第16話 プテラノドン
この島の付近には魔人の島しかない。
だからこそ、気球船でなけれな逃げられない、というのに、気球船は破壊された。言うなれば、海外でパスポートを失くしたのと同じくらいの窮地である。
「神野。青薔薇。ここから魔人は見えるか?」
僕と青薔薇は周囲を見渡す。
どこにもいないと安心したその時、先ほどまで僕たちがいた建物の屋根に、魔人が群がっているのが見えた。
「将軍。屋根に複数の魔人。数は数えきれません」
数えきれない。というよりは数えたくなくなる。
それは蟻を数える時のように、とてつもなくつまらないことであるから。
将軍は僕にも聞こえるボリュームで息をのむ。息が喉をとおらなかったのか、将軍の顔は険しい表情へと変わっていった。
「将軍……」
「神野。ひとまずはあの火炎男を捕まえる。話はそこからだ」
火炎を纏う男は、僕たちの方を見てニヤリと笑っている。これぞよく言う強者の笑みというやつなのだろう。
将軍は刀を握り直し、早乙女を僕に預けた。
「早乙女は任せた」
「はい」
将軍は刀を下段に構え、火炎の男ーーインフェルノギアへと駆け抜ける。
将軍の速さは、たった一瞬で百メートル先にいたインフェルノギアの真横へと移動するという何という速度。将軍は刀を上段へと振り上げるが、火炎のインフェルノギアは体をくねっとひねり、攻撃を回避する。
「すばしっこい」
「『火炎撃滅』」
火炎が将軍をのみ込み、インフェルノギアの周囲は焦土と化した。が、将軍は刀を振るい、火炎を周囲へと飛散させる。
インフェルノギアは後方へと足を進めるが、将軍は逃すまいと刀をインフェルノギアへと狙いを定め、空中で足を揺らしてインフェルノギアの真ん前へと着地した。
「『斬』」
銀色の扇動がインフェルノギアの首もとへと進む。
「終わりだ」
「プテラノ」
インフェルノギアはその言葉を口にすると、空から巨大な生物、
「あれは……プテラノドン!?どうして過去の産物が、今になって現れる!?」
プテラノドンなどの恐竜は、魔人の出現とともに絶滅した存在。そのはずであるプテラノドンが、なぜ今になってこの戦場に現れる。
まるで、全て彼らが仕組んでいるようではないか。
第四環境軍の裏切り者しかり、この島を囲む魔人しかり、そしてこの絶望状況しかり……
プテラノドンは将軍を蹴り飛ばし、インフェルノギアをくわえて僕たちの攻撃が届かない上空へと逃げていった。
「くそ……」
プテラノドンの口の中にいるインフェルノギアは、そこから僕たちに向かって火炎を放つ。
隕石のように押し寄せてくる火炎が、僕たちの足場を次々に焦土と化していく。
このままでは足場をなくし、僕たちは死んでしまう。
そう思った矢先、第四環境軍将軍ーー木術根羅々がプテラノドンの背中へと乗った。
インフェルノギアが後ろを向いた瞬間、木術根羅々はインフェルノギアの顔を思いきり殴った。
「仲間は、傷つけさせない」
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