第13話 むせーんいんしょく △+▽さん??
ゴロロロロ……
言っときますけど、ドラ猫の発情期じゃ~ありません。
ゴロロロロ……
ゴロロロロ…… ガガガガ……
ピカン!! チュウ!?
(あの……小〇〇に何か言いたいことでもあるのでしょうか? ← 担当編集)
ピカン ガガ!
遠くで落雷があったようだ。
ピカン
稲光りが続いている……。
「あーあ。早く雷雨が遠のいてくれないかな……。俺こういう雰囲気が苦手なんだな」
杉原ムツキは窓の外の雷雨暴風を見上げながら、不安げに呟いた。
ピカン ピカン
「もしも、この近くに雷が落ちたら停電――こんな山奥で停電って、そんなの真っ暗になっちゃうじゃん」
ピカン ガガ……
それを言っちゃーお兄ちゃん! ホラー映画あるあるのフラグが立っちゃうんだから!!
ピカン! ピカピカ!!!
「あ。停電だ……」
いつも思うけれど、男子禁制の旅ってどうなんだろう。
あいつは、深田池マリサは佐倉川カナンと同室だし……。一方の俺は、いつも一人だし。
別に、あいつと同室になりたいわけじゃないけれど。……学校で変な噂がたったら嫌だし、ま~た先生達に白い目で見つめられる学校暮らしの毎日。めんどくせー。
そんなことよりも。
「停電か……」
ポツーン。杉原ムツキがベッドに座って、じ~としている。
「……みんな、大丈夫かな?」
彼は別室の深田池マリサ一同の女子軍団を思っていた。
「ま~た、トケルーンって俺に泣きついてくるんだろうな。あーめんどくさい」
ザザザーーー
窓の外を見ると、春風とは程遠い春の嵐。
突風が窓にあたって、ガタンッガタっと揺らしている。
「灯り……つかないな」
杉原ムツキが天井の蛍光灯を見つめて、呟いた。
「……今時、ヒューズが切れたなんて……ことはないよな。……もしかしてブレーカとか。わからん」
窓の外は暴風だ!
けれど、雲の隙間が所々にあって、その隙間から月明かりが室内を照らしてくれていた。
――くれていたといっても、まるで灯台の灯のようであり、サーチライトのようであり、ついたり消えたりを繰り返しているかのような、そういう暴風雨の中の月夜である。
「どうしよう?」
杉原ムツキは考える。
「俺、怖いの苦手なんだよな。本当は」
「……………みんな、どうしているかな?」
杉原ムツキが考える。
「しょうがないっか……確かめに行くか」
ベッドからよっこいせと立ち上がり、ドアを開けてとりあえず、廊下に出る。
ギーコ ギーコ……
廊下の床が軋む音が、暴風雨で揺れる雨戸のガタガタの音と重なって、しかも停電でかなり暗いから、まるでホラー映画の何かしらの始まりのシーンさながらである。
ギーコ ギーコ……
ギーコ ギーコ……
7は素数だけど、77は素数じゃない。これってなんか皮肉だと思はない、おにいちゃん??
「一人だと割り切れないけれど、2人……3人そろうと割り切れるか」
杉原ムツキは、ナザリベスが言った言葉を考えながら廊下を歩いていた。
「問題は、両側の2人は誰なのかだな……」
コン コン
杉原ムツキがドアをノックする。その部屋は深田池マリサ達女子軍団の部屋である。
「お~い、チウネル。いるか~」
彼の声掛けに、勿論、返事は帰ってこない。
なぜなら、女子軍団は屋上の天然温泉の露天風呂に一目散に行ったのだから。部屋には誰もいるはずはない。
「チウネルさ~ん。いるか~」
もう一度、声掛けをした。
「いないのか……。どこに行ったんだろ?」
ギーコ ギーコ……
ギーコ ギーコ……
再び、杉原ムツキは廊下を歩いて、
「天野さんは、どこなんだろ?」
時折、暴風雨の合間に見せてくれる月明かりが、かろうじて廊下を歩いている彼にとっての羅針盤である。
「天野さんだったら、ブレーカーのことも分かっているだろうけど……」
停電にブレーカーは関係ないと思うのだけれど、杉原ムツキはこういうホラー映画チックなシチュエーションが大の苦手なのだ。
だから、なんとか早く明かりが付いてほしいという一心で、もう、こんな不安を煽る暗中模索の停電を、彼は本当になんとか払拭させたいのである。
心情はパイレーツオブ……ナザリベスである。
(幽霊船で乗組員が月夜に照らされて、ガイコツになっちゃうシーンを表現したっかったのです。作者は……。まったく、深い意味は込めていませんよ)
むせーんいんしょく おりかささん??
こころがおーれた たかーださん!!
ゴロロロロ…… ガガガガ……
ピカン!!
しばらく歩くと――
ズザザーーン!!!
「うわ!」
近くの山の木に落雷があったようだ、かなり大きな音がした。
「くわばら……くわばら……」
あんた、古いね。……杉原ムツキが爆音に屈服、思わずヘナヘナと廊下にしゃがみこんだ。そして、
……両手でおへその辺りを隠そうと。
それも、古すぎるやろ!!
