いろんなジャンルへの挑戦。
雪刀
恋してた少年と恋知らぬ少女
ある夏の蒸し暑い夜
少年は自暴自棄になり家を飛び出し、
走って走って走り続け、ついに体に限界が来た時に公園に着いた。
そして、夜の公園にひとり彷徨うように歩いていた。
ふと少年が額に手を置くと、汗がびしょりと手についていた。
それは、当たり前だ。家から数十キロ離れた所に、走り続けていたのだから。
軽い脱水症状のようだ。
少年は公衆トイレ近くの給水所を見つけ、そちらに向かい歩いた。
みずを口に含み、飲み込む。
少年の乾いた喉に水が染み渡る。
水を含むことで少年の熱くなった頭は少し冷えたようだ。
「はぁ……。」
近くにあったベンチに座りながらため息をこぼす。
少年はポケットに入れたままだったスマホを取り出し、ロックを解く。
その画面には、
「「ごめんなさい。他に好きな人が出来たの。
私と、別れてくれない?
貴方のことをもう好きと思えないの。」」
少年が今までお付き合いしていた彼女からの
最後のメッセージだった。
「夢じゃ、、無いんだな、、。」
改めて画面に目を落とす。
画面の文字は、変わらない。
少年が公園に来る少し前に来たメッセージ。
最初に見たときの少年は、怒っていた。
(何故?どうして?俺の何が悪かったんだ?)
少年は、自問自答を繰り返し、怒っていた。
だが、だんだんと勢いがなくなり、
落ち込んでいった。
そして、後に残ったのは、喪失感と無気力感
それを振り払うかのように少年は家から
飛び出していった。
そして、今にいたる。
何を送っても既読のつかないメッセージ。
何度電話をしても繋がらない。
「はぁ……。」
少年は、もう一度ため息を吐いた。
ふと、近くから
キーーコーーキーーコーー
金属の錆びた物が擦れる高い雑音が聞こえた。
チラリと少年が視線を音のした方に向けると、
ブランコが動いていた。
そして、そこには、人形の様な美しい造りの少女が
ブランコに乗っていた。
髪は美しい金髪のロングヘア、顔ぼんやりとだがは幼げながらも美しさを両立した少女がいた。
少年はそんな少女にちらりと視線を動かすが、
すぐに視線を下に向ける。
だが、少女はその視線に気づいたように目線を向けた。
錆びた金属音が止まり、小さな足音がこちらに向かってくる。
足音に反応する様に少年は顔を上げる。
そして少年と少女は出会った。
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恋してた少年と恋知らぬ少女
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「ねぇ貴方どうしてここに?」
こちらに近づいてきた少女が問う。
少年は改めて少女の顔をはっきりと見た。
透き通った白い肌、サファイアの様な青い目。
ロングストレートの金髪。
歳は12〜3歳位だろうか。
まさに西洋人形そのものだった。
少年は驚いたが言葉を返さなければと、
「外にいたい気分だったんだ。」
そう答える。
「嘘」
とても短いが、少年はその言葉にドキリとした。
その通りだ。こんな蒸し暑い夜に外にいるほうがおかしい。何かあったと考えるのが普通だろう。
でも何故この少女は話しかけてきたのだろう。
この少女には何も関係が無い。
何故?
「貴方失恋でもした?」
「エッ」
何故だろう。何故この少女が分かるんだ?
「なんで、、分かったんだ。」
少年はそう少女に問う。
少女は無表情で、
「だって、貴方私に告白してきて
私がふった人達の表情によく似てるもの。」
そう言う少女の表情は無表情ながらも影がさしていた。
少年は何を言うべきか悩み口を閉ざした。
返す言葉が見つからない。
少女は続ける。
「貴方恋とはどんなものか教えてくれない?」
「はぁ?」
急になんだ。
急に聞いてこられてもすぐには出てこない。
「私が見る限り貴方は恋をしていたのでしょう?
