第23話 事故物件2 (進む現象)
翌日
朝、8時にインターホンが鳴る。
早くから霊媒の方が来た。
玄関を開けると、薄汚れした法衣を着たお坊さんが立っていた。
「お願いします」
と加山君が言うと、無言でお坊さんは部屋に入り込んだ。
一通り見るとキッチンの部屋でお経を唱えた。
錫杖を
『シャリン・シャリン』
音をたてて降り始めた。
お経が部屋中を廻るように聞こえてくる。
やがて鐘の音が
『チーン』
と鳴って終了したようだ。
加山君は安堵の表情だったろう。
お坊さんが加山君に驚く事を言い出した
「加山さん、すみません。
私の力では払う事ができませんでした。
でもキッチン以外の部屋一室なら、この御札で結界を張ることができます。
とりあえずこれで、ご勘弁ください」
御札を渡し、お坊さんは帰っていった。
早速、寝室のドアと窓に御札を貼って、様子をみることにした。
その日から寝室には、臭いが入ってこなくなった。
他の部屋は相変わらず異臭が漂っている。
久々にあった加山君は元気そうに見せていた。
「あれからどうなった?」
「吉野か、御札貼ってから良くなったよ」
と言ったものの現実には状況は進んでいた。
実は、ラップ音が最近なり始めていた。
心配させまいと加山君は、明るく振る舞っていたのだ。
半年間、我慢したがとうとう私に相談してきた。
「吉野、今日うちに来てくれないか」
気が乗らないが加山君の部屋に行く事に。
彼の寝室で9時になるのを待った。
キッチンの方からパキッ・パキッと音がしだした。
そして、歩く足音がバタバタと聞こえる。
誰かいる。
自分の顔から血の気が引くのを感じていた。
ドアを開ける勇気がでない。
彼は意を決してドアを開ける事にした。
一人では開けられなかったからだ。
ガチャ
真っ暗なキッチンはシーンとしていた。
先程の騒がしさはどこにいったのだろう。
何もないことに胸を撫で下ろした。
「ふぅー」
とため息がもれる。
「吉野、付き合ってくれて、ありがとうな」
疲れがどっとでた。
再び不動産屋に連絡をいれることにした。
退去の願いではなく、除霊をお願いした。
不動産屋の方でも、もっと力がある人を見つけ次第連絡すると言ってくれた。
加山君は、最近夜10時に以降に帰宅するようになった。
少しでも霊を感じないようにしていた。
とうとう霊感のない加山君が、見えるようになってしまった。
いつもと変わらず部屋に帰ってくると、キッチンの天井から足がぶら下がっているのがみえた。
良く見ると、女性が首を吊っているではなあか。
ゆっくり前後に動いている。
そして異臭が漂よい。
床には、人間の体がでた汚物や体液など溜まりができていた。
一目散に逃げてマンションを後に。
私のアパートに彼が逃げ込んできた。
「頼む!おいてくれ」
部屋にあげて落ち着かせることにした。
次の日、不動産屋に再度訪ねる事にした。
マンション近くの喫茶店で
「とうとう見ちゃいましたか」
平然とした感じで言ってきた。
「加山さんの前の人がいたんですが、霊感があったのかすぐにリタイアしちゃったですよ。
加山さん頑張ってくれたから期待してたんですけどね」
加山君がキッチンの所で、女性が首を吊っている霊を見た話をすると
「そうなんですよ、そこで首吊り自殺されちゃって、困ったもんです」
「何人かの霊脳者の人いれて除霊を試みたんですけど、残留思念が強くて勝てないですよ」
「加山さん、もう少し頑張ってください。
お願いします」
と頭を下げた。
二日間の猶予を不動産屋が求めてきた。
その間加山君はホテル暮らしになった。
不動産屋と部屋に戻ると、キッチンの所にベニヤ板で壁ができていた。
そこに御札が数枚貼られている。
「キッチンは使用できませんが、多分これで現象は無くなるでしょう」
「加山さんには後5ヶ月頑張ってもらいリフォームいたします。
その時に、全てを除霊と内側に御札で封じ込めます」
深々と加山君に一礼をして部屋を出ていった。
「加山まだ住むのか」
「おっ、おう」
キッチンを見ながら
「使えなくなったが、心霊現象が無くなればどうにかなるよ」
実際にこの日から異常現象は影を潜めた。
無事一年間、加山君はやり遂げた。
この物件はリフォームして、何事無かったように売りにだされたみたいだ。
こうして、事故物件が一つ消えていった。
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