第24話 橋の下

金子君のアパートは、川の脇にある。

玄関を出るとすぐ土手だ。


私は金子君と夕食を済ませ、彼の部屋に遊びに行くとき、数台のパトカーが赤色灯を回していた。

点滅する赤々とした明かりが、夜の住宅地に異常が起こった事をつたえる。


土手伝いが通行禁止になっているようだ。

ここを通らないとアパートにはつけない。

誘導灯を持つ警官に

「この先で何かあったんですか」

と金子君が聞くと

「住民の方でしょうか。

この先のK大橋の橋脚に、ご遺体が上がったんです。

今、回収作業中なので通行を止めております。」

「この先のコーポCに住んでるですが、どのくらいかかるでしょうか。」

「そこでしたら、今のうち通ってお戻りください。

ご迷惑をおかけします。」

と警官は私達に敬礼をして通してくれた。


彼の部屋につくと、窓には未だ赤い明かりが点滅を繰り返している。

私は少し興奮気味に

「こんな事もあるんだ、すごい数のパトカーが着てたね。」

それに対して金子君は

「良くあるんだ。

一年に2・3回は!」

「えっ、そんなにあるものなの。」


彼の話だと、浜辺なんかでも必ずと言っていいほど水死体があがる名所がある。

流れの早い川でもほんの少しの淀みに、死体が必ず引っ掛かるらしい。


このN川のK大橋の袂もそれに当てはまる。

上流から流れ着き、同じ場所に(橋脚)引っ掛かるのを発見される。


金子君は不思議な話をしだした

「でも集まるのは別の要因があるんだ。

夜土手を散歩してる時に、橋の袂がぼわっと青白く光っているんだ。

岸から二番目位の橋脚部分がね。

近寄ると人の形をした弱い光が集まっていたんだ。

20体ぐらい見えたな。」


「それって、幽霊?」


「多分ね。

胸から腰にかけて川の中で、手を上げて上を見てるんだ。

まるで何かくるのを待っているかのように。

ゆらゆら左右に揺れながら、いつもそこにいるんだ。」

私は驚きを隠せず大声で

「何時もいるの」

金子君は首をゆっくり立てに振った。


そして金子君は、子供の頃海水浴で溺れかけた話をしだした。

「小学校3年の時の話なんだが、海で泳いでいたら、いきなり高波がきて沖に持っていかれそうになったんだ。

回転する波に、俺の体がくるくるっと回転して危なかったんだよね。

そばにいた親父が、脚をどうにか掴んで助かったんだ。」

彼は続けて

「その時に波の中に人がいるのを見たんだ。

俺を見てるヤツの顔が近づき、身体を押さえつけようとするんだよ。

そして回り始めたんだよな。

そいつの口元が笑っているのが怖かった。

手を引っ張られて、連れていかれそうになっていたのを覚えているよ。

その後は父親に助けらたんだけどね。

死にかけたよ。」


金子君は、自分を引っ張っていこうとしたモノが、橋の袂に溜まっている霊達に似ているという。

そして、彼らが遺体を此処まで運んでくるだと話す。


帰る時間になり、金子君は私を駅まで送ってくれた。

川沿いを歩き、橋の袂に近づくと橋脚を指差して

「あそこ、ぼんやり光ってるんだよ。

見える?」

「見えないな。」

「多分数増えてるんじゃないかな。

数えたことないけどね。」

私は鳥肌がたつのを覚えた。

「そういえば、橋の上から下を見ると、ヤツらが呼んでるようにも見えるんだよ。」

私に向かって彼らの様に手を振っている。

「オイデ、オイデって言ってるみたいに。」

金子君は、私が恐ろしがる顔見て笑っていた。





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