第76話ワルクラ配信2

「何か面白いものないかなー」


特に目的も定めずただ気の赴くままに歩を進める。

この世界に降りたばかりで本当に右も左も分からない現状だ。とりあえず周囲に何があるのかの確認を最初にしようと思い、適当に周囲の探索を開始した。

程よく木が生えているし地形の起伏も小さいから暮らしやすそうなところだな、気に入ったところを見つけたらそこに仮拠点を立てることにしよう。

だがやっぱり歩いているだけでは話題に欠けるのも事実。そこで用意していたマシュマロの登場ですよ!


「このままただ歩いてるだけなのもリスナーさん退屈だと思うので、何か気になる場所を見つけるまでマシュマロ返答したいと思います! ええと一通目は~」



@ワールドクラフトで作りたいものはありますか?@



「百歩譲ってスト、妥協してゼロ、我慢してストゼロ、欲を出すとスト〇ングゼロですかね」


コメント

:結局のところ全部一緒で草

:いや、もしかすると違いがあるかもしれんぞ? メラ~メラゾーマみたいな感じで強化されてくのかもしれん

:当たり前のように言ってるけど酒の何を強化すんねん

:ここは考察班の出番だ、頼んだ!

:どうも、体はビンビン頭脳はチンチン、名探偵考察班です

:帰れ

:草

:アイテムとしてストゼロ追加するMODの制作開始します



@なぁ・・・ストゼロしようや・・・・@



「ほぉ、私にストゼロを申し込むとはいい度胸だ。体内残留ストゼロの放出は済ませたか? サ〇トリーにお祈りは? 画面の前で歓喜に震えてプルタブをプシュッする心の準備はOK?」


コメント

:怪文書を読むな

:マシュマロ送ったニキもまさかの対応に困ってそう

:よく聞くと一緒に飲みましょうって言ってるだけやんけ笑

:ほんまや……

:ちゃんとお祈りできるシュワちゃん偉い

:主よ、今から我々がこの糧をいただくことに感謝させ給え、アーウメェ

:アーメンみたいに言うな

:ザー〇ン ¥19191

:最低指数理論値のコメントやめれ



@こないだ、コンビニで49ってお酒の無料クーポンもらったんで飲んでみたんですよ。

結構美味しくって最近はこう言うお酒も馬鹿にできないなと、感心してたんですが、しゅわちゃん的にはストゼロ以外のお酒ってどうですか?

普段ワインとか、日本酒しか飲まないので、専門家の意見が聞きたいです。@



「ストゼロ以外のお酒も非常に良い物だと思いますよ! でも私の場合違うお酒を飲んでも脳裏にストゼロの姿が浮かんでくるんですよ。もうその時点で私の負けですよね、体はストゼロに背を向けても心はじっと見つめたまま……恋とはなんとも青く恥ずかしいものですね」


コメント

:なに良い感じ年を取ったいい女ぶってんねん

:驚異的なほど自然な流れで恋に繋げるなwww

:恥ずかしいのは今の君の姿なんやで

:というか専門家だったのか……


「おっ!」


視聴者と程よく戯れつつ草原を歩いていたら、始めて歩いている地面が砂に変わった。砂と言っても砂漠ではなく砂浜といった感じだ。

そしてその砂浜を進んだ先に見えてくるものと言えば――


「ウェミダー!(海だー!)」


遥か先に見える果てしない水平線がたまらねぇぜ!

結構近いところに海があるんだな、リアルではここ数年一度も行ってないからゲームかつデフォルメされているとはいえ新鮮な気持ちだ。

よし、マシュマロ返答は一旦止めてここらを集中して探索してみよう。


「おー、粘土とかもあるんだねぇ。……ん?」


海沿いに浜辺を歩いていると、視線の先に木製の小屋のような建物が見えてきた。

この世界では明らかな人工物=ライバーの誰かが作ったということに繋がる。

まだライブワールドが開かれてから間もないことを考えるとまだ誰かが使っている可能性は十分あるだろう。


「これはもしや誰かと初遭遇なるか!?」


そう思いワクワクしながら小屋に向かい駆けて行ったのだが、ある瞬間私の体はまるで体操金メダリストの着地のようにピタッっと停止した。

ある瞬間――それは目的の小屋から颯爽と飛び出てきたプレイヤーを発見した時である。

だが私の体を止めた理由は待ちに待ったライバーに会えたから感動したなどといった甘いものではなかった。

小屋から出てきた女性は真四角にデフォルメされても美しさが分かる深紅のロングヘアをなびかせながら海の遥か先を見つめている。

その姿はまるで初めてこの世に誕生した最初の人類を彷彿とさせていた。

私がなぜそんな壮大な思考に至ったか? それは彼女の隠すという概念など知らないと言わんばかりの堂々とした生まれたままの姿にあった。

そう、本当に全身肌色のみ、すっぽんぽんで浜辺の風に当たっているのだ。


「へっ、へっ」


さぁ、もう包み隠さず単刀直入に言おう、私の視界に突如現れ私の思考を停止させたのは『全裸の聖様』であった――


「へんたいだああああぁぁぁぁ!?!?」


コメント

:大草原

:お前が言うな

:あちゃー最初にエンカウントしたのが聖様かぁ

:エンカウント扱いで草

:ライブワールドは実質魔王が何人も点在してるみたいなもんだから

:異〇羅かな?

:全員が最狂。全員が変態。全員が芸人。全員が魔王。一人も常識人、無し。

:最悪や


ライブオンはワルクラの中でもライブオンなのだと脳裏に刻み込まれた瞬間でした……

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