第3話 悪魔と呼ばれた男
僕は、全てを殺してしまった。
あの時、自我を失った僕は、周囲に存在する全てを破壊した。
ーー君ってさ、愚かだね。
※※※
「もうあの時の僕じゃない。僕は、誰もを救える人になるんだ。だからーー」
神野は木の上にいる男ーーヒューズへと走り、そして周囲の樹木に目を向ける。
「ここが、お前の墓場だ」
大根のように太い木の根はヒューズの腹を直撃し、ヒューズを後方にある巨大なきへとぶつける。
ヒューズは血を吐くが、背中を爆発させて神野へと飛び込む。
「『
神野が立っている地面は爆発し、神野は宙へと浮いた。その無防備な瞬間の神野へ、ヒューズは人差し指を向ける。
「消えな」
「『
木の根は集まって神野とヒューズの間へ割り込み、ヒューズが人差し指を振り上げると、神野の護るように現れた木の根が爆発をする。
神野は危機一髪で助かり、爆煙が周囲に立ち込める。
視界を奪われた二人であったが、二人は爆煙の中で仕掛ける。
神野は爆煙のなか、地に足をつけた瞬間に前方へと走りヒューズを目指すが、視界が閉ざされ、どこにヒューズがいるのかを感じ取れない。
神野は近くにあった木に触れ、その木をまるで体の一部かのように動かし、爆煙を周囲に散らした。
爆煙が消え、視界が良好になった瞬間、上空で身構えていたヒューズは両手の人差し指を神野へと向ける。
「ゲームセット」
『
爆発が神野を襲い、爆発に飲まれた神野は地を無惨にも転がった。
直撃を免れた神野であったが、その神野をヒューズはまだ襲う。
「舐めるなよ。『
神野の視界に存在する全ての巨大な木が伸縮し、ヒューズへと進む。
「まじかよ!」
ヒューズは驚き、縦横無尽に暴れる木を爆発させるが、次から次へと迫ってくる木に、既に限界を向かえていた。
「破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ破壊しろ」
そう叫ぶ神野。
神野の目は真っ黒に染まり、まるで悪魔のような表情を浮かべる。
ヒューズは巨大な木の猛攻を体に受け、神野は全ての木をねじり合わせ、その木でヒューズを吹き飛ばした。
ヒューズは遥か先にあった巨大な木にぶつかり、意識を失って倒れた。
「悪魔……かよ……」
そう、ヒューズは最後に言い残した。
神野が暴れた後のその森は、木が破壊され尽くして自然が崩壊していた。
その場所へ、多くの兵が駆けつけていた。
「セシル。一体何があったんだ?」
神野は現れた男を見る。
漆黒に染まった彼の目は、人ならざる何かにしか見えないものであった。
「セシル……。あいつは……新入りか?」
ーー破壊しろ。
神野の脳内にはそう呟かれる。
ーー破壊しろ。
「僕は……もう……」
神野が暴走しかけた瞬間、将軍である斬花は拳銃を持ち、麻酔弾を神野へと放った。
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