8限目 存在の重さに耐えられない軽さ①
夜9時過ぎ、ヤンと篠宮はてくてくと帰路を歩いていた。
「この後どうするの?」
この発言は大人の会話ではなく、今後の方針についてというのはしっかり分かっている。
「まず現状をおさらいしよう。当初の目的は天下統一に向けて最初の相手平尾校を攻略することだったけどかなり厳しくなった。その問題として味方も敵になったから打てる手がほぼない。詰みだ。」
「じゃあ、味方の誤解を解いて平尾校を攻略するのは?」
「その味方の誤解を解いてくれるキーマンの金木さんが告発しないと難しいよ。」
「金木さん待ちになっているけど、もし告発しなかったら終わりじゃん!」
かなりご立腹の様子。
「そう、だからセカンドプランを練らないいけない。」
「もう考えてあるの?」
「もう強引に平尾校を攻略する。」
「無茶でしょ!」
「味方が自分達のことを
「あのー、この間も聞こうと思ったんだけど
「
「その人も普通に敵の
「そう、だからどちらにせよ敵の
「それは分かったけど、私たち2人で平尾校攻略は以前あなた無理って言ったよね。長岡校全員から狙われてる状態で仲間集めるのは無理じゃない?」
「そうなんだけど、自分達と同じ全校生徒に嫌われてるプレイヤーがいる。そいつなら味方になってくれるかもしれない。」
「敵の敵は味方理論?」
「そいつも
「何その人?」
「出席簿には存在しているのに誰も遭遇したことがない不気味な人なんだ。しかもその人が住んでいるであろう家から奇声とラップ音が聞こえるとか。まあ噂だと
「遭遇したことがないってもしかして姿を眩ましてる可能性が……」
「そう、この間篠宮が使ってた透明マントとかで隠れてる可能性がある。」
「だとしたら腹が立つわね!」
篠宮はしかめ面で言った。
「あなたに言ってなかったけど、あの透明マントも弱点があって1日に10分しか持たないの。だからそう何度も長時間使用できるものじゃないから、かなり高性能なマントを持っている可能性があるわ。技術を公開しないなんて、科学者なら風上にも置けない人だわ!」
大変ご機嫌斜めな様子。
「まあ、
「ちょっと、なんで帰って寝ようとしてるの?」
「えっ」
「昨日、一昨日戦争で、今日は深酒してちょっと眠いんだけど。」
「あなたビール1杯飲んだ後ソフトドリンクしか飲んでないじゃない!今から
嘘だろ。知的探究心もほどほどにしてほしいよ……
〜帰宅後〜
眠いのに我慢してヘッドギアを装着し戦学時代にログインした。
もう夜もあって人気が少ない。まあ他の人は今から就寝の時間だからあれだけど、自分達みたいなお尋ね者か
ヤンと篠宮は共に最後のログインが御子神社だったため境内の中にいた。
「ねえ、その
「さっき話した
「じゃあ護身用に透明マントを貸しておくわ♪風紀委員に見つかって殺されないようにね♪」
縁起の悪いこと言うなよって言いたいけど、まぁたしかに保険として持っておいた方がいい。
「なるべく大通りを避けて行こう。」
そして自分達が向かう先が野魔大池公園のすぐ近くの住宅街で、ここから最短距離で行けば15分くらいだが、大通りを避けるため迂回する必要があり、また極力民家の敷地内を通るなどしてなるべく人通りを避けた。
「ここまで順調に行けたわね♪」
「ほんと夜でよかったよ。昼だったら完全にアウトだったな。」
「だから今日でよかったでしょ♪感謝しなさい♪」
したり顔で篠宮は僕の顔を覗く。別に昼なら昼で別の方法でやれたよとは言えなかった。まあでもこの調子なら早く着きそうだ。なんて思った矢先だった。
「おい、そこ止まれ!」
その声が聞こえて来たのは人通りがある道路ではなく自分達が侵入した民家の屋根からだった。
「
そう言って屋根から降りたのは風紀委員の腕章をした好青年だった。見た目は攻殻機動隊のトグサのような顔立ちだった。
「ん?君たちは昨日の通知で来た不審者かい?」
「いえ、違いますよ私たちは善良な一般市民ですよ♪」
そう言って銃を構えようとしたところ、風紀委員が先に銃弾を撃ち、篠宮の銃を弾いた。
「そのまま手を挙げ、跪け」
「どうするの、このまま戦うも逃げるも相手が増援
呼ばれたら詰むわ♪」
篠宮はそう耳打ちをした。
そうだ1番やってはいけないのが、増援を呼ばれて学校に連行されること。これだけは絶対に避けなければならない。
「大丈夫だ問題ない。ここは自分に任せて」
篠宮に耳打ちし、そしてヤンは大人しく手を挙げた。
「分かった降参する。」
戦意がないと判断した風紀委員は屋根から降り、ヤンたちに近づいた。
「もっと抵抗するかと思ったがあっけなかったな。」
そう言い手錠をかけようとした時ヤンは言った
「自分達はゴーストを追っている。」
突然の告白に風紀委員は驚いたが、冷静に対応した。
「だからなんだ。それで自分達を解放しろとでも言いたいのか。」
「解放しろとは言わない。一緒に来て探して欲しいんだ。」
「だいたいゴーストは誰も会ったことない存在だろ?どうやって見つけるんだ。」
そう言われてヤンは篠宮に目を向けた。
「それは隣にいる助手が知恵を使って見つけてもらう。」
そう言うと篠宮はヤンの足を思いっきり踏んで言った。
「ねえ、いつからあなたの助手になったのかしら!」
そんな自分と篠宮のやりとりを尻目に風紀委員は尋ねた。
「そもそもゴーストはお前たちの仲間なのか?」
「いや、違う自分達の身の潔白にゴーストが必要なんだ。」
風紀委員はじっとヤンを見つめた。
「どうやら嘘はついてないみたいだな。それじゃあ、まず君たちを学校まで連行してその助手に今までのゴーストの調査報告を教えゴーストを捕まえる。そんでゴーストに身の潔白の情報を吐かせてやれば全部解決するな。」
ヤンは今の話を聞いて焦った。それはまずい。相手は1番リスクが少なく、無難で確実で合理的な判断だ。この状況、風紀委員の提案を打開する方法が思い浮かばない。。。ヤンは完全に諦めかけていたその時だった。
「百聞は一見にしかず。現場に直接行ってこの目で確かめないと分からないわ♪」
篠宮がしたり顔でこちらを見ている。あんな大見えを切っていたのに私がいないとダメねそんな風に顔に書いているのがよく見えた。ほんと恐れ入ります。。。
「おいおい、逃げるための口実だろ?」
「そんなことはないわ♪逃げようと思ったらもっと抵抗していたよ♪逃げる意思はとっくにないわ♪」
続けてヤンも言った。
「それに君にも悪い話ではない。一人でこのお尋ね者2人と七不思議の一つを解明した功績が得られるだろ?」
長い間沈黙が続いた。
「分かった。その代わり手錠はかけさせる。いいな。」
状況はそんなに芳しくないが、最悪の状況は回避した。後は
「それじゃあ行きましょうかお化け屋敷に♪」
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