第一章 曖昧な正義
新人研修編
第4話 パラダイス……のはずが
僕は目を覚ました。
そこは一つのベッドの上。
「あ!将軍。神野くんが起きたよー」
女性のゆるふわな声が聞こえ、僕ははっきりと目を覚ました。
四人分のベッドがこの部屋の角にそれぞれ置かれており、僕はその内の一つのベッドで眠っている。
「神野王。目覚めたのか」
将軍は確か爆発で吹き飛んだはず。
そんな彼女の体には特にケガはなく、まるで何事もなかったかのように振る舞っている。
さすがはこの軍を率いる将軍だ。
僕は左腕に包帯を巻かれており、ケガをたくさんしている。
やはり、爆発の能力者との戦いで重傷を負ったのだろう。
「神野。これから新入り二人を祝うため、とある島にパラダイスしに行くんだが、行くよな?」
確か僕と同じタイミングで入った人がもう一人いた。
その女性は無愛想で、少し怖い人だ。僕とほぼ同い年で、顔はいつも笑っていない。
「生きていたのね。神野王」
「お前こそ相変わらず無愛想だな。
桃色のロングヘアーを風に揺らし、紫色の瞳を潤わせ、透き通るような肌色をした女性ーーそれが早乙女翔川だ。
「早乙女。お前もパラダイスしに行くのか?」
「私はその島で修行をするつもりだ。パラダイスになど興味はない」
将軍たちは一斉に落ち込む。
それを背に感じても、早乙女は動じない。
「では行こう。というより今すぐ行こう。その島で、どちらが上かハッキリしようぜ」
「面白いな。勝つのは私に決まっているのだがな」
そして、二人で高笑いをする。
そんな僕たちを、将軍たちは不思議な眼差しで見ている。
僕は自分の部屋へ行き、私服に着替えて島へ出発した。
移動はやはり気球船。だが、今回はちゃんと陸へ着陸した後、島へと降りることとなった。
僕たちが着陸したのは海岸沿い。
部隊は二つに分けており、もう片方の部隊は反対側の岸辺に着陸したらしい。その部隊には早乙女がいる。
「別に……寂しくないからな」
だがパラダイスというのだから、わざわざ部隊を二つに分ける必要があるのか?
それより、僕には気になっていたことがあった。
「将軍。この島には魔人いないのですか?」
「ああ。それは分からないぞ」
「え!?」
待てよ。
この島は確かかつて海の魔人が出没していたスポットであり、近くの島には土の魔人が生息していた気がする。
まさか……
「言い忘れていたが、この島でパラダイスを楽しめると思うな。この島では休むことすら思考にいれるな。ただ海の魔人を殲滅し、帰還することだけを考えろ」
他の兵士の反応を見ると、彼らも驚いている。
多分、この作戦は誰にも知らせていなかった。
マジかよ将軍。
激しい傷を負ったばかりなのに、僕に戦えというのかよ。
「もう来ているぞ。海の魔人は」
いつの間にか、背にあったはずの気球船は空へと高度を上げ、僕たちはこの、島という隔離空間に囚われてしまった。
岸辺から、魚を擬人化したような見た目の魔人ーー海の魔人が一斉に僕らを襲う。
「環境アセスメント、開始」
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