恋と言う物がどんなものか教えてくれないかしら。」
少年はこれを聞いて顔をしかめる。
「なんで俺に聞くんだ。」
「友達にでも聞けばいいじゃないか。」
そう言うと、少女は視線を下に向け、口を閉ざす。
少年も言葉が見つからず黙る。
そして、お互いに黙り込んでしまった。
静まり返る彼ら。
夏の虫の声が何処か遠くに聞こえる。
この蒸し暑いなかの静寂をきったのは、少女の方だった。
「私ね、友達と呼べる存在がいないの。
よって来るのは私の見た目に惹かれた、
馬鹿な男子ばかり。
そしてどんどん女子は離れて行ったわ。
そんな人達友達とは言えないわ。」
少年は口を閉ざしたまま聞く。
「私って可愛いでしょ。だから男子には人気だけど女子には好かれないの。告白だって何回も受けたわ。そのすべてを断わったけどね。」
「愛してる、貴方が好きです。何回も言われてきたけど、すべてが薄っぺらいもの。上辺しか見てないのよ。」
少女はそこで言葉を区切って、
「だからこそ、私は恋を知りたい。
恋とは何か、好きとは何か知りたいのよ。」
相変わらずの無表情のままだったが、
その言葉には重みを感じた。
「だから、恋をしていた貴方に聞けば
何か分かるんじゃないかと思ったの。」
「ねぇ、もう一度言うわ。
恋とはどんなものか教えてくれない?」
何なんだこいつは、恋を教えろなんて。
もう俺には教えられない。
頭のなかが真っ白だ。
どういうものか思い出せない位、彼の心は弱っていた。
彼にとってこの失恋はそれだけ辛いものだった。
少年は何も言わない。
教えられないからだ。
少年は思い出せない。
思い出そうとするのを自分の心が拒んでしまっている。
少女はそんな少年を見て、
「失恋は悲しいものだとは知っているわ。
でも私は貴方にしか頼めないの。
振られてもまだその人を愛している貴方だから聞いているの。」
彼女は顔を少し近づけ、真っ直ぐとこちらを見つめてきた。
彼女の様なかわいい少女に頼まれたら、大概の人達は引き受けるだろうが、少年はその綺麗な顔をみても何も思わない。
でも、その姿を見てどことなく彼女の面影が脳裏にうつった。
少年は、何かがプツリと音をたてて切れた。
「………いくせに。」
「良く聞こえなかったわ。もう一度いい?」
「何もしらないくせに!!」
少女に対し、彼女の面影が見えてしまった少年は、
少女に怒鳴ってしまった。
わかってる。
この少女にあたってもどうしようもないと。
だが、少年の口は止まらない。
「失恋の悲しみは知っている?恋したこともないのに?」
「安っぽい同情はいらないんだよ!!」
「だいたいなぁ!俺はあいつに
恋してなんていなかった!
恋して、なん、ていな、かった。」
少年の視界が歪む。
自然と体が下を向く。
公園の砂に涙がこぼれ落ちる。
スッと少女の細い手が差し出される。
「いいえ、貴方は彼女を恋をしていたわ。
心の底から彼女を好きだった。
だからこそ、今貴方は涙を流せるの。
本当に、恋していたから。」
少女の細い陶器の様な手が少年の頬に添えられる。
少年は顔を上げる。
月光に照らされた、少女はより一層美しく見えた。
「貴方は好きを貫いた。でも彼女にはそれが届かなかった。貴方は何も悪くないわ。だって好きを貫いたんですもの。」
「そう、だろう、か。」
「そうよ。貴方は彼女に振られてもなお好きでいたんだから。私は同情なんてしないわ。ましては蔑むこともしない。素直に私は貴方を凄いと思っているから。」
「はっ?」
こんな俺が?
何処かすごいんだ?
「貴方は十分凄いのよ。だから、こんなことで挫けてちゃいけないのよ。」
少女の声に初めて感情がのる。
「もう大丈夫よ。貴方は前を向ける。」
前を?
「悔しいのなら、彼女よりも幸せになりなさい。
大丈夫。貴方なら出来るわ。」
少女はそう言って手を離す。
そうして語り終えた様に背を向けて少女は離れる。
ジーンと冷え切った心に熱が戻る。
少年はこの感情を知っていた。
くるッと振り返り少女が問う。
「最後に言うわ。恋とはどんなものか教えてくれない?」
「……出来る範囲でなら。」
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恋した少年と恋知らぬ少女
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後書き
どうも主です。まずは謝罪を。
とても拙く、意味が分からない所があると思います。ですが、私はこういった物が書きたかったので
自分では少し満足しています。
なので、伝えたいことが伝わっていなかったらすみません。
自分の伝えたいことが伝わっていたらとても嬉しいです。
そして、この小説は思いつき次第更新していきます。よければまた次回。
いろんなジャンルへの挑戦。 雪刀 @yukigatana
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