第21話 アリーゼ・アーカイブズ

「神野。大丈夫?」


 僕が目を覚ました場所は、一面石畳の壁で囲まれた檻の中。

 その中にアリーゼ、スペイシー、そして僕が容れられている。手錠もされてなく、檻の中に無造作に容れられている僕たちは、静寂のまま檻の中にいた。


「アリーゼ。ここはどこなんだ?」


「あー。俺たちに解ると思うのか?」


 狼のようば目付きでスペイシーに睨まれ、僕は口を塞いだ。

 だがそれよりも気になるのは、どうして僕たちはこの檻に容れられているのか、ということだ。

 そんなこともつかの間、この檻に長銃を持って歩いてきた男が一人、その男は檻の鍵を開け、僕たちを促すようにして外へ出した。


「お前たちにはカタストロ様直々の特訓を受けてもらう。さっさと歩け」


 僕たちは銃を背後から向けられ、渋々その場所へと向かわされた。


「右」「そこを左」「その階段を下がれ」


 命令通りに進むと、僕たちはとある扉の前についた。


「開けろ」


 恐る恐る、僕は分厚く重たい黒塗りの扉をゆっくりと押した。

 光が木漏れ日のように僕たちの目に入り、その部屋の全貌が僕らの視界にはいる。


「やあ君たち。私はカタストロ。君たちに新たな力を与えよう」


 一面砂だらけの正方形の部屋。壁には一切使われていなかったかのようなこけやカビが生い茂り、天井には蛍光灯が一つ、光源はそれだけであった。

 その部屋の中心に、一人の男が立っていた。


「カタストロ……」


「神野。そんな目で睨まないでくれる。私は君を強くさせようとしているだけだというのに」


 カタストロという男は、悪。


「お前は下がれ」


「はい」


 銃を持った男はカタストロの迫力により、震えた足を後方へと走らせた。


「では君たち三人には今から私が直々に特訓を受けさせてやろう」


 何様だよ。

 というか、ここはどこなんだ?


「神野。アリーゼ。俺から行かせてもらうぞ」


 スペイシーは自らの体を猪のように変形させ、地面を思いきり踏みつけた。そして蜂のように怒号を立てながら、スペイシーはゴリラのような巨腕をカタストロの顔面に直撃させる。が、スペイシーの拳はカタストロの顔面に当たる直前に跳ね返った。

 背中から思いきり地面に衝突し、スペイシーは後方の壁に転がりながらぶつかった。


「スペイシー。言ったでしょ。あいつは普通じゃない。普通の私たちとは違い、あいつは私たちを指の一振りで殺せる。そんな奴に策もなく突っ走れば、死ぬだけだ」


 青ざめた魚類のような顔をしたアリーゼが流した冷や汗を、僕は横目で、その粒が落ちる瞬間まで見入った。


 恐怖心。

 きっとそれが、アリーゼの体を侵食してしまっているのだろう。

 恐怖なんかものじゃない、それ以上の何かが、アリーゼの体を震わせている。


「アリーゼ。能力を借りるぞ」


 僕はアリーゼを見つめ、能力をコピーする。


「ほう。やはりお前は見込みがある」


 そう言えば、この男の目を見れば力をコピーできるのかもしれない。

 僕はカタストロの目を見つめるが、電磁波のようなものに塞がれ、カタストロの目を見ることができない。


「私の目は君じゃ見れない。せいぜいもっと強くなってから私の目を見ることだ。それよりもかかってきなよ。渡しは君に期待しているよ」


「火炎ーー」


 火炎を全身に纏い、僕は宙に舞う。


「くらえ。『業炎脚』」


 業炎の足でカタストロの側頭部を蹴るが、また電磁波のようなものに跳ね返される。


「なるほど。これが天変地異と呼ばれた男の力」


 僕は後方に吹き飛び、壁に激突する。

 僕が吹き飛ばされてもなお動かないアリーゼにしびれをきらし、カタストロは手に電撃を纏わせ、


「アリーゼ。貴様も戦え」


 電撃の拳が進む中、アリーゼはなぜか笑む。


「カタストロ。私の力はな、何だと思う?」


 宙に吹き飛ぶ腕は、どうやら電撃を纏っている。

 徐々に視線を落としていくと、カタストロの右腕が失くなっている。


「ばーか。」

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