第27話 魔女

二十七魔女



「あれ? 悪魔何処消えた!?」


俺の目の前にいた悪魔は刹那にも満たない内に姿を消していた。


【ソナタ・・・いや、シュウよ。我はここにいるぞ】


? 頭の中に直接声が聞こえる。

周りを見渡すが、悪魔の姿はない。


【シュウの心の中にいるのだ。それは、互いの感情を共有する事を表す。覚えておけ】


なるほど、そうゆう系の設定か。


「それより悪魔、お前の名前ってなんて言うんだ?」


【そう言う事は口に出さずに思考しろ!】


やっべ、道行く人達から白い目で見られてるよ。


周りからは、俺は独り言を言っているように見えている。


【我の名前は・・・・・・ジャックだ】


一瞬考えてたよね! 本名隠してる的な?


【なに、忘れていたに過ぎぬ】


あっ、そっすか。


しばらくの間、お互いに喋る事も無い時間が続いた。


【シュウ、我の喋り方が気に食わぬのか?】


なっ、何故分かった!?


【先程申したであろう。互いの感情は共有されるとな】


そうだったぁぁぁ!!!

つまり、俺があの子可愛い、食べたいちゃいって思ったら伝わっちゃうって事か。


【その通りだ】


最悪じゃねぇか。

まぁいいや。それよりも、もっと気楽に喋っていいぞ。


【それは本当か!?】


俺ってば嘘つけないからね。キラッ☆


【いや〜助かるわ〜。楽で良いねぇ〜】


まじか! 一気にキャラ変わるやんコイツ!!


【それはごめんねぇ〜】


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


俺は、って言うより、俺達は腹が減ったので屋台で焼き鳥? を買った。


ジャック、お前ってどうやってこの肉食べんだ?

俺の中にいるって事は、俺がお前の分も食べんのか?


【馬鹿のかい?】


ジャックはそう言うと、俺の影から姿を現して肉を食べた。


【この姿で喋ると、他の人間に悪魔って事を気付かれちゃうから思考する事にするよ】


おっけい。了解した。


「あんちゃん。そいつぁ良い狼じゃあねぇか!」


げっ、なんか太ったおっさんが喋りかけてきたんですけど!

人見知りだからちよっと厳しい状況だ。


「はぁ、そりゃあどうも」


「あんちゃん。その狼を俺に譲ってくれないか? 金はたーんとあるぞ」


【僕が一定期間君から離れると、僕も君も死んじゃうよ】


ジャック、俺はお前を売る気はねぇって。

強そうなキャラであるお前を手放すほど俺は馬鹿じゃねぇ。


「悪ぃな、コイツは売りもんじゃねぇんだ」


俺がそう言うと、おっさんは笑顔で帰っていった。


【ねぇ、君はリリアって子を探しているんじゃなかったの?】


「あっ」


それから一時間ほど探し歩いたが、リリアは見つからなかった。

俺とジャックは、街の中心にあるでっかい鐘のある塔から街を見下ろしていた。


「すげぇ綺麗な街だな」


空は夕日に燃えていて、海も同じオレンジ色へと姿を変える。祭り真っ只中のこの街はとても賑やかだ。


【女の人が倒れてる】


俺にもジャックの思考が伝わってくる、それはジャックからしても同じで、


【あっ、ごめんね。別に助けに行く気は無いから安心しておくれよ】


は?


【え? 】


ん?


【ほ?】


えっと〜、その倒れてる女の人って可愛い?


【凄くね】


お前馬鹿なの? 早く助けに行こぜ!


【了解。助けてたら恩返しに頬っぺにチューぐらい貰えるかもね】


あのー・・・・・・俺の思った事を全部言わなくていいからね。


「やっべ。この塔三十メートルくらいあるんだった」


どう降りるべきだ。可愛い人なら尚更早く助けに行きたいのに。


【僕の背中に乗りなよ】


「お前最高かよ」


俺はそう言うとジャックの背中に跨った。

ジャックの肌触りは最高だった。まるでフッサフサのクマのぬいぐるみのようだ。


【それはどうも】


ジャックはそう言うと虚空を蹴り、塔から飛び降りた。


「おいぃぃぃぃ! 階段を駆け降りるんじゃねぇのかよぉぉぉぉ!!」


【ははははっ】


笑ってんじゃねぇよ! 死ぬだろ!


地面が近ずいてくる。

ジャックは、着地の衝撃を前足で和らげ、人を上手く避けながら結構な速度で走りる。


「うわぁぁぁ! もっと遅くしろぉぉぉぉ!」


俺の願いは虚しく散った。

ジャックは楽しそうに目的地に到達した。


人気の無い海岸沿い。

お化けが出そうな雰囲気だ。


「ジャック、今度言うこと聞かなかったら殺すぞ」


【それよりもこの子・・・・・・・・・大丈夫?】


俺の話を無視して、ジャックは話す。


【人間のはずだけど、人間じゃない】


? どうやらジャックは可笑しくなったみたいだ。


【咬み殺すよ?】


あっ、伝わるの忘れてた。


【それよりもこの子どうする?】


俺は初めて倒れている人の顔を見る。


・・・・・・・・・可愛い。


俺の目の前に倒れていたのは、赤い生地に金の刺繍はいった衣を纏っいる、金髪美女だった。


【今聞くことじゃないかもしれないけどさ、この髪型ってなんて言うの?】


・・・・・・・・・ツインテール。


俺とジャックが馬鹿な会話をしていると、


「はぁ、はぁ、はぁ」


金髪美女は、荒い息をし始めた。


助けなきゃって思うが、それよりも先にこんな言葉をもらす。


「エッロ」


【うん。エッロイね】


金髪美女の顔は赤くなり、少し大き目の胸が揺れている。

この状況で荒い息を聞くと、変な目で見てしまう。


俺が金髪美女を助けようと、ジャックの背中に乗せる。

するとそこへ、


「いたぞーー! 魔女がいたぞーー!!」


武装した男達六人が俺達の方へ走ってくる。


【あれ? 見間違いかな、剣を抜いてるように見えるけど】


「悪いけど俺にもそう見えるわ」


そう答えた瞬間、俺の顔目掛けて一本の剣が飛んできた。



やばい! 避けきれねぇ。

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