第353話切り抜き視聴配信2
「え~次の切り抜きはこちら! 『祭屋光が気持ち良すぎる心音淡雪【ライブオン/切り抜き/祭屋光/心音淡雪】』」
コメント
:タイトルホイホイ
:あっ(察し)
:覚えてるー!
:暗記してる
:有素ちゃんサブ垢バレるよ
「これも懐かしいですねぇ~。三期生デビューから1年と1ヵ月記念の後の企画です。光ちゃんにネットミームを教えてみようという試みですね。あと、これはあわ状態ですね。シュワだけじゃなくこっちも振り返らないと! じゃあ行きますよ~!」
コメント
:ちゃんと光ちゃんをドMに調教した後って言え
:自分振り返れてないですよ
:草
説明も程々にして、動画を再生する。
『光ちゃんってネットミームはどのくらい知っていますか?』
『かたったーでトレンドになるのはたまに見るから知ってるよ! でもVTuberになる以前はあんまり気にしてなかったかなー』
『なるほど、じゃあこれは知っていますか?』
画面に表示されたのは、『ぬるぽ』の文字。
ガッ。
『ガッ』
「ガッ」
コメント
:ガッ
:ガッ
:ガッ
:ガッ
:
:
:
:
驚異の訓練度。流石は私のリスナーさんだ。
『ど、どうしたの?』
『光ちゃん、マナー違反です』
『え!?』
『ぬるぽと言われたら、ガッと返すのがネット業界のマナーなんです』
『そうだったのか!? でもなんで?』
『なんでだと思いますか?』
『えっと……ぬるぽはぬるぬるポイントの略で、そこだと皆がガッって転んじゃうから?』
『光ちゃん』
『は、はい!』
『とある掲示板で投稿者がNullPointerExceptionというエラーメッセージを略してぬるぽと呼び、それへガッと返信した人がいたことからこれは定着しました』
『そ、そうなんだ……』
『つまり花丸です』
『へ!? 光間違えたよ!?』
『光ちゃん。ネット用語はね、当てたら不正解なんです。それが人生なんです』
『???????????』
コメント
:泣いた
:悲しくなるからやめろ
:ニヤニヤしながらガッで返したリスナー皆真顔になっちゃったよ
:ガッ(即死)
:光ちゃんが正解の方が幸せだよきっと
:実際元ネタの方が意味分からんもんな……
「オタクは陽キャにネットミームを説明してると、なぜか異様に恥ずかしくなってしまう。そういう生き物なんです……」
動画を進めよう……。
次に画面に表示されたのは、『そんな装備で大丈夫か?』の文字。
コメント
:大丈夫じゃない、問題だ
:ナンダコレハジメテミルナー
:RPGの武器屋かな?
:アゲハ蝶の歌詞だった気がする
:さっきの流れがあるから皆しら切ってて草
『大丈夫だ、問題ない』
『ひ、光ちゃん!?』
『これね、よく装備縛りでゲームするときにコメントで言われるから覚えたの! エルシ〇ダイのやつだよね!』
『そう! そうですよ! エルシ〇ダイのPVのルシフェル編というものが元ネタでして、ネット流行語大賞の金賞も受賞したんですよ! しかもこれPVなのでゲーム発売前に流行ったんですね! だからゲームの注目度も高くて、いざ発売してみたらなんともいえないクオリティでしてね、でもそんなところも愛おしくて、未だにネット民から大人気なゲームなんですよ!』
『そ、そっか? でも、正解したらダメなんだよね?』
『いいや大正解! オタクに優しい陽キャなんてなんぼいてもいいですからね!』
『???????????』
コメント
:大丈夫だ、問題ない
:神は言っている、ここで死ぬさだめではないと
:一番いいのを頼む
:いいノックだ
:トルノデス……
:大復活してて草
:止まんねぇぞこれ
:第一はダメでも第二言語が通じると分かった時みたいな感動
:やめろ踏みとどまれ! それ以上は引かれるぞ!
「オタクはネットミームが通じると分かると、必要以上に饒舌になってしまう。そういう生き物なんです……」
明らかに口数と早口が多くなり、大して重要でもない雑学までぺらぺら話し始めた画面内の自分を見て、私はそう嘆いてしまったのだった……。
動画を進めていく。
『そろそろアレでないかなー』
『アレってなんですか?』
『光の好きなやつ! 早く来ないかなーって待ってるの!』
こんなのやったなぁなんて懐かしさに浸りながら見ていると、ここまで答える側だった光ちゃんからのアクションがあった。
さて、時間が経ったため現在は記憶が怪しくなっているこの配信だが、ここは鮮明に覚えている。
ここからは私の心境を説明していこう――
『問題は残り少ないですが、ありますかね……ちなみにどんなのですか?』
『気持ちいいやつ!』
この時点でもうあの男の姿が頭には浮かんでいる。
『気持ちいい……』
『うん! すっごいノリノリで!』
この時点でもう詠唱が頭の中に流れ始めている。
『……他には?』
『あとは……そうだアニソンだ!』
この時点でそれは原曲の方だろとツッコミを入れたがっている。
だけど言わない。言ったら光ちゃんの印象が変わってしまうから、それを認めたくなくて。
だって、そんなわけないじゃないか。
光ちゃんが――光ちゃんが――
『ほらあれだよあれ! 分身して画面を埋め尽くすやつ!』
『なんてもんにハマってるんじゃああああぁぁーーーー!?!?!?!?』
おと○○○にハマっているなんて!!!!
