第23話 火炎の島
日は経ち、この島で十日も暮らしている。
それに、僕はあれから夢を見なくなってしまった。
「神野。あれから何も夢見ないの?」
「ああ。最近は何の夢も見ないし、それどころか夢を見れたって思ってもただの悪夢だったりってことしかないんだ」
「悪夢って?」
テニスでスマッシュを打たれた後の返球のように、アリーゼは優しく問いかけてきた。
「最近見る夢はな、ずっと火炎に飲まれる夢。夢を見ている間、僕はずっと火炎の中にいる。そんな夢を、僕は見続けている」
「火炎……」
どこかの像のように考え込むアリーゼ。
僕はあの夢が何なのか、その答えが未だに解らないことに心を動揺させ、自分でもあの夢について深く考える……が、やはり意味が解らない。
「神野、アリーゼ。大変だ。すぐに来てくれ」
血眼を広げ、驚嘆混じり嗚咽のような声を荒げ、戦が僕たちに行ってきた。戦の背中にいる早乙女も、何やらすごく動揺している。
何があったのかと、僕らは急いで小屋の外に出る。
するとそこには……
「森が……燃えてる!?」
この小屋を囲むようにして、森は狼煙を上げていた。
赤く染まったその景色は、夢の中で見た光景と実にそっくりであった。
「どうして……まさかまた……」
僕たちが途方に暮れていると、アリーゼは火炎に手をかざす。
「何をしてるんだ?」
「今は砂浜に出ることが先決。だから火炎をどかして砂浜に出る。お前ら、私の背中を離れた瞬間、死ぬと思えよ」
アリーゼが手をかざしている場所の火炎は、そのまま道を空けるようにして左右に掃けていく。その瞬間を逃さず、アリーゼは突っ走る。
「今だ、行くぞ」
僕たちは死に物狂いの思いでアリーゼの背中を追う。
とにかく走り、火炎が頬や足に触れようとも足を止めることはしない。死にたくない、だからころ僕たちは走る。
「砂浜に出るぞ」
海が見えた。
だがしかし、そこに停めてあったはずの船は跡形もなく焼失していた。
「まじかよ……」
「やあ神野、そしてアリーゼ。この光景は、何度目だ?」
火炎を掻き分け、一人の男が僕たちの前に姿を現した。
眼帯で片目を覆い、手に電撃や火炎を纏わせた一人の男。
「カタストロ。貴様か」
「正解だよ。アリーゼ・アーカイブズ。それよりさ、そこの部外者二人、邪魔なんだよね」
カタストロは戦と早乙女に向け、手を向けた。
何をするつもりだ?
そんなことを思っていると、カタストロの腕から電撃が放たれ、戦と早乙女に電撃が浴びせられる。
あれ?カタストロの右腕、吹き飛んだはずなのに……。
なくなったはずの右腕があるのに驚きつつ、僕は後方にいる戦たちを見る。
「危ない危ない。風で防御していなければ、感電するところだったよ。Mr.カタストロ」
早乙女は自身の目の前に風での防御壁を創造しており、その壁により、電撃は一切もって弾かれた。
「邪魔だな。お前」
カタストロが頭に血を上らせていると、海の方から一隻の巨大な船がこちらへと近づいてきていることが解った。
その船には大きく六の文字が刻まれており、船の先端には、キセルを吸っている一人の少し老いた大男が立っていた。
「なるほど。第六環境軍が来やがったか」
「当たり前だろ。島一つが大火事になれば、環境軍が動かないという選択肢は与えられないからな。それよりどうする?お前一人で、第六環境軍と私たちを相手にする勇気と覚悟はあるのか?」
早乙女の挑発に、カタストロは数歩足を後退させる。
「来い。〈大災害〉の幹部たちよ」
その声とともに、四人の男女が僕たちの前に現れた。
「ではあとは任せた。期待の
カタストロは逃げた。
早乙女は風でカタストロを吹き飛ばそうとするも、電磁波によって風は電撃を纏いながら弾かれる。
「カタストロ様の代わりに、我々が貴様らの相手をしよう。我々は、〈大災害〉の幹部。よろしくな」
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