第77話ワルクラ配信3

「うわこっち来た!?」


私の存在に気づいた聖様が惜しみもなくその裸体をこちらに向かって近づけてくる。


「は!? もしかして聖様の裸体を映すとゲームとは言えセンシティブ判定を受けてBANされるのでは!? 画面に映らないようにしないと!」


全力で視点を地面に向けると、ワルクラに備わっているチャット機能で聖様からメッセージが来た。


ワルクラチャット

<宇月聖>:オッス! オラ聖様! 全裸を見られてると思うとゾクゾクすっぞ!!


「服どころかその皮膚も剥いでやろうかこの変態ガチレズオンナアアアァァァ!!」


私の配信の危機にボケ倒しやがって! せっかく他のライバーに会えたかと思ったのに、これじゃあコメントにあった通り敵とエンカウントしたのと同じじゃないか! 画面に入れたらその人のチャンネルにダメージを与える敵とかチート過ぎんだろうが!


コメント

:恥ずかしがって俯いてるシュワちゃんカワイイヤッター!

:恥ずかしがってるんじゃなくて命の危機を感じてるんだよなぁ、収入的な意味で

:画面に入れてはいけないあの人 ¥2000

:スレンダーマンかな?

:聖様がとんでもないホラー要素になってて草


聖様に文句を言うため、チャットに光の如きでタイピングでメッセージを書き込む。


ワルクラチャット

<心音淡雪>:服を今すぐ着てください! BANされてしまいます!

<宇月聖>:大丈夫、この前私が仮ワールドで体を張ってこの姿で十時間以上実験配信したけど問題なかったよ。このライブワールドに入ってからも問題なし。真四角にデフォルメされてるから流石にセンシティブ判定されないみたいだね

<心音淡雪>:あ、そうなんですね、とりあえず安心しました

<宇月聖>:私は変態だがそれと同時に紳士だからね。可愛い子猫ちゃんたちに危害を加えるなんてありえないのさ

<心音淡雪>:そんなこと言っても全裸の時点でアウトです


なるほど、当の聖様本人が無事に配信出来ているのなら問題ないのは確かなのか。

そんな事情無しにしても普通に画面に入れたくないのだが、こんなのでも先輩なので視点を戻してあげることにした。

肌色一色で乳首とかが描かれてる訳でもないから妥協するとしよう。そうだ、肌色の全身タイツを着ているとでも思えばいいんだ、うん。


ワルクラチャット

<宇月聖>:改めて私が管理するヌーディストビーチにようこそ! さぁ、淡雪君も服を脱いで世間の縄から解放されようじゃないか! 一緒に大自然を全身で感じよう!


「いや例え脱ぎたくても脱げねぇよ。なんで全裸のテクスチャなんか持ってんだこの人」


ワルクラチャット

<心音淡雪>:そんなテクスチャ持ってません

<宇月聖>:なんと!? いいかい淡雪君よく聞くんだ。昨今のヌーディストビーチは高校の修学旅行先にも選ばれるほどの大人気なスポットなんだ、全裸はステータスの時代なんだよ淡雪君! さぁ、今すぐそんな布を脱ぎ捨てて流行の波に乗ろう! 大丈夫、君はそんな物で着飾らなくても美しい、むしろ隠してしまうなんて美への冒涜さ!

<心音淡雪>:そんなわけないでしょう! どこのエロ漫画の世界ですか!!


どの面下げて常識語ってるんだこの人は……

あとその姿で頻繁に私の周りを飛び回るのは奇妙な儀式のようなのでやめていただきたい。女体大好きな私だがなぜか体が拒否反応を示している。

だめだこの人、完全にワルクラを自分なりに満喫していらっしゃる。これが正しい遊び方のはずなのだがそれが非常に厄介だ。くッ……もっとストゼロキメてくるべきだったか……ッ!

そう思い、どうこの魔王を退治しようかと悩んでいた時、突如私たち以外のライバーがチャット欄に現れた。


ワルクラチャット

<朝霧晴>:おやおや二人ともそんなにはしゃいでどうしたのかな? 気になって海から上がって来てしまったよ☀


晴先輩キターーー!!!!

そうだ、晴先輩に聖様の所業を言いつけてやろう! きっと晴先輩ならなんとかしてくれるはず!

そう思ったのと素直にワルクラの世界で憧れの先輩に会えるというのが嬉しくて、期待に胸膨らませて海の方向に視点を向けた。

確かにそこに晴先輩は立っていた。だが全裸の聖様を目にしたときと同じく、私はまたもや言葉を失うことになる。

いや晴先輩も全裸だったわけではないのだ。服はちゃんと来ているのだが……

その服は黒い帯を上半身と足に巻いたような、至る箇所に肌色が見えるとても露出度が高い服だった。というか見覚えがあった。

この20年以上前に初登場したにもかかわらず今でも時代が追い付いていないファッションセンス、間違いない――この服は――ッ。


ワルクラチャット

<朝霧晴>:YO! SAY!!


「西〇アニキじゃねぇかあああぁ!?!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る