第二話 異世界人の接触

「・・・とんでもない光景ですね。生き残りは・・・・・いないようです」


鎧姿の男が周囲を見回しては重い声で言葉を発した。


その表情は顔につけてある兜で見えなかったが、声の感じからしても決して明るい表情でない事は明らかなようだ。


鎧姿の男の声に反応するかのようにローブを着た学者風の男が喋り出した。


「おやおやぁ、やはり死んでしまいましたかぁ。魔力量によっては死なないこともあるとか何とか聞いていましたがぁ、まぁそんなことはどうでもいいでしょう。で、肝心の成果はどちらにいらっしゃいますかねぇ?」


まるで何人死んでいようと自分には関係ない、いや興味がないといった風な態度で周囲を見回しながら言葉を発する男。


だがその発言に特別驚いているような者は誰ひとりとしていない。


ふと隣にいた同じような格好をしたローブ姿の女が周囲を見回して声を出した。


「ウルベ様、あちらに」


ローブの女は倒れている男に向かって視線を向けて指を差した。


指を差された男は自分が注目を浴びる事を予期して咄嗟に目を瞑って気絶したフリをする。


それを見たウルベと呼ばれた男は口の端を釣り上げて笑いながら男を観察する。


「くっくっく!成功はしたようで良かったですよぉ。彼らも死んだ甲斐がありましたねぇ、おや?少々場所が移動していますねぇ、魔方陣の中心から動いているところをみると一度目が覚めたのですかねぇ?」


ウルベと呼ばれた男は明らかに衣服の違う男を見て、少し訝しげな表情をしながらも心底楽しそうな表情と声色で語る。


「本当に意識を失っているのでしょうか?死んでいるのではないのですか?」


ローブを着た女は男の反応のなさにそのような事を口にする。


「くっくっく。そんなに簡単に死んでもらっては彼らが浮かばれませんねぇ。どれ、生きているかどうかちょっと確認してくださいな」


ウルベと呼ばれた男がそう声をかけると周囲にいた鎧姿の男が動き出して、気絶したフリをしている男に向かって近づいて行く。


男は目を瞑ってただガシャガシャとした音が近づいてくるのを緊張しながら、でも何もすることも出来ずに身動きせずジッとしている。


男の目の前で鎧姿の男が腰をおろして手に着けていた手甲を外し、男の鼻と口に手を向けて何かを確認した後、今度は右胸に手を当てて何かを探るようにジッとしていた。


「・・・・・息はしております。心臓も動いているようです」


鎧姿の男がそういうとウルベと呼ばれた男は一層笑みを深くして一つ頷く。


「それはよかったぁ。大事な実験体ですからねぇ。丁重に扱ってくださいねぇ。では証拠を消すのはあなたに任せておきますよ。アミーラ」


「かしこまりました。ウルベ様」


アミーラと呼ばれた女がそう答えるとウルベと呼ばれた男は一つ頷き満足そうな表情で踵を返す。


「さて、私は実験室に戻りましょうかぁ、忙しくなりますよぉ、くっくっくっくっく」


そういうと隣にいたアミーラと呼ばれた女は男に背を向けて周囲の鎧の男達に何事か指示をし出した。


そして気絶したフリをしている男を先程、生死を確認した鎧姿の男が抱えて歩き出した。


「(くっそ!やっぱり言葉がわからねぇ、何を言っているのかもわからないし、どこかに連れて行かれるのか?胸に手を置かれていたところをみると、生きていることの確認もしていたみたいな感じだが・・・何がどうなってるんだよ!チクショウ!)」


結局自分に意識がある事を名乗り上げる事も出来ずにただただ運ばれていく男であった。

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