第354話切り抜き視聴配信3

 さて、次の切り抜きはこちら、『振られるシュワちゃん【ライブオン/切り抜き/神成シオン/心音淡雪/苑風エーライ】』だ。


コメント

:タイトルに無駄が一切ない

:シンプルなのにこんなの再生してまうわ

:ここまでくると芸術だろwww


 これは確か、聖様とシオン先輩がカップルになった直後の時期に、このままではシオン先輩が危ないと思い、そうだ、あのエーライちゃんならシオン先輩を聖様から引き離し、幸せにしてくれるのではないかと思い、企画した配信だったはず。

 勿論冗談半分なんだけど、どんなことやったっけなぁ。

 動画を再生する。


『急に呼び出されたと思ったらシオン先輩の強奪を命令されたのですよ~。帰りてぇのですよ~』

『聖! 待っててね! 私この企画が終わったらすぐに戻るからね!』


 文句を言いながらもなんだかんだ付き合ってくれる優しい仲間達、当時も今もありがとう……。


『シオンママ、エーライちゃんはいいぞ』


 配信の挨拶と企画説明が終わった後、早速そう切り出したシュワちゃんこと私。


『なんたって霊長類最恐の女だからね!』

『霊長類最低の女には言われたくないのですよ~』

『ほら、エーライちゃんも自分からアピールしなさい!』

『ええぇ? 突然言われても困るのですよ~』

『もう! そんなのだとシオンママを魔の手から救えないど! もう私が代わりにやったる! いいですかシオンママ、エーライちゃんは喫煙が趣味で、好きな銘柄は火薬だど!』

『待ったー! 私は喫煙者ではないのですよ~! 火薬なんて銘柄も知らないですよ!』

『いや火薬は火薬よ、爆発するやつ。火薬を直接口に含んでそれに火を点ける喫煙法が刺激的でたまらないんでしょ!』

『一体どこで私にそんな設定追加されたのですよ……』

『あと、エーライちゃんは警察署行き限定タクシーを無料で乗れる権利を持つ限られた人間なんだど!』

『パトカー呼ばれても私は捕まらねぇのですよ! ちょっと! さっきからぜんっぜんアピールになっていないのですよ! もっと動物が好きとか話し上手とかあるのですよ!!』

『何言ってんだ! シオンママにはこれでいいんだよ!』

『どうしようもない子だぁ……ちょっといいかもぉ……』

『ほらな!』

『……これ、私じゃなくて還ちゃん呼んだ方がいいと思うのですよ……』

『あの子はほら、付き合うとシオンママの将来が心配だから』

『いきなり現実的なこと言うのはやめるのですよ~』


「いいぞ私! 聖様と付き合う利点なんておサイフセイサマのサービスしかないですからね、そのまま引きはがしちゃえ!」


コメント

:謝罪じゃなく応援するのか……

:火薬のことパチパチって呼んでそう

:組長は火薬喫煙しないぞ。させる側だからな

:おサイフケータイみたいに言うな!

:付き合ったら当然のように財布扱いになる聖様草

:まさか晴ちゃんがセイセイって呼ぶのはペ〇ペイだからなのか!?

:セイセイ♪(お支払いが完了しました)

:聖様二股疑惑じゃん、サイテー

:決済サービス名で呼ばれる恋人関係があってたまるか


『ほらエーライちゃん! 次は甘い言葉でシオン先輩を落としに行くんだ!』

『えぇ? えっと、和風の装いが良く似合っていて素敵なのですよ~』

『違う! 卵子がいい匂いしそうですね!』

『それこそ違うのですよ!!』

『えぇ!? それっていい母体ってこと!? て、照れちゃうなぁ~えへへぇ』

『……シオン先輩には聖様がお似合いな気がしてきたのですよ』

『何言ってんだ! 私がボッチなのに聖様に彼女が出来るなんて認めないぞ!』

『本音漏れてるですよ~』

『うるさい! さぁ! 次は話を聞いてあげるムーブだ! シオンママ、最近の悩みとかないですか?』

『うーん悩みかぁ……母乳が出ないことかな』

『出るようにしてあげようか?』

『キモ……あっ、キモいのですよ~』

『エーライちゃん! ソープマットを敷け!』

『いらないオプション付いてますよ~』

『逆にエーライちゃんは悩みとかないの? ママ知りたいな~』

『悩み? うーん……』

『今の状況に疲れて赤ちゃんに戻りたくなったりしてない?』

『それはないのですよ~』

『そっかぁ……』

『なんで残念そうなのですよ……』


コメント

:ボケが多いんよ

:シオンママはボケてるつもり一切ないの怖すぎる

:エーライちゃん頑張れ……

:刑務所かライブオンかでライブオンを選んだ女

:また変な設定付けられてるよこの組長……


「今度私も組員の方々を見習ってスパチャしに行った方がいいかもしれませんね……」


 その後も、エーライちゃんのサポートをしてシオンママを盛り上げていく過去の私。

 そんな私を見て、エーライちゃんはふとこんなことを言った。


『もうこれ、シュワちゃん先輩がシオン先輩と付き合うのが一番いいんじゃないのですよ~?』

『『え!?』』

『だってさっきから息ピッタリなのですよ~!』

『そ、そんなことは……』

『確かに、シュワちゃんってすっごい手が掛かって素敵かも……』

『シオンママ!? え、えぇ~!?』


 あ~この件は覚えてるぞ……。

 嬉しさが隠せていない黄色い悲鳴をあげている自分を観ていられない。

 ごめん、聖様……! とでも思ってたんだろうなきっと。


『じゃ、じゃあ……私と付き合っちゃいますか?』

『う~ん……でもシュワちゃんは赤ちゃんって感じだから、恋人は聖がいいかな!』

『――――――――ぇ? 私聖様に負けて振られた?』

『人の恋路を邪魔する奴はこうなるのですよ~! いやぁ最後にいいもの観られたのですよ~!』

『うそだああああああああぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!!』


 こうして、エーライちゃんの一発逆転により、この切り抜きは終了したのだった。

 さて、振り返った感想だけど……。


「ちょっと今見てもショックですね……早く次行きましょう……」


コメント

:引きずってて草

:トラウマになってんじゃねぇかwww

:一撃が重いエーライちゃんロマン型でかっけぇ……

:さっきの自分だけ漏らしたのよりきつそうじゃん

:聖様に負けるのどんだけ嫌なんだよwww

:やっぱり振り返れてないんよ


 そそくさと動画を閉じる私なのだった……。

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