雨のち君の隣晴れ予報

茜色の詩

第1話

あ、雨だ。

窓の外地面にシミを落としてく。

けど嫌な気はしなくてむしろ心が弾む。



「あれ、雨じゃん」


「天気予報じゃ晴れの予報だったんですけどね…」


「俺雨って嫌いなんだよなー」


「そうなんですか?」



太陽みたいに眩しい君。

話しかけられて心臓が止まるかと思った。

大好きな君がすぐ隣にいる、

まるでここだけ酸素が薄くなった気分。



「雨ってジメジメするし陰気臭いじゃん?」


「確かに…暗い雰囲気ありますよね」


「だろ!委員長も雨嫌いなの?」


「あ、はい。私も苦手です」



だよなーなんて窓を見ながら

退屈そうにつぶやく。


太陽くんは雨が嫌いなんだ。

嫌われなくて、私もだなんて嘘をついた。

まっすぐ本音を言う太陽くんの隣で

必死に嘘ついてる私、なんだか罪悪感を感じる。

横顔姿も様になるなぁなんて思いながら

2人ぼんやり空を眺めて…ちょっと不思議な気持ち。




「あの、太陽くん…傘、入りますか?」


「ん、傘?」


「はい!もし良ければ一緒に…」


「まじ?!傘持ってきてないから入ってもいい?」


「太陽くんがいいなら、ぜひ…!」



雨も吹き飛びそうな笑顔。

心臓の奥がぎゅっと握られるような

甘酸っぱさに包まれる。



鞄から折り畳み傘を取り出し

下駄箱に向かう。

無言の空気合わない歩幅

まるで私たちの関係みたいで

少しだけ寂しくなった。



スマホの画面とにらめっこしてた太陽くんが

勢いよく顔を上げる。



「…あ!委員長ごめん!やっぱ大丈夫っぽい、」


「え、?」


「幼なじみが傘もってるぽくてさ、」


「…あ、そうなんですね」


「いちいちありがとな!」


「いえいえ、気をつけて帰ってください」


「委員長もな~!」





太陽くんが走る先には

ポニーテールが似合う女の子。

キラキラ眩しい笑顔の女の子。

2人が同じ傘に入って歩く姿をつい目で追ってしまう。



見なきゃいいのに、それでも見てしまう。

同じ歩幅、楽しそうな表情。

私の時と全部反対で苦しくなる。




傘をささないで外に出る。

頬を濡らす雫は雨なのか涙なのか。

もうどっちだか分からない。



雨なんて、雨なんて好きじゃない

いいことなんて何も無かった。


通り過ぎる生徒が不思議そうに見てくけど

そんなのも気にならないぐらい

寂しかった。

あの距離に入れない私が悔しかった。




「何泣いてるんですかお嬢さん」




世界から切り離されたのかと思った。

頬を濡らす感触はなくなって

かわりに後ろにある人の気配と傘。



振り返れば人の良さそうな顔でこちらを見てくる。



「なん…ですか?」


「風邪ひいちゃいますよ」


「傘、持ってるんで大丈夫です」


「大丈夫じゃないでしょ、ほら送るから」



赤くなった鼻をつままれ

変な声が出た。

制服のネクタイを見れば緑色。



「せん、ぱい、、?」


「そ、先輩ですよ~。ほら帰るから道案内して」




変な先輩なのに何故か嫌な気はしなくて

やっぱり雨は嫌いになれない、



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雨のち君の隣晴れ予報 茜色の詩 @uta_1933

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