第13話 鏡

古来から鏡には、魔物が巣くうと伝えられてます。

古くなれば古い程、人から人へと受け継がれていき、何人もの人生を見てきているのです。


雑誌の取材で、あるアーティスト(音楽家ではなく)の新居にお邪魔しました。

大きい玄関で、私の小さい寝室くらい広さがありました。

リビングは吹き抜けになっており、天井が高く7メートルはあろうかという豪邸です。


主はT先生と周りから呼ばれており、生徒さんを多数抱えています。


インタビューをさせていただく場所は、この広いリビングの真ん中にソファーを置いておこないました。


「なぜか落ち着かない、ソワソワしてる。」

私は、そのお家の広さに圧倒されての事だろうと思ってました。


インタビュー中も、覗かれている感覚が常にしてきます。

私は、その元を探しました。

どうやら私からみて右斜め上の方向から見てるようです。

階段の踊り場があるだけで、人の影などありません。


それ以外といえば、大きく古い鏡が壁につけられているだけでした。


鏡が私を見てるのか?

そんな考えが頭をよぎりました。

それからは、鏡の存在が気になり、ついつい目を向けてしまいます。


T先生のお話が頭に入らなくなり、

だんだん集中できなくなってきました。

力が吸いとられていくかのように、頭のなかがボーっとしてきました。

その時から、生気をとられていたのです。


思考能力が停止しそうで、少し休憩の時間をいただく事にしました。


休憩中T先生は私に

「鏡、気になる」

と笑顔で聞いてきました。

「ヨーロッパの古城についていた鏡なの。

1800年代の物だと言ってけ、

縦がだいたい3メートル、横が1,8メートルぐらいの大きくて素晴らし鏡」

そう、成功者が持つに相応しい、威厳のある鏡がそこに鎮座してるのです。


私はT先生に促されるまま、鏡の前に立っている自分を見ていました。


鏡の中から声が聞こえてきます。

頭の中に直接言葉が入ってきました。

何を喋っているのかわからなかったのですが、次期に

「殺す」

「裏切る」

「だます」

などなど、悪い言葉で埋め尽くされました。

このままでは、全てを鏡に吸いとられそうで怖くなりました。


気を取り直して、鏡から離れT先生のお話しの続きを聞くことにしました。

終わり次第、早々にお宅を後にしました。


私みたいな力がない者を取り込もうとする、鏡の魔力には、恐怖しかありません。


何故、T先生が大丈夫かと疑問があります。

今、T先生は全てにおいて順調です。

鏡との力関係が、互角なのではないでしょうか。

それか、私みたいな餌を連れてくるので、共生が成り立っているのかもしれません。


今日も生徒さん達の生気を吸って、輝いているのではないでしょうか。




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