第9話 七変化刀

 僕とウッドマン博士は向かい合う。

 ウッドマン博士は刀を持ち、僕は腰から木で創製された尻尾を生やす。


「かかってこい。神野王」


 僕、強くなりたいです。


 僕はウッドマン博士へと走った。

 ウッドマン博士の間合いに入るその寸前で足を止め、飛んで尻尾を上から叩き込む。だが尻尾は刀によって斬られ、ウッドマン博士は僕へと近づく。


「強い!」


「当たり前だ。私は元々、将軍の一つ下の階級である中将をしていた。だから戦闘は新人よりは圧倒的に勝る」


 確かにウッドマン博士の動きは洗練されている。

 動きに一切の躊躇はなく、無駄な動きもほとんどない。視線も常に周囲を気にし、僕の行動を先読みしていたかのように冷静に動いている。


 僕はウッドマン博士と距離をとり、斬られた尻尾を再生する。


「はああぁぁぁっ」


 僕は尻尾をウッドマン博士の足元に忍ばせる。だが、ウッドマン博士は刀の一太刀で尻尾を斬りきざんだ。


「あまい。その程度の攻撃では、魔人ですら倒せない。やはり貴様には移植できんな」


 僕は、強くなりたい。

 大切な人を護れるような、誰も失わないような、そんな強い人に、僕がなるんだ。


 僕は尻尾を太く、さらに長く伸ばした。


「今度こそ……」


 僕は生身でウッドマン博士へと飛び込んだ。


「今度は捨て身の作戦か。それでは全くもって意味がない。私は対人戦であろうと容赦なく殺すぞ」


 ウッドマン博士は刀を上段で構える。


「それでいい」


 僕は尻尾を地面に打ち付け、空高く飛んだ。

 ウッドマン博士は僕を見上げ、落ちてきた僕を刺そうと刀を構えているのが見て分かる。


「神野。あまいぞ。その程度の攻撃で……」


「ウッドマン博士。僕を少し舐めすぎですよ」


「そうか。だが舐めるほどの相手だからな」


「では、あなたをミンチにしてさしあげましょう」


 僕は空中に飛んだ体を回転させ、尻尾を大きく振るう。回転により、尻尾は風を切って地面へと落下していく。


「くらえ。『回転尾刀かいてんびとう』」


 回転しながらの尻尾はウッドマン博士の刀へと猛スピードで進む。

 回転によって増幅した威力を、ただの刀では受け止めきれることは不可能。

 この攻撃で体勢を崩したウッドマン博士を、拳で叩けば僕の勝ち。


 砂ぼこりが舞い、視界が塞がれる。だが僕は進み、ウッドマン博士がいるであろう場所へ飛び込み、拳を撃ち込む。が、僕の拳は何かによって弾かれる。


 砂ぼこりが周囲に散り、その正体が明らかになる。

 僕の拳を弾いたのは、ウッドマン博士を護るように構えられた人一人分ほどの盾。


「何だ……これ?」


 盾はすぐに形状を変え、ウッドマン博士の手の中に刀として収まった。


「これが私の武器、"七変化刀しちへんげとう"」

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