とうとう頭の中が気持ちよすぎだろで埋め尽くされる。
なんとか無罪放免にする道を探ってあげたかったが、もうむりだ。光ちゃんからの自首により、それは確定的になってしまった。
たまらず私も絶叫でツッコミを入れる。
『ど、どうしたの淡雪ちゃん!?』
『どうしたじゃないですよ!! どこで!? どこでそんなものを知った!?』
『へ? 最初はましろちゃんからおススメされたんだったかな』
『ましろんが!? クールな顔してちゃっかり気持ちよくなってたのかよ……というか、光ちゃんそういうネタ苦手なんじゃ!?』
『え、あれはめっちゃ好き!』
『アレはいける? もろにヤバい単語含まれてるはずなのに……ま、まさか覚醒の影響か!?』
『淡雪ちゃんは好きじゃないの?』
『え!? えっと……あの、それはぁ……言いにくいというか……』
『なんで? 今めっちゃ流行ってるよ! 中高は勿論小学生とかも歌ったり踊ったりしてるんだから!』
『もう終わりだよこの国』
『そんなことないって! サブカルが一般にも浸透してきた証拠だよ! 素晴らしい芸術なんだから胸を張っていいの!』
本当か? 本当にそれでいいのか?
――私は覚悟を決めた。
勿論抵抗はある。日本がそこまで汚くなったわけがないことも理解している。
だけど――光ちゃんとましろんが好きだと言ったのだ。ならば私だけ逃げることなんてできない。
なぜなら守る為。
親友が教室でう〇こを漏らした時は――
罪を分散させる為――
自らも漏らすべきなのだ――
『リアルに500回は観ました』
逝った。後悔はない。
『だよね! 光ももうめっっっっちゃリピってるの!』
『分かる』
『よっしゃあ! じゃあ今から一緒に歌おう!』
『それはまずいんじゃないかな!?』
『大丈夫! キーは変えるから!』
『元からキーは変わってるんですよ!』
『せーの!』
『ああああああああああああああああああああ!!!!』
『ブリンバンバンブリンバンバンブリンバンバンボン♪』
『ああぁぁぁぁ?』
慌ててせめてもの抵抗で大声をあげてかき消そうとしたのだが、予想したものとは違う曲が聴こえてきてそれは?に変わった。
は?????????
『くぅ~! もう頭の中から離れないよ!』
『光ちゃん』
『はーい!』
『まじか』
『何が?』
『気持ちいいって言ったのは?』
『聴いてても気持ちいいし踊っても気持ちいいじゃん!』
『光ちゃん』
『はーい!』
『それは……ネットミームじゃなくて……割と普通のミームかと……』
私はそのツッコミを最後に、企画が終わるまで、どこかうわの空なのだった。
「――という心境だったんですね」
切り抜きが終わったので、説明を終わる。
コメント
:こんなの笑うわ
:解説あざす ¥2110
:すごいwww覚悟がwwwあったんですねwww
:漏らしたの淡雪だけで草
:500がガチな数字っぽいのほんと草
:清楚はどうなってんだ清楚は!
:当時ブリンバンバンの方500回聴いてたかもしれないだろって言い訳してたのめっちゃ笑ったw
:奇跡の一致
:まぁ光ちゃんがアレにハマるわけないわな
「今なら理解出来ちゃう可能性があるから要注意ですけどね……あ、今は消されちゃってたので大丈夫か……」
なんというか、花火のように鮮烈で儚い存在だったね……。
「さて、忘れちゃいけないのが振り返りですね」
この切り抜きの私は~そうだな~。
「いい具合にコラボ相手の個性も引き出せていますね。あわ状態にこなれ感が出てきたのはこのくらいの時期だったかも。だけど清楚じゃないのが残念ですね」
コメント
:それはいつもだろ
:常に残念な女
:いつかこの振り返り配信見返した時同じこといってそう
次行きましょう……。
【あとがき】
リアルだと各ネタの時期が少しズレていますが、創作だからできる試みと思っていただけるとありがたく……。
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