第332話ワルクラ配信4-1
ワルクラのライブオン用サーバー、『ライブワールド』。
四期生加入後辺りで創造されたこの世界は、当初目に入る物は大自然ばかりで、さながら前人未踏の地を彷彿とさせた。
そこから各々が自由に開拓を進め、段々と人工物が並び始め、やがてそれは町と呼べる規模になった。
そして今日――
「ライバーの皆さん、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。このめでたい日をライバー全員で祝えることを神に感謝し、皆さんにとって忘れられない思い出になればと存じます。それでは――ここに! ライブワールド完成記念祭を開催します!!」
『(パチパチパチパチ!)』
櫓に立ったシオン先輩の開宴の挨拶に、勢揃いしたライバー達から拍手や歓声が飛ぶ。
シオン先輩の隣には、一つの掲示板があり、そこには一枚の地図が貼ってあった。
それは、町の中央から作った、1024×1024マスのマップ。
実は町が広がっていく中で、この四桁×四桁の広大な空間を丸ごと町にすることを、一つの目標とする動きが発生していた。
掲示板の地図に目を凝らすと、そこには大小玉石様々あれど、その空間を埋め尽くす建造物という名の私達の足跡が、確かにあった。
つまり目標を達成。これを一旦の町の完成とし、記念に祝おうということで、ここシオン先輩作の『
てなわけで――乾杯!! プシュ!!!!
「さて! 堅苦しいのはこれくらいにして、今日は皆で目いっぱい楽しもーー!!」
「イェーイ! 今日は司会に立てて良かったねおしおー!」
「ましろん、心配すんな。淡雪派を集めた。デモの準備は出来てる」
「今初めて心配になったよ」
「巫女特権反対であります!」
「本当にやってるし……」
「はいそこ! 羽目を外し過ぎないように!」
「ハメ撮りは行為に夢中になってカメラを外し過ぎたらダメだよね。シオンいい事言った!」
「うん! 最初からライブオンに外れる羽目なんてなかった!」
コメント
:88888888 ¥8888
:お祭りだー!
:おい! スト樽持ってこーい!
:We are the world♪ we are the LiveOn♪
:ニュースです、めでたいお祭り会場でデモを引き起こした心音淡雪が発見されました
:あまりにも容赦ない名前出し
:他の事件を起こした心音淡雪がいるような言い方だな……いるな
:最近はましろちゃんの司会が多かったもんね……
:当人の意思を無視したデモ程怖いものはない
:聖様は何を言っているの?
全員VCを繋げている(キャラの距離によって音量が変わる)ため、挨拶が終わり次第、各々ワイワイと盛り上がり始める。
「確かに、この規模は大したものね」
興味深そうに地図を眺めていたチュリリ先生を発見したので、声をかけてみる。
「あはは、五期生はまだこの世界に入って日が浅いから、ちょっとこのテンションは戸惑っちゃうか」
「淡雪さん。そんなことないわ。先生も学校とか建てたし。今は純粋に驚いていただけよ」
「そかそか、私でも全部把握しきれてないくらい広いからなー。あっ、ちなみに町の地下にはちゃみちゃん作の地下帝国が全土に渡って広がってるど」
「地盤が心配になったわ……」
例の件以降、皮肉屋な面は残っていても少し丸くなったチュリリ先生。
前みたいな破滅的な言動が出ることも減ったし、最近は笑顔も増えて楽しそうだ。
「ねぇ淡雪さん」
「んー?」
「これはDL版だけど、ワルクラってゲームディスク版とかもあるのかしら?」
「あー光ディスクの? 多分あるんじゃないかな」
「良かった、じゃあ簡単にSEX出来るわね。先生の指やらなんやらが真ん中の穴にズボズボとね。あっあっ、そんな激しくしたら(刻み込まれたデータが)壊れちゃう! ってことよね、最高に興奮するわ、ふふふふふ!」
「…………失礼しましたぁ~」
コメント
:こう見ると町すげーなー
:ほんとに発展したよなぁ
:地下広すぎで草、テ〇アキンじゃねぇんだぞ
:ゲームディスク?
:あっ(とんずら)
:先生ぇ……
:www.?
:お読めに行けなくなっちゃう~ってことだよな(読み込みだけに)
:なんで解像度高いやついるんだよ
:ほんとに発展したよなぁ()
その分別の問題が出てきた気がするけど、本人が楽しそうならいいんじゃないかな。うん! 私悪くない!
あ、あそこにいるのは匡ちゃんだな。……1人でいるけど大丈夫かな?
「匡ちゃ」
「う゛う゛う゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ーーーー!!!!」
「…………」
大号泣してる。
さて、普通ならこういった場合、この子は仲間を作れずに1人になってしまい、悲しくて泣いていると思うだろう。
だがそうではない。ここ最近の匡ちゃんを見る限り、決まってこれは――
「この広大な町を我らが……ッ! なんと偉大なる功績! なんと寛大なる調和!! なんと美しい友情の証であろうか!!! ライブオン万歳!! ライブオンに栄光あれ!!! エデンの園はここに完成した!!!!」
「…………失礼しました~」
こういうことである。
コメント
:あっ(テレポ)
:関わったらあかん人や
:心配するな、いつものや、いずれ治まる
:まさか匡ちゃんがこうなるとは思わなんだ
:アンチしてた分、反動が大きかったってことなのかな……
:これはライブオン信者
先生と同じく例の事件以降、匡ちゃんは変わった。
だが先生のように元の性癖部分が変わったわけではない。相変わらず妄想大好きっ子だ(真相の究明を拒むことが減った変化はあったが)。
問題はライブオンへの意識の変化だった。
最初は、あ、ライブオンのことを受け入れてくれたんだな、よかったなー程度に思っていた私。だがすぐに間違いだったことを知った。
匡ちゃんにとって、アンチをしていたライブオンがむしろ自分の居場所であると理解した上に、生来の想像力豊かさが加わった結果――ライブオンへの信仰が始まった。
以前の姿はどこに行ったのか、ライブオンのことを話せば所属している私達ですら戸惑う称賛ばかり。
その姿はまるで私のことを語る時の有素ちゃんのよう……。
やがてついたあだ名は、コメントでも言われていた通り『ライブオン信者』。
アンチじゃなくなるだけでよかったのに! なんで! なんでこうも極端なの!!
……とまぁ、あの事件以降、こんな形でライブオンは収まっている。相変わらずカオスまみれのハチャメチャ模様だ。
でも……結局のところ、私にはこれがいいんだろうね。だってさ、ストゼロのつまみにはピッタリじゃん。
「ごくっごくっプハァ!」
ストゼロを流し込む。
こうしてお祭りは始まったのだった。
【告知】
詳しくは近況ノートの方にありますが、ライブオンのYouTube公式チャンネルが開設となりました!
https://youtu.be/teQX5b64qbw
ライバー達の動画が定期的に上がるので、応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます