第21話 お払い (ポンコツ撮影日記4)
今日は、除霊の取材させていただく事になった。
以前から霊能力がある方々に、お願いをしていた件である。
憑依されてるご家族のプライベートもあり、なかなか先に進まなかったネタでもあった。
モザイクや声を変えるなどの配慮をする事で、やっと了解をえた。
霊能力者の信成先生(仮名)のお力によるものだった。
これから先生の自宅兼事務所に向かった。
6歳になる男の子が、大人びたしゃべり方や行動をするので、家族が心配して信成先生に相談をしたところ除霊をする事に。
信成先生も嫌らしいことに、テレビでの 自分のパフォーマンスを考えて、撮影を条件に
除霊してあげるらしい。
実際、子供に会ってみるとどこにでもいる6歳の男の子だった。
舌足らずのしゃべり方で、今日あったことなど一生懸命話してきた。
あまりにも進展なく、取材チーム全員が失敗したかと思った。
子供に霊が取り憑くなど無いのでは、といった空気感がしていた。
別室で、信成先生と談笑中
いきなり
「きたっ!」
と立ち上がり、子供のもとへ
我々もカメラを手に追うことに。
親子のいる部屋に着くと、母親が泣いていた。
傍らに男の子が、あぐらをかきこちらを見据えている。
明らかに、幼児の澄んだ目と違っていた。
「お前ら、俺に何か文句でもあるのか」
確かに、声は先程までの男の子であるが、口調は似ても似つかわない汚ならしい大人であった。
信成先生は、事務所の真ん中にある囲炉裏風の場所へ移動して、そこへ火をつけはじめた。
護摩木をくべ、火は高々と昇った。
先生は呪文を唱え始めると、男の子は大きな声で
「静かにしろ
俺はやっと居心地がよい場所を見つけたんだ。
出ていかないぞ」
時おり
「え・え・えいっ!」
「いやぁー」
など気合いの入った掛け声をあげている。
榊の枝を持って、瓶子(お神酒ている陶器)のふたを開け、葉っぱ部分に振りかけた。
榊を親子に向かって、大きく振った。
お酒の滴が飛び散る。
母親がひざまづき泣き始めました。
「すみません!
ごめんなさい。
悪かったです。
出ていきますので、赦してください」
そして、倒れこんだ。
撮影してる私はこの光景に驚いた。
何故、母親に?
先生の祈祷は続いている。
男の子は幾分苦しそうに見える。
彼の口から
「馬鹿な女だ。
俺一人で大丈夫だ。
出んぞ」
さらに護摩の火が天井に向かって昇っていく。
「でぇぁー」
と掛け声があがる。
同時に男の子も、あぐらをかいている状態のまま後ろにひっくり返った。
信成先生は、汗だくで
「終わりました」
母親は相変わらず泣いていた。
「お子さんを抱いてあげてください」
と声をかけられたので、
男の子の元へ。
抱きあげると、男の子も泣きはじめた。
「『殺してやる』って、おじちゃんが僕に言っていたんだよ」
と、男の子は更に大きな声で泣いた。
先生は優しい声で
「もう大丈夫だよ。
怖いおじさん、いなくなったよ。
どこかにいる?」
男の子は首を横にふった。
「このおじさんが、退治したから大丈夫」
と笑って見せた。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
母親は、何度も頭を下げた。
別室に戻り、先程の説明をカメラ前でしていただく事になった。
何故、別室で待ったのか
私がいたのでは、悪霊がでてこない。
待つのも仕事です。
母親が泣きはじめた事は
男の子に憑いている霊と長い間いることにより、母親にも子分的な霊が取り憑いた。
結果的に悪霊のサポートをしていた。
一緒に払えたので良かった。
これで終了
あの男の子は、霊をよぶ体質である。
空いてる器に、悪霊達が入れ代わり入り込んでいる。
まだ四・五体の霊の気がある。
「信成先生、最後にまとめをお願いします」
「今回、除霊を無事できました。
一回で、全てを払う事ができなかったですが、一番の悪霊はいなくなりました。
親子には、通っていただく事になります。
たぶん、二・三回後には全て取り除く事ができるでしょう。」
と締めくくった。
帰りがけ先生から
「皆さんもお気をつけくださいね。
見えないですが、いつも霊はそばにいます。
特に、このようなお仕事だと寄ってきますから。
その時は、何時でもお力になりますよ」
怖いお言葉をいただき、我々は帰路についた。
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