機用のシリンダーやら、電車用のモーターなどを頼んだのはこういうわけさ!」
「……用途を言ってしまえば、そりゃあ私は許可しませんけど……」
ミス・チャーチルの言葉に引きつった声で答えるレギンレイヴ。
その間にトコトコ歩いてストーネは近くのゴツくて厚いタブレットを持って、画面の何事か入力するわ、プロットとフランもやってきてノービーの手伝いをし始める。
改めてその人型ロボット、横たわっているが全長はサイズが8m程はある。
頭が大きく、3頭身。
目のように縦に長いセンサーやカメラの二つの線がデフォルメされたこのようで、大きな頭の脇のセンサーなのかスタビライザーなのか分からない部分がまるで女の子のツインテールに見える。
「……なんだかちょっと可愛いですね」
「ああまぁ、要求性能を満たそうとした結果かな。
頭がコックピットなんだ。最悪の場合おでこの装甲板が外れて視界確保が出来る」
「無駄に実用的な……」
「人間の世界の技術でも素材さえ揃えばこのぐらい出来る。
むしろ
「ええ!?なんで第4小隊がこんなものを!?」
「第4小隊の敵は、現代火砲が必要な程頑丈で強大、っていう以上に多岐に渡るのは身に染みて知っているだろう?」
さて、第4小隊『
EDFは、戦車から戦闘機、に搭載されている通常火砲から対空砲、速射砲まで、だいぶ大きい武器を扱う。
理由は、相手がただの幽霊、ただの悪魔ではなく、
物理的に大きかったり、数が尋常じゃ無かったりする場合や、
最悪の場合現代戦ができる相手もいるにはいるので、そのために使われる。
その中でも一番厄介なのが、
魂を食う怪物・魔獣、妖怪の類で、サイズが大きめの相手である。
「そういえば、重戦車だと森に住んでいる系の大型妖怪はキツいのは数十年前から問題になっていましたね……」
「でもあいつら、基本的に75mmか120は必要だったろう?
これでヘリもジャンプで落とせる機動力なのはズルいじゃあないか!」
「たしかに……あの手のは、私もたまに相手することになってしまいますが……
お恥ずかしながら、結構苦労します」
「そこでだ。
閉所や不整地でも一定の機動力を持ち、大威力砲を即座に発砲できる方法はないか、と思って……
そうだ、ならば、とこの『MEGA』を作ってみたんだ!」
「メガ?」
「
略して、MEGAだ」
横たわる巨大ロボ、『MEGA』を指してそう言い放つ。
「これと並行して、シーラ君が、大体の火砲を取り付けられる万能銃床を作っている」
少し離れた場所、一人で黙々と作業する金髪ストレートの少女が一人。
G.W.S.所属死神:『CBJ-MS』
銃種:サブマシンガンたまにPDW
弾種: 6.5mm×25CBJ弾
TACネーム:『シーラ』
役職:『ブリティッシュサイド』研究員
座右の銘「新しい弾丸ってロマンあるね!」
「これで、火砲組の死神がこれを使うことができるわけだ!」
はっはっは、と笑うミス・チャーチル。
「それで、これお値段おいくらかかったんですか?」
瞬間、北欧の冬より寒い声。
「あえっと、資料は一応……」
「機種転換訓練に消費弾薬や燃料代、整備代、どれほどかかるんでしょうね。
ああ、訓練場を使用後の整地にも費用は発生しますよ」
「いや、だからそれは一応こう、出そうと思ってたこの資料に……」
どさり、と地面に座り込み、顔を押さえて嗚咽を漏らし始めるレギンレイヴ。
「どうして……!
どうしてあなた達ブリティッシュサイドという死神達は!!
どうしてそう、予算のこと考えないで変なもの作るんですか!!!
もう太古の昔みたいに一品ものの魔法武器とか使う時代じゃないんですよ!!!!
戦いは数!!
数を揃えるということは、つまり経理が必要な物!!
私は!!まだ皆が槍と斧で武装してた頃から!!!
まだアインヘリヤルが、いわゆるバーサーカーがいた頃からずっと!!!
ずっとずっと彼ら兵士にまつわるお金や諸々の事をお世話してきた!!!
あの悪名高きエクセルですら夢の魔法だった時代から!!
