ひとりぼっち

からから からから

そよ風が爽やかな

声で歌いながら

ぼくの身体に纏わりついた


「話を聴いてくれませんか?」

ぼくはそよ風に懇願する


「相談にはのってあげられないよ」

そよ風は爽やかな声で答えた


「どうして?」

「相談にはのってあげられないよ」


そよ風はうたうように

同じ言葉を繰り返して

遠くへ消え去った

消え去るときまで

そよ風は爽やかだった



きらきら きらきら

太陽が眩しいばかりの

笑顔を浮かべながら

ぼくの顔を覗きこんだ


「話を聴いてくれませんか?」

ぼくは太陽に懇願する


「なんて暗い顔をしているんだ」

太陽は自信に満ちた顔で言った


「暗い顔をしていたら いけませんか?」

「もっと明るい顔をしたまえ」


太陽は威厳のある

風格を残しながら

西のほうへ沈んでいった

沈むときまで

太陽は笑顔だった



ざあざあ ざあざあ

荒波が雄々しく

力強く舞いながら

ぼくの心にぶつかってきた


「話を聴いてくれませんか?」

ぼくは荒波に懇願する


「やるべきことがあるんだ そんな暇はないよ」

荒波は厳かにしゃべった


「やるべきことって なんですか?」

「きみにはまだ わからないだろう」


荒波はそれきり

黙り込んだまま

大きなうねりとなって

ぼくの心ごと

なにもかも 攫っていった

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