第2話 タイヤキくんの惨劇 母と三男

キッチンで洗い物をしながら歌う母

「♪まっいにち、まいっにち、ぼくらは鉄板のぉ〜♪」

そこへ風呂上りの三男が登場。冷蔵庫を物色

母「知ってる?この歌」

三男「聞いた事はある。タイヤキだろ」

母「『およげタイヤキくん』だよ。たのしいよね〜」

三男「そお?」

三男アイスクリームをだして食べ始める

母「実は、最後がチョット悲しいんだよ。最後がね、♪おっじさん、つ〜ばを飲み込んで、ぼくをうっまそうに食べたのさっ♪って、食べられちゃうんか〜い!ってね」

三男「ふ〜ん…そんなん、ちゃんと聞いた事なかった」

母「その歌の時にテレビにでてる絵がね、釣られちゃってるのよ。タイヤキくん。普通の魚みたいに。なに釣られちゃってんの?釣り針の先のエサ、食べたの?食べる必要ある?おなか餡子あんこがつまってるのに。」

三男「そこは…普通の魚みたいになりたかったんじゃない?泳いちゃってるぐらいだしさ。」

母「あー!なるほど…他の魚と同じように何か食べてみたかったんだ。」

三男「そうそう、きっと」

母「なるほど〜。でもさ、おじさんも釣り上げたタイヤキ、食べるかね? ベチャベチャだよ?フニャフニャだよ?おいしくないよ!」

三男「いやいやいや、歌だから、お話しだから…それ言ったらさ…実際にタイヤキを海に入れたらどうなる?」


数秒の沈黙。洗い物の手をとめて考える母


三男「喰われるでしょ。他の魚に」

母「…うっ…タイヤキに群がる魚の群れが…からだじゅうをつつかれ砕けていくタイヤキくんの姿が…悲鳴が聞こえる…いや〜!!」


三男「はいはい…あ、明日さ、タイヤキアイス買ってきて。食べたくなっちゃった」

母「オッケー。覚えてたらね」

洗い物を再開する母

母「♪いっぽんで〜も、にんじん…♪」

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