紙だって高かった頃からぁ……!!!
うっ、うっ、うぅぅぅぅぅぅ……!!!」
ガバッと、赤く腫らした目でチャーチルを睨みつける。
「せめて最初に相談しなさぁぁぁい!!!
あなた方はこの世がお金と数字で動いていて、その動きを把握してないと損するって感覚がなさすぎますぅぅぅぅぅぅ!!!!!!
これをテストするにも幾らかかるか見積もるだけで2時間!!!
弾薬の手配に最悪3日!!!!
大体何でこれ動いてんですか!?!?」
「基本は、大容量バッテリーだ……」
「電気代だってタダじゃないんですよぉぉぉぉぉ!?!
いくら、ソ連の廃棄した原潜の原子炉を格安で買って自家発電していると言っても!!!
その維持費だってバカにならないのに!!!
お金がなきゃ死神でも戦えないんですよもうこの世界はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ボロボロ泣き崩れるレギンレイヴに、一同何一つ声をかけられない。
なにせ、そこまで考えていなかったのだ。
作ることしか……考えていなかったのだ。
「で、でも、既存の武器で相性が悪いならば、新しい武装も必要ではなくて────」
と、不用意に発言したのはプロット。
瞬間、凄まじい速度でその顔に手を当てて引き寄せるレギンレイヴ。
「────なぜ、あなたの使用弾丸がNATO規格に慣れなかったのか?もう忘れたんですか?」
「それは……!!」
「ええ、そりゃあ、7.62×51mm弾は問題は多かった。
でも、その威力にはアメリカには理由があり、そしてアメリカはかつての世界の盟主『だった』島国より規模も数も多い工業力を持ち、何より採用当時からずっと開発が続けられて完成され生産されている。
ベトナムでは無意味だった?
あの戦いが特殊なだけで、他の戦場ではやはりこの弾丸は必要だった。
そして何よりも、そのベトナムでは新しい弾丸の機種転換や新兵器の慣れに大きく時間がかかり泥沼化した」
「そ、その後採用された5.56×45mmだって、我々のブリティッシュ弾に比べたら!!」
「いいですか?経理的にはこれらの事態は正しいのです。
我々は、戦いにおいてポッと出の兵器を最初から信用する事なんてできない!!
未来がある?そんな不確定なこと、過去の実績と数字に比べたら圧倒的に無意味!!」
うっ、と言葉を詰まらせるプロット。
「そもそもブリティッシュ弾の評価だって、後出しに過ぎない!!
当時の事情を考えれば、アメリカの判断をただ間違いだと断じることはできない!!
EM-2、レディプロット!!
あなただって、M14と比べて全てが完璧とはいえない!!
いや!
アメリカですでに実績のあったM1ガーランドの系譜であり、アサルトライフル向きではなかった、ベトナムに合わなかっただけのM14は、その後も戦場を変えて使われている!!
これが、なんで容易に新兵器を導入しないかの答えでもあるんです!!」
そう言われると何も言えない。
実際、ブリティッシュ弾は使われていないのだ。
「だから、たとえロマンがなかろうと!!
新兵器の導入と開発は慎重に経理を通してやらなければいけないんですよ、このマッドサイエンティストどもがぁ────────ッッ!!!」
「───あ、いたいた!!
って、またブリティッシュサイドがレギンレイヴさん泣かせて説教されてるのー?」
と、そこで研究施設の入り口から、オンリーが入ってくる。
「あら、オンリーさん!」
「レギンレイヴさーん!!新しい死神受領したよー!
それがこっちのアニメ柄ファイルの方ねー。
あとこっちが昨日の作戦報告書ー。出撃して全員分ね。
それと、私の妹とミニーちゃんのセクター0の戦闘報告書。一応ざっくり全部見て漏れはないか確かめたけ」
途端、ぎゅ、とレギンレイヴはオンリーに抱きつく。
「れ、レギンレイヴさん……??」
「……第2小隊だけですよぉぉぉ……!!
ちゃんと、ちゃんとした書類を毎回出してくれるのはぁぁぁぁぁ……!!!」
そのままよしよし頭を撫で始めるレギンレイヴ。
あー、なるほど、となれた様子でオンリーはしばらくそのままになっておいた。
***
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