ひとりぼっち
からから からから
そよ風が爽やかな
声で歌いながら
ぼくの身体に纏わりついた
「話を聴いてくれませんか?」
ぼくはそよ風に懇願する
「相談にはのってあげられないよ」
そよ風は爽やかな声で答えた
「どうして?」
「相談にはのってあげられないよ」
そよ風はうたうように
同じ言葉を繰り返して
遠くへ消え去った
消え去るときまで
そよ風は爽やかだった
きらきら きらきら
太陽が眩しいばかりの
笑顔を浮かべながら
ぼくの顔を覗きこんだ
「話を聴いてくれませんか?」
ぼくは太陽に懇願する
「なんて暗い顔をしているんだ」
太陽は自信に満ちた顔で言った
「暗い顔をしていたら いけませんか?」
「もっと明るい顔をしたまえ」
太陽は威厳のある
風格を残しながら
西のほうへ沈んでいった
沈むときまで
太陽は笑顔だった
ざあざあ ざあざあ
荒波が雄々しく
力強く舞いながら
ぼくの心にぶつかってきた
「話を聴いてくれませんか?」
ぼくは荒波に懇願する
「やるべきことがあるんだ そんな暇はないよ」
荒波は厳かにしゃべった
「やるべきことって なんですか?」
「きみにはまだ わからないだろう」
荒波はそれきり
黙り込んだまま
大きなうねりとなって
ぼくの心ごと
なにもかも 攫っていった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます