第36話 帝都観光2

ボートは大きな皇帝陛下の城を見ながらゆっくり帝都の中心地を過ぎていく


(帝都には色々あるんだな、その割になぜ湊村はあそこまで貧しいのだろう……?)


俺はそんなことを考えながら景色を見ていると男が声をかける


ボートをこぐ男「あんたは帝都に観光かい?あんまりそんな風には見えないが……」


「まあ、観光かな……そんな風に見えないとはどういうことだ?」


ボートをこぐ男「いや……気を悪くしたら悪いが、ずいぶんシンプルで単純な服を着ているものですから。最初は出稼ぎかと思ってしまいましたよ。」


(……この服は帝都ではずいぶんみすぼらしいらしい……村にある衣服では仕方ないか、この後何か服でも買うかな)


「なあ、このあたりで安い服屋はあるか?」


ボートをこぐ男「ええ、ありますよ!帝都の中心地は全体的に価格が高いですがこのまま川に沿っていけば市街地があります。そこには安いと評判の服屋があるんですよ。確か一番人気が『帝都ブランド』っていう服から靴までそろえている大きな服屋、二番目が『帝都ファッション』という女性に人気な店ですね。あとは各地域にそれぞれ有名な店があって……」


「ずいぶんよく知ってるんだな?どこからそんなに情報貰うんだ?」


ボートの男「まあ、いろいろ帝都内のコミュニティに属してるのでそこから情報を得てお客さんに教えるんですよ」


「へえー、なら国営特務人事局って知らないか?」


ボートの男「あんた観光客じゃないのかい?あそこは傭兵になるやつしか行かないよ。」


「その傭兵ってのは世間からどんな風に見られてるんだ?」


ボートの男「まあ、危険な仕事ですかね…すねに傷もつ奴しか行かないという印象ですね。」


「やるメリットはあると思うが……そんなに誰もやりたがらない仕事なのか?」


ボートの男「そりゃあ危険ですよ!任務にもよりますが、怪我しても政府からの保証もないし、職業という面でも安定してはいないですから世間的な目も割と厳しんですよ。だから帝都やそのほかの発展している都市で育った人はほぼやりたがりません。地方都市の若者が帝都に来て挫折した末に傭兵になったり、あとは元囚人の就職先になるなどですね」


「傭兵になるには試験があるのではないのか?そんな誰でもなれるものなのか?」


ボートをこぐ男「試験と言っても絶対守るべき法律と制度の理解が中心ですから、訓練も軍人ほどはやりません。半年ですべて終わらせるので基礎的なことばかりなんですよ」


「ほー、そうなのか……いやまて、あんた何でそんなに詳しいんだ?いくら何でも知りすぎだろ」


ボートをこぐ男「ああ、私も傭兵ですから。ボートの観光地巡りも繁忙期以外は仕事が無くてね……副業で傭兵をしてるんですよ……」


「そうだったのか……いろいろな理由で傭兵になるんだな」


ボートの男「こんな収入の少ない帝都の負け組もやるのが傭兵なんですよ。だから傭兵の職の評判は悪いんです」


何とも言えない空気になりつつ俺は川沿いの商店街を見ていた


気づけば帝都の中心地が遠くに見えた


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