第24話 妹のために
四人の〈大災害〉の幹部に、僕たちの足は自然と後ろへと下げられる。
「神野王、そしてアリーゼ・アーカイブズだな。お前たち二人をいただきに来た」
筆頭として話す女の顔を見ていると、そいつは早乙女の視力を奪った女に違いなかった。
確か、書類で見たな。
「シャイン、だったか」
「そうか。お前、私の名前を知っているのか」
「ああ。我々環境軍は、お前たち四人の名を全員知っている」
そう僕が言うと、四人は一斉に身構えた。
名を知られているということは、能力も知られているに等しい。つまり、能力を隠す必要性は皆無ということになる。だからこそ、彼らは瞬時に能力を発動した。
溶岩が空から降ってくる、が、早乙女は風を操れる。早乙女は風で溶岩を海の中へと葬った。
海の方を見てみると、あと十分ほどでこの島につく距離に船があった。
あと十分耐えれば、それでいい。
「いくぞ」
シャインがそう言うと、一斉に僕らに襲いかかってくる。
シャインは僕へ襲いかかり、手を刀に変形させた女はシャインの援護をするように後方から支援している。
「金属のような刀、お前はソードか」
「ああ。それがどうした」
シャインの腹を僕が蹴ると同時に、ソードは飛びかかって刀と化した腕で僕の肩から横腹にかけてを斬る。が、かすり傷程度。それならば痛くもかゆくもない。
僕はソードの目を凝視し、能力をコピーする。
「借りるぞ、その力」
僕は腕をソードと動揺に刀に変え、その刀でソードの首を跳ねようとするが、ソードは首もとを金属と化して、僕の刀を弾いた。
すると、死角からシャインが現れ、僕の目を凝視する。
このままだと、僕の視界は真っ暗になる。その前に……
僕は蹴りでシャインを吹き飛ばし、吹き飛んだシャインへとどめを刺そうとするが、ソードが腕刀を僕へと進める。
「邪魔だ」
弾こうとするが、ソードの力に刀同士は火花を上げてそこに滞在する。
背後を見ると、爆発と溶岩が三人を襲っていた。
「爆発のヒューズ、溶岩のラヴァ。あいつらまで……」
だが目の前の女二人に足止めをくらい、援護できそうにない。
「暴風壁」
早乙女は風を操って爆発を遮断し、溶岩すらも周囲へと吹き飛ばす。
そして溶岩を放った直後のラヴァへ、戦が尻尾を振るってラヴァを吹き飛ばした。
骨が折れるような音がゴキッと鳴り、ラヴァは腹を押さえながらもゆっくりと立ち上がった。
頭からは知を流しているが、本人はそれを気にしていないようだ。
「ヒューズ。何をしていた」
と言ってラヴァがヒューズを見ると、ヒューズは爆炎の中、口から煙を吐いて意識を失った状態で現れた。対して、その中から無傷でアリーゼは姿を現した。
「ヒューズと言ったな。お前は、私を舐めすぎだ」
アリーゼが拳に火炎を纏わせ転がるヒューズへと殴りかかろうとすると、ラヴァが手をアリーゼに向け、溶岩を放つ、がこれは当然のようにして早乙女の操る風によって弾かれる。さらに、弾かれた溶岩はラヴァ当人へと戻ってくる。
「う、嘘!?」
溶岩にのまれ、ラヴァはちょうど背後にあった海の中へと転がった。だがそこで、溶岩と海が化学反応を起こし、ラヴァを覆うようにしていた溶岩は石のようになって固まった。
さすがの溶岩使いでも、海の中では命取りということだろう。
ヒューズを火炎で黒こげにしたアリーゼは、ソードとシャインと戦闘を繰り広げている僕を援護するようにしてこちらへと向かう。
「神野、そんな奴、とっとと片付けな」
アリーゼが僕の前にいるソードへ手をかざすと、僕ギリギリで当たらないようにして火炎を放った。
危うく丸焦げになり欠けた僕は、アリーゼへと怒りの視線を向ける。がしかし、アリーゼはそのままソードへと走っている。
「『火炎滅却』」
高密度の火炎がソードへと降り注ぎ、全身を金属に変化させたソードの体をいとも容易く溶かしていく。が、すぐシャインが駆けつけ、アリーゼの脇腹へ拳を入れる、が、アリーゼは避けて蹴りでアリーゼを蹴り飛ばす。
砂浜を転がるシャインだったが、ソードを助けるため、シャインはまた立ち上がる。
「お
シャインがそう叫ぶと、彼女の目は紅く染まった。
シャインは全身に光を纏い、そして覚醒した。
「なあ、お前ら。お妹ちゃんに、手を出すんじゃねーよ」
憤怒に包まれたシャインの後方には、数千もの光の矢が宙に浮いていた。
「『光の
確か相手の瞳から光を奪うことしかできなかったはずのシャインは、今では覚醒して光を操れるまでに進化している。
「お前たちの敗因は私をあまく見たことだ」
光の矢が宙を進み、僕らの足元へと降り注いでいる。
早乙女が風で矢を吹き飛ばそうとしているが、光の速度で進む矢を、風の速度では止められない。
「消えろ。雑魚ども」
僕たちが逃げるという選択肢しかなく、逃げ回る。が、早乙女の足には矢が刺さり、そんな早乙女へ何十もの矢が降り注ぐ。
「早乙女ー」
矢は砂浜を刺さり、砂煙が舞う。
砂塵に塞がれた視界が徐々に明るくなってくると、その中には二人の者が見えた。
足に矢が刺さって転がる早乙女と、それを尻尾でかばう青薔薇戦。だが尻尾だけではかばいきれず、腹や肩、足などにも矢が刺さっている。
「戦!」
「神野。早乙女を抱えて速く逃げろ。こいつは俺があしどめをしておく」
「でも……」
血溜まりを見て黙り込む僕に戦は言った。
「この世でたった一人の女を救えるのは、この世で
そんな間にも、矢が進む。
それを戦は尻尾ではじく。
「神野。怖かったら逃げてもいい。護りたかったら死んでもいい。だがな、お前がいなくなれば、俺が悲しい。つまりこれは俺の自己満足だ。そうでも、別に構わないだろ」
風のように流れた笑顔は、僕の背中を押す。
僕は早乙女を抱え、走って逃げた。
「さあ始めようぜ。シャイン」
何千本もの光の矢は、一瞬にして戦の周囲を囲む。
「『ゲームオーバー』」
「『煙幕』」
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