そしたら。
「ん? あのドア。空いてる……」
見ると、数メートル先の突き当りのドアが開いている。
スッ
杉原ムツキは、スッと立ち上がった。
なんとなく……その部屋に入ってみようと思ったのだ。
(ホラー映画あるある。忘れてない? お兄ちゃん……)
ギーコ ギーコ……
ギーコ ギーコ……
杉原ムツキは歩いた―― そして、
ギギー
ドアを開けて部屋の中に入っていく。
「……ここは、書斎??」
部屋の中に入った杉原ムツキ。
見渡すと、停電で薄暗いからよくは見えなかったけれど、時折雲の合間から見せる月明かりで、その部屋の全容がなんとなく分かる。
この部屋、そこら中にあるのが本棚だ。つまり、書斎と彼が判断した根拠がこれだ。
「もしかして、ああ! 作家の天野さんの書斎だな」
御名答! そう、この部屋は天野の書斎である。
当たり前だ。彼女は作家なのだから。すぐに、その解答を思いつくことは容易だ。
ゴロロロロ……
ゴロロロロ…… ガガガガ……
ピカン!! バケバケッ!? (← これ、お化けの〇太郎の弟ですよね? 担当編集)
暴風雨は以前降り続いている。
「あ、早く停電をなんとか……して…………」
杉原ムツキがボヤキ始めようとしたその時、ふと、彼は窓際の写真立てに目がいった。
「……写真立てだ」
別に言わなくても誰もいないのだから、でも、言っちゃいたくなるその心情は、停電による怖さの裏返しなのかもしれない。
何気なく気になって、杉原ムツキは窓際へと歩いて行った。
そして……写真立ての写真を彼はじーと見つめた――
その写真、
宇治金時を囲んだ3人、ダイニングテーブルに飾っていた絵と同じ構図の写真だった。
「――真ん中の人物は、もしかして天野さん?」
杉原ムツキが写真を覗き込む。
みんな笑顔だった。
真ん中の人物は女性だった。――その女性は、どこをどう見ても天野さんに見える。いや、そうなのだと彼は思った。
作家の書斎の窓際に飾ってある写真立て、その写真の中に天野さんが写っていないなんてことは、常識的に考えてあり得ない。
一方、両側の2人はそれぞれ男性と女性だった。
ギーコ ギーコ……
ギーコ ギーコ……
むせーんいんしょく おりかささん??
こころがおーれた たかーださん!!
廊下から誰かが歩いて、こっちに来ている。
(う~ん。ホラー映画あるある~) と、ナザリベスがどこからともなく言っている。
ギーコ ギーコ……
ギーコ ギーコ……
むせーんいんしょく おりかささん??
こころがおーれた たかーださん!!
「ダイニングの絵と同じ構図だ……というよりも、これ同じじゃん」
杉原ムツキが気が付く。
そう、この写真は、ダイニングでお茶とチョコレートを囲んで談笑していた時の、その部屋に飾っていた絵と瓜二つだった。
「どうして……同じ。…………ん?」
この疑問を、IQズッパ抜けのトケルンこと杉原ムツキがシンキングして、
「……天野さん。宇治金時をすくったスプーン。左手で持っている」
ゴロロロロ……
ゴロロロロ…… ガガガガ……
ピカン!!
書斎にかなり激しい稲光が差し込んだ!
「見ましたね……。トケルン」
「えっ!?」
杉原ムツキの愛称トケルンと言った人物、彼もおもわずびっくりした。
深田池マリサからはよく言われているけれど、彼女以外からそう言われたことは滅多になかった。佐倉川カナンくらいだ。
そのトケルンと言った人物が、自分の後ろにいるみたいだ。だから聞こえた。
「見ましたね……。その写真」
「……はい」
恐る恐る……杉原ムツキはゆっくりと振り向いた。
……なんとなくというか、はっきりとその声の主の正体は分かった。なぜなら、ここは天野の書斎なのだからだ。
見ましたね。というセリフは、勿論、この写真の持ち主だからだろう。
トケルンが振り向いた―― 書斎の入り口に立っているのは、そう……立っているのは!!
このお屋敷の主で作家の天野さん…………だった。
「見ましたね……。トケルン。私の宝物の写真を」
「見てません」
あからさまな大嘘を条件反射でついたトケルン――杉原ムツキ。
「いやいや、見たじゃん……」
と天野さん。
「見ていませんって」
杉原ムツキ、ヤバいぞ!!
左手に包丁!? を持っていて、その包丁を彼に向けて言い放った。
ちなみに、右手には……なぜか魚の鰤の切り身である? どうして??
「あら、ウソは無銭飲食の始まりですよね」
そんな慣用句はない。
「お、俺はウソはつかなーい!!」
杉原ムツキ、ナザリベスの口癖をなんとかアレンジしてこの場を逃れたい一心で、……その内心はというと。
お……俺、殺される!?
続く
この物語は、フィクションです。
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