第27話 ラブホテルの怪

昔、私が学生の頃、怪しいバイトが多数あった。

この仕事もその一つだと思う。


今では遺品整理などの仕事がちゃんとあるが、当時は夜遅く隠れての仕事だったりしていた。

私が深夜のバイトをしていたのが、粗大ゴミの回収作業なのだ。

ワケありの物件の作業で、バイト代も深夜ということも相まってかなり良かった記憶がある。


今回の作業は、閉鎖したラブホテルのゴミ回収だ。

国道から少し山側に入った所に、それは建っていた。

そんな所でも昼間は人目があると、オーナーが気にして私達に依頼がきたのだという。


建物外観は、中世のお城の様な雰囲気を醸し出している。

外装は白く、三階建ての建物は山の中には似つかわない異質さをだしていた。


門の鎖を開け、車とトラックを中へ入れた。

玄関には、イタズラ書きが多数あり汚れている。

地元では、心霊スポットとして有名らしく、窓が壊され無断で人の出入りがあるようだ。


電気が停まっているので、真っ暗闇の中での作業になる。

我々作業員6名には、大きな懐中電灯を手渡された。

一階の部屋から作業を開始する。


壊れたベッドの枠組みやぼろぼろのマットレス。

各部屋から大きい物を運び出す。

二人一組でもかなりの重労働だ。


一階の作業を終え、二階へ。

そこで異変が。

二階から階段を伝い冷気が降りてきてる。

私の相方が

「冷えてきたかな?」

「そうですね。」

と答えたが、気温のせいとは思えない。

階段を上がるほど、冷気が足元にまとわりつく。


二階に上がると、6部屋あるドアは全て開いていた。

一番奥の部屋から冷気が漂ってくるのを私には見える気がする。

その部屋から掃除を始める事に。


部屋に近づくにつれ、他の部屋が騒がしくなった。

私しにしかわからないみたいだ。

微かに声が聞こえる。

「何しにきた?」

「帰りたい。

連れてっいって。」

こういった廃墟などには、霊が集まりやすいらしい。


部屋の前に着くと、言い知れない悪寒と頭痛がしてきた。

まさかこんなところで、霊と出くわすなんて。

凶悪な気が渦巻いている。


部屋には、ポツンと真ん中にベッドが位置している。

廻には鮮血が滴っている。

「うわっ!」

つい声が出てしまった。

「どうしたバイト。」

相方の先輩がキョトンとした顔で聞いてきた。

彼には、血が見えてないのだ。

生々しくベッドから床に滴ってる、真っ赤な血が!


「ベッドの廻に血が見えた気がしたので、つい声が出てしまいました。」

「はっはは。

解るか、ここの部屋で殺人事件があったんだよ。

この黒いシミ、血の後だな。」

普通なら黒いシミにしか見えないんだ。


恐る恐るマットレスを運び出す。

手にはベッタリ血が付着する。

ヌルッとした感触と、血の生臭い臭いが鼻をつく。

相方は依然、黙々と作業している。


私は、体調の不良と見えている事の恐ろしさに、我慢をしながら作業をする事がとても辛かった。


それでも大概の大物を運び出す事ができた。

私にも鮮血は黒いシミに見えるようになってきた。

体調も戻ってきている。


一安心と胸を撫で下ろす。


トラックいっぱいにゴミが溜まり、一度廃棄しに行くことになり、休憩する事になった。

時間は3時を越えている。


先ほどの部屋にかすかな明かりが!

懐中電灯を置き忘れた模様だ。

一番下っ端の私が取りに行く事になった。

嫌々だが行く事に。

先輩達は、私が怖がっているのを面白おかしく見送った。


ホテルに入るなり、再び悪寒と頭痛が。

二階に上がると血を踏んだ足跡が部屋に続いている。


部屋の前までくると、今度は

『ザック・ザック・ザック』

と何かを刺している音がしてくる。


誰かいる。

影のように見えるそれは、徐々に男の形に。

片付けたはずのベッドがそこにある。

男の手には包丁が持たれ、しきりにベッドに突き立ていた。


突き立てる度に、鮮血が飛ぶ。

ベッドでなく、女性がそこに横たわっていた。

女性は体を起き上がらせて、私に手招きしてくるではないか。

「ここから助けて。」

「早く逃げなきゃ。」

「帰りたいの。」


私はそこから動く事ができなくなっていた。

人が刺される光景を見続けてしまった。


頭痛で気が遠くなるのを覚えている。


やがて気がつくと、先輩方が気を失っている私を担ぎ出して、車に連れて来てくれたみたいだ。

皆が笑って、私を見ている。

「怖がりだな。

大丈夫か、少し休め。

脅かしすぎたかな。」


この後は、私はホテルに入らずトラックに積む作業に専念させてもらった。

しかし、血溜まりはトラックに移行していた。

荷台から血が滴っり落ちてる。

霊は、私につきまとってきていたのだ。


体が重いまま帰宅する事に。


知り合いの霊能力者にお祓いをお願いしたら、2人の霊がとり憑いていると言われた。す

今回のバイトは、あまりにもマイナスだけが残る結果になった。



後日談だが、あの部屋で痴話喧嘩のすえ男がベッドの上で女を刺し、男はその場で自殺したんだそうだ。

それからは、あのホテルは評判を落としつぶれることになった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る