第16話 首

私の家は、九州で古くから続く旧家である。

子供の頃の家は、江戸時代から建っている 古く大きな家だった。


小学校の低学年の頃、インフルエンザで熱をだした。

何故か、大広間に私一人寝かされた。


大広間は、18畳くらいの広い部屋で床の間には、鎧兜が鎮座していた。


この広い部屋の真ん中に布団を敷いて寝るのは心細く感じていた。


たまに熱が上がって、頭の中がクラクラする。

頭が鉛のように、重く感じていた。


このまま死んでしまうのかとさえ、子供ながらに思った。


薬が効いてきたからだろうか、少し寝る事ができた。


何時間寝ただろうか。

目が覚めると、そこには生首が浮いていた。

何故か、怖くはなかった。

髷がばっさり落とされ、眼光鋭く、私をにらみつけている。

江戸時代の武将にみえた。

立派な口髭蓄えたその首は、

「真っ直ぐ生きろ!」

そう言うと、私の目の前をぐるぐる回って消えていった。


身体をお越して、布団の周りを見ると、

いつの間にか板の間になっていた。

黒くなっているが、血とわかるベッタリとしたあとの残る上に寝ていたのだ。


朦朧としてきた。

気が遠のく。


再び目覚めた時には、部屋は以前に戻っていた。

祖母が心配そうに、私の顔をのぞいている。

「大丈夫か、うなされていたよ」


私が見た事を祖母に話したら

昔、この地方を納めていた武将が祖先だった事。

民衆を守る為に、切腹をこの部屋でおこなったと聞いた。

床の間の甲冑は、その祖先の物だそうだ。

今でも我が家の誇りとして、奉られている。

「先祖が、跡取りを見に来たんだよ。

立派に育てとね」

と祖母が締めた。


私の寝ている場所の畳をはぐと、板の間に今も当時の血の跡が残っているという。


私は、

「真っ直ぐ生きろ!」

今でもこの言葉を大事に生きている。





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