第17話 涙の意味
木術根羅々に顔を殴られ、インフェルノギアはプテラノドンの背中ギリギリで落ち欠ける。
「お前。何のつもりだ!」
「斬花。速く逃げろ。ここは私が引き受けるから」
根羅々将軍がインフェルノギアを食い止めている内に、将軍は僕と早乙女を片腕ずつで抱き抱え、森が生い茂っている方向へと走り出した。戦は将軍の背中を追う。
「戦。この島には船とかないのか?」
「あるにはありますが……」
長い間が空き、将軍は戦に顔だけ向け、
「どうかしたのか?」
「いえ。実は、船はあるにはあるのですが……ある全ての船は、燃料である石油が搭載されていません。ですので、船に乗ってもこの島から抜け出すのは不可能です」
そんな……。
落ち込む僕たちだったが、将軍はひらめいたとばかりの表情を浮かべ、僕を笑顔で凝視する。
「神野。お前の能力はコピーだ。違うか?」
「はい。コピーですけど……」
「それじゃあ燃料は確保されたじゃないか」
駄目だ。将軍が何を言っているのかさっぱり解らない。
「将軍。一体何をしようとしているのだろうか言うのですか?」
そう問う僕に、将軍は動きを止め、
「神野の能力で火炎の力を使う者をコピーする。それをすれば、燃料となる石油の代わりに、火炎というもので応用できる、だろ?」
確かにそうかもしれない。が、そもそも〈大災害〉の者の多くが、災と書かれた覆面で顔を覆っている。つまり、簡単には能力のコピーは……
「神野。早速一人捕まえた」
将軍は災と書かれた覆面で顔を覆っている者を一瞬で捕まえた。
火炎の能力を有しているか解らなかったが、手からちょっとだけ火炎がでていることから、この者は火炎を使えると解る。
将軍は覆面を無理矢理外し、その者の顔を露にする。
目は四方八方をキョロキョロと動かし、体を震わせながら冷や汗をかいている。
「もしやとは思うが、こいつ、戦えないんじゃないのか?」
だが驚いたのはそれだけではない。
「しかも女だぞ」
「何が悪い」
その女性は僕を鋭い視線で睨んできた。
悪魔でも憑依したかのようなおぞましい眼孔をちらつかせ、両手を後ろで拘束している将軍の腕を噛む。が、将軍は女性の手を離さない。
「お前。話を聞こうか。〈大災害〉とは、何だ?」
「……答えるか」
視線を背け、彼女は下を向く。
なぜ彼女は〈大災害〉に入り、どうして後悔したような表情をしているのだろうか?
彼女は、一体何なのだろうか?
「それよりも神野、相変わらずお前はバカだな」
なぜ今会ったばかりのこの女性が、僕のことを知っている風に話しかける?
「お前。誰だ!?」
「神野王。お前は我らが〈大災害〉の王、カタストロ様に捨てられたんだよ」
僕が……カタストロに……?
無鉄砲に叫んでいる彼女の言葉に、僕はどうしてか、涙がとまらなくなってしまった。
ーーどうして僕は、泣いている
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