第333話ワルクラ配信4-2
「淡雪殿ー!」
「お?」
名前を呼ばれた気がしたのでその方向に振り向くと、そこにはピョンピョンと跳ねてこちらにアピールする有素ちゃんの姿が。しかも、その体は木製の簡易的な建物の中にあった。
そう、祭りの定番、屋台だ。
せっかくのお祭りということで、一部のグループは事前に会場内に屋台を設置し、ゲームの中とはいえ飲食や遊んだり出来るようにしていた。
面白そうだったので、呼ばれた通り寄っていくことにする。
「有素ちゃん、屋台やってたんだ」
「はいであります! 淡雪殿もいかがでありますか?」
「ここはなんの屋台なの?」
「射的であります!」
ほお! 風情があることをやっているじゃないか! いかにも祭りの定番だ!
「いかがわしい店ではないのであります」
「分かっとるわ」
「以前聖殿が町に『大人の射的場』というラブホを建てたせいか、皆警戒してくるのであります……」
「あのバカがほんとごめんね……」
コメント
:あいつほんま……
:ベンチや公園以上にラブホがある町だからな、休憩し放題だぞ
:ちなみに全て公費で賄われるご利用無料です
:少子化対策だからね、仕方ないね(by聖様)
:出たな最大の切り札
:エロ界隈の少子化に焦り過ぎてSEX促進しか考えられなくなる政府ほんとすこ
:FA〇ZA内閣
:こうなったら屋台名を『子供の射的場』にするしかない
:なんかもっとやばくなってない?
:一部クレカの決済出来なそう
「基本はあくまで一般的な射的なのであります!」
「了解、それじゃあやってもいい?」
「勿論であります! まずルールを説明してもよろしいでしょうか!」
「お願いしまーす」
「あそこに還殿がいるので、この弓を射って、体に当てれば1点、頭に当てれば3点なのであります!」
「おっけー」
「一回お手本をお見せするのであります!」
有素ちゃんが弓を引き絞る。よく狙ってーよく狙ってー……ビュン!
「あっ、外しちゃったのであります……」
「的が悪いよ」
あれ? なんか還ちゃんがダッシュでこっち寄ってくるぞ?
「おい有素ちゃんですか! 今還に弓射ったのはー!!」
「もうすぐ交代の時間でありますよ。どうせサボると思ったので呼んだのであります」
「還は労働する必要がありません。なぜなら還は赤ちゃんだからです」
「赤ちゃんでも淡雪殿の為なら労働しなければいけないのであります」
「ママ。こんなにかわいい我が子にそんな酷いこと言いませんよね? お目目ウルウル……」
「ねぇねぇ眼球は何点? 今なら当てられる気がするどー!」
「ママ?」
コメント
:なんて恐ろしいゲームを当たり前のようにやろうとしてんだ!
:悪魔で一般的な射的って言ってたしな
:おっけー(無慈悲)
:的が悪いよで草
:おこな還ちゃんかわいい
:やべぇひよこババアだ!?!?
:え!? こいつが例の!?
:ほんまもん持ってきたらダメじゃん
:たった1人でライブオンのクレカを止めた女
:やっぱり止まるじゃないか!
:まだ止まってないから!
:いざ止まった時はこいつ以外にも原因あると思うぞ
:リスク分散ってやつだな
:分かれてはないからただのリスク拡散なんだわ
:還ちゃんはひよこババアとは根本的に真逆なんだよなぁ。むしろクレカでしか払えないから
:それはそれでおかしいだろ
冗談はこのくらいとばかりに、接客を再開する2人。
四期生間でも還ちゃんはこんな扱いなんだね……ちゃんと打ち解けててママ感動しました!
「全く、還もこの程度であればサボりませんよ」
「還ちゃん!? 大人になったね……」
「この屋台ほぼ座ってるだけでガッポガポですからね。一回のプレイでダイヤ一ついただきます」
「……景品は?」
「本屋台の射的は商品ではなく的を正確に射抜いた点数を競うものであり、1人でもプレイ可能ですが、2人プレイからの対戦形式を推奨しています。景品は勝敗を目安にプレイヤー間でお決めください」
「還ちゃん、大人になっちまったね」
「還は赤ちゃんですよ。文句ならこのシステム考えた姐さんに言ってください」
「エーライちゃん? じゃあこの屋台は四期生が運営してるんだ」
「はい。せっかくのこんな時くらい、一緒に何かやろうという話になりまして」
コメント
:天才か? ¥500
:なんて自主性を重んじた斬新で画期的なシステムなんだ……
:流石組長、テキ屋の運営はお手の物か
:これただのぼったくうわなんだこのゴリラどもやめr
:働いてるだけエーライエーライ
「そのエーライちゃんはいないの?」
「あー……有素ちゃんは見ました?」
「今は休憩中なので、近くにはいないかも…………あっ! あそこにいるのであります!」
有素ちゃんが見た方向を向くと、少し離れた場所にエーライちゃん、それとちゃみちゃんの姿があった。
屋台で遊ぶ前に挨拶でもと思い、近づく。すると、こんな会話が聞こえてきた。
「ねぇエーライちゃん。肺の中身吸っていい?」
「(無言で剣を構える)」
「あ、間違えた! 同じ空気吸っていい?」
「最初からそう言えばいいのに……それくらい私の許可いらないのですよ~」
「やった! すー、すー……えへへ、エーライちゃんの体内で熟成されたあまあま空気、濃厚でおいしい♡」
「こいつあまりにキモ過ぎるのですよ~!」
「あ、エーライちゃん! ……ナンパ失敗しちゃった」
どうやらちゃみちゃんがナンパをしていたらしい。案の定玉砕で逃げられていたが。(思わず私も「キモッ」と言ってしまったのは内緒)
「エーライちゃーん!」
逃げているエーライちゃんに声をかける。
「シュワちゃん先輩! 丁度いい、こいつ引き取ってほしいのですよ~」
「まぁまぁ、ちゃみちゃんだって悪気があるわけじゃないから」
「悪気があった方がまだましなのですよ~」
「エーライちゃん待ってー!」
「げっ、また来た、こうなったらもう処するしか……」
「お祭り会場を血祭会場にするのはダメだどー」
コメント
:今日のちゃみちゃま問答無用でキモ過ぎる
:お祭りだからはしゃいでるんだよ、キモいけど許してあげてくれ
:エーライちゃんに会えるイベントでもあるから仕方ない。キモいけど
:推しが元気にキモくて幸せ
:誰もキモいのは否定しないの草
:そもそもこれナンパなの? 新手のテロとかじゃなくて?
:積極的なコミュ症は見ててひやひやするな……
この2人は相変わらずのようだ。
うーん……せっかくのお祭りなんだし、この機会に色んなライバー間の交流が深まってほしいものではあるけどなー。
……あれ? そもそも私何しようとしてたんだっけ? ……そうだ射的だ。
……いいこと思いついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます