龍神様のほこら

夜ノ海 大河

ヤコイ1

この村はとても平和です。


せせらぎがとても心地よく聞こえる小川は魚はいないが、とても綺麗で子どもたちが遊べる程深くはない。


夜空は星々が満天に輝き、肉眼で星座を確認できるほどキレイだ。


山は迷う事などない。

新参者が入っても直ぐに出てこれるような山だ。


そして村には悪者など居らず、窓や扉を開けたままにしていても大丈夫な程平和で、村の人々は畑、田んぼを耕しながら暮らしている。


しかし厄介な事が1つある。


雨が降る時と降らない時の差が激しく、土砂崩れをよく起こし、村人達を悩ませた。


それらを防ぐ為、村人達は徳の高い人を呼び、山の中にある小さな泉の近くに龍神様の祠を作って頂き、天候の安定、土砂崩れの防止を願い祀っていた。


そんな平和な村にヤコイと言う男がいた。


ヤコイは小さい頃、父親と母親に「僕が頑張って楽させてあげる」と言い、両親を喜ばせた。


だが大人になった今、自分の仕事だけをすると帰ってしまい、他の村人や両親が困っていても僕には関係ないと言い、そそくさと家に帰ってしまうのだ。


両親が何度も叱るが、我関せずという顔をし、変わることは無かった。


いつの日か両親はヤコイに叱ることをやめて何も言わなくなった。


苦労したことなど1度もなく、達成した事など1度もない。


苦労するのは馬鹿か阿呆のする事だと思っている節もあった。


それどころか龍神様の祠に供えてあった物を食べてしまうのだ。


1度や2度ではない。


祠を通る度に手を付けていた。


どうせ腐ってしまうのだ。


僕が食べた方が無駄にならない。


と、悪気ない様子でお供え物を食べていた。


村の人々はヤコイの行いに気付いてはいたが、あいつに言っても駄目だ無駄だの思い、文句1つも言わなかった。


そんなある日、いつもの様に田畑仕事を自分の仕事だけをやり、晩御飯が出来るまでの間、暇潰しに龍神様の祠に行き、いつもの様にお供え物を食べていた。


それに加え、祠を蹴飛ばしてしまいました。


こんなもの本当に意味があるのか?どうせ無いだろう。

と、文句だけは達者に言い、家に帰っていきました。


たいして働いてもいないのに大食らいのヤコイは両親の2倍食べ、満腹になるとすぐに寝床へと向かい、大きないびきをかきながら寝てしまいました。


そんなヤコイの夢の中に龍神様が出てきました。


ヤコイは今までずっとお供え物を食べ続け、挙句の果てにはほこらを蹴飛ばしてしまったことに対して怒っているのではないかと思い、声を上げて泣き始めました。


すると龍神様は大きな声で笑い始め、小馬鹿にしたように言い始めました。


「なんだヤコイよ。お前はのうのうと儂に備えていたものを食べ、蹴り飛ばし、自分が危機に陥ると泣き始めるのは虫が良いにも程があるだろう。」


「申し訳ございませんでした。龍神様。」


ヤコイは何度も何度も土下座した状態で頭を地に打ちつけましたが、龍神様は再度笑い始めました。


「私はそんな事を言うために出てきた訳では無い。お前に言いたい事があって出たのだ。」


「言いたい事?なんでございましょうか?」


ヤコイは自分のやった行いで龍神様が怒り狂い食べられてしまうのではないかと思ってしまいましたが、そんな事ではないと言われ、静かに胸を撫で下ろしました。


ですが、龍神様は残念そうな目でこちらを見始めました。


「お前は本当に残念な男だヤコイよ。昔は親の言うことを素直に聞き、頑張って楽させるとまで言っていたお前が今となっては誰に対しても言うことを聞かず、自分の仕事だけ終わると1人先に家に帰り、誰かを手伝うことを何一つ行わない。」


ヤコイはうつむきました。


龍神様の言うことに1つも反論が出来ませんでした。


「お前が食べていた祠にあったお供え物は村人達がどんな気持ちで置いていったか分かるか?村の平和と豊作、天候の安定と災害の防止を願って供えたものだ。お前は村人達の願いを踏みにじったのだ。」


ヤコイは1つも反論が出来ませんでした。


ですが、僕は間違ってないと思い、無性に腹が立ってきました。


何か一つ言ってやらないと気がすみません。


「龍神様はいいですよね。生まれた時から神様で。きっと悩みもなく楽な生活でしょう。」


と、ヤコイは龍神様に聞こえるように大きな声で言いました。








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