第20話 窓

私の幼少期の話です。

昭和40年代、今と違って子供達は暗くなるまで外で遊んでました。

東京の下町は、古い家や狭い路地が入り組んでおり迷路の様な所もあります。


大人一人が、やっと通れるぐらいの道や垣根の間を使い私達子供は、良く鬼ごっこやかくれんぼをしていました。


古い二階建てのアパートの裏手が、格好の隠れ場所になっていたのを覚えてます。


いつの日か、そのアパートの一階の角部屋の窓が開いていて、中年の女性が奥の方から覗くようになりました。


鬼に追われて逃げ込む時、裏手の垣根に隠れる時、決まっておばさんが見ているのです。

私達の間でも気味悪く思い、そのおばさんを『アパートの幽霊』と呼ぶようになりました。


いつしかアパート裏に近づく子供は、連れ去られると噂がたつぐらいに不気味さが増していきます。


小雨降るの夕方、私は不用意にアパートの裏手に入り込んでしまいました。

雨が降っているのにも関わらず、窓はいつものように開いています。


そこにはいつものように、おばさんの眼がこちらを見ています。

じっと私の事を、暗い窓の奥から眼だけが追ってくるのです。

怖くて耐えきれなくなり、飛び出しました。


その日の夜、家の近くでけたたましくサイレンが鳴り響いていたのを覚えてます。

その音で近所の人達が外に出て来てました。


警察官数人がアパートの前で管理人らしき人と話てます。

そして、おばさんの部屋をこじ開け始めたのです。


数分後、野次馬が退けられ、部屋からは担架に大きな布を被さったナニかが運びだされる事に。

それにともない辺りに異臭が。

今思い出しても、気分が悪くなる臭いです。


運び出されのは、そこに住むおばさんでした。


死後2ヶ月くらい経っていたらしいです。


おばさんは、首を吊っての自殺をしておりました。

大人の話では、子供を持つことに、ご主人から反対され捨てられた悲しい過去を悔やんでの自殺だったみたいです。


あの窓の奥の眼は、

本当に幽霊だったのでしょうか。

今でもどこかで、見られてるような気がすることがあります。






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