第351話あわシュワコラボ5

「お酒の種類によってフォームチェンジ出来るとか……可能性の化け物だろ……」

「あぁ……」


 それなぁ……実は色々なところから同じこと言われてはいるんだよね。

 でもなぁ……。


「すごいことなのかもしれませんけど……あんなことをヤラカシた手前、あんまり誇れるようなことでもないかなって思いまして……」

「何言ってんのお前?」


 どうしても脳裏にあのヤラカシが過ぎり、今後どう扱おうか迷っていた点だったが、シュワちゃんの意見は違うようで――


「そんなこと言ったら私の存在どうなっちゃうんだよ!(泣)」

「確かに!」


 忘れちゃいけなかったが、シュワちゃんは配信切り忘れというとんでもないヤラカシによって生まれた存在だ。

 そんな彼女のよる説得力は凄まじいものがあった。


コメント

:誇っていいに決まってるだろ!

:異能力バトル確かにしてたけど明らかに異質な能力が発現してて草

:草

:存在理由を否定された人間は辛いど……

:他のフォームも似たようなものってことか


「いやだってやばいど? だってお酒の種類によって無数にチェンジ出来るかもしれないんでしょ? 1人で何役出来るんだよ体ライブオンかよ」

「そんな便利なものではない気がしますが……」

「1人で新しいハコ運営出来るど」

「これが本当の独立ってかやかましいわ! ライブオン卒業とか一切考えてませんからね!」

「それくらいの可能性が心音淡雪にはあるってことよ! これに目を向けないなんてあまりにも勿体ないど!」

「…………まぁ……そうですね」


コメント

:イー〇イもビックリの順応性

:お前ハイボール飲んだら吉〇さんになること知ってるんだからな

:可能性は無限大!

:これ実質オーマ〇オウだろ

:1人ライブオン

:一枠の配信で一種類とか決めたら、需要がかなり高そう

:お酒による千変万化のライバーとか注目も大きいし、今までのリスナーの新たなトビラをこじ開ける可能性すら考えられる

:相手の好みに合わせて化ける、魔性の女よ

:あわちゃんにアルコール呑ませて疑〇ハーレム

:それは草


 シュワちゃんとリスナーさん達の勢いと説得力は、私から否定の言葉を奪っていく。

 なんかもう、吹っ切れてもいい気がしてきた……。

 

「とはいえ、それだけじゃダメなのも事実だど。さっきも言ったけどヤラカシたことは事実なんだから、それは反省すべし」

「はい……」


 釘を刺されてしまった……やっぱりそこはやっぱり忘れちゃだめだよね……。

 

「切り忘れ時を思い出せ! 悶絶するほどの羞恥と申し訳なさに襲われながらも、受け止めて前に進むことを選んだから今があるんだど!」

「あれは、もう引けぬ状態だったので……」

「初心を忘れたらダメ!」

「……そうですよね」

 

 退路がなく、ただただがむしゃらに突き進んだ初期の頃を思い出す。

 当時はもう終わったと思ったし、自分を振り返ることなんて出来なかった。でも今の私にとってはあれもいい思い出だ。


「要は反省ばっかりするんじゃなく、前に進もうってことよ! いつだって伸びるのはミスで立ち止まる人じゃなく、ミスを糧に出来る人なのだ!」

「おお! いいこと言ってる!」

「って多分偉い人が言ってた気がする」

「はいはい……」

 

 ほんと、決めるべき時には恥ずかしがっちゃうんだから……。

 まぁ、それがだよな。

 これだけ言われてみればと思うということは、シュワちゃんから聞いた話は、きっと元から私の中にあったものなんだろう。

 人は自分を見ることは出来ない。それもデジタルによって変わりつつあるのかもしれない。

 不思議な話だ。思い返せばいつだって、私はvirtualの自分から、私とは何かを教えてもらっているんだから。

 私にとってVTuberの姿とは、私でいる為の姿なんだね。


「要は今後、素を大事にすることを忘れないようにしながら、新たな武器を手に入れたと思い、前に進むことが大切ってことですよね」

「そうそう! それが言いたかったわけよ! じゃないと私の出番が減るじゃなくて、今回に限らず、短所を長所に出来るのがVTuberなんだど!」

「ふふっ、それは間違いないですね。だってその中でも、私はライブオンですし」

「そうそう、ライブオンなんだどー」


 笑い合う私達。

 こんなに自然に笑えたのは、活動休止以降初めてだったかもしれない。


コメント

:シュワちゃんがまともなこと言ってる……これもAIのバグか?

<相馬有素>:正常なのであります! これが淡雪殿なのであります!

:最近の他ライバーへの淡雪ってこんな感じあったと思う

:新しい武器……収益化記念配信を思い出すなぁ

:成長したが故の弱い面が出たあわが、成長したが故の強い面を知るシュワに元気付けられるのいいな


「ねぇ、

「お? 変な呼び方してどした?」

「そう思ったからそう呼んだだけです」

「なんだそれ……で、どしたん?」

「私でいてくれてありがとうございます」

「――――――――こちらこそありがとう」

「これからも頑張りましょうね」

「一緒に頑張るどー!」


コメント

:あかん意味分からんけど泣いちゃう

<相馬有素>:私は、この日の為に生まれてきたのかもしれないであります

:有素ちゃん悟り開いちゃってるじゃんw

:よくやったよwww

:エモいけどなんか認めたくないからエ〇いにしとく

:どっちも心音淡雪なんだよなぁ

:分裂して合体する展開すこ

:現在と過去が結びついたな


 こうして、私は自分を知り、再び立ち上がることを決心したのだった。

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