第26話 悪魔
「くっそ! どこ行きやがったんだよ」
いくら人混みを掻き分けても、リリアは見つからない。
あれ? 意外と簡単に見つけたぞ。
何故か、リリアの周りに人はいなかった。
人混みの中にいても、周りの人々が避けて歩いている。
「よし」
俺は、リリアの元へ走り出す。
!!! 何だ? 足が動かない。
周りを見渡すと、世界は色を失い、時を止めていた。
「やっと見つけたぞ」
俺の背後から、鬼もビビるような恐ろしい声が聞こえてくる。
「ソナタ、名はなんと申す」
ちょっと待てよ、俺はコイツの声を知ってるぞ。
俺は振り向いて、声の持ち主の正体を口にしようとするが、その姿に声を失う。
「早く答えよ」
俺の目に映っていたのは、馬と同じサイズの黒い狼だった。
「俺の名前はシュウ。お前は悪魔だよな?」
「いかにも、我は悪魔なるぞ」
「想像してた悪魔と違ったーー」
俺が想像していた悪魔は、鎌を持った死神的な感じのキャラだ。
「俺と契約するんだろ? 何か約束事みたなもんあんのか?」
「話が早くて助かる。契約するにあたって、我はソナタの願いを叶える。ソナタは我の願いを叶える。それだけだ。」
俺の魂が食べたいとかだったらいやだなぁ。
とりあえず、俺の願いを先に言っておこうと口を開く。
「俺の願いは、お前とずっと契約する事だ」
「はははははっ。面白いの。承知した、ソナタの願いを叶えてやろう。」
えっ!? 嘘でしょ、普通はルール違反とか言うよね! コイツの考えが全く読めねぇ。
「では、我の願いを叶えてもらおうか。我の願いは単純だ。戦争を終わらせる」
戦争?
俺は脳みそをフル回転させて記憶を辿る。ゼクサス達って戦争あるなんて言ってたっけ? コイツに聞いた方が早いか。
「戦争って、誰と誰が争ってんだ?」
「これは失礼した。人間はその事を知らないのか。この国でも、他種族との交流は盛んだが、それぞれの種族の王は、この世界を統一したくて争っている。正確な理由までは知りない」
「正確な理由・・・・・・今お前が言ってた、世界の統一じゃないのか?」
「我の予想に過ぎぬが、奴らは何か隠している」
俺は、ふと疑問に思う。
悪魔も戦争に加わっているのか?
悪魔はなんで契約してきたのか?
俺が顎に手を当てていると、
「疑問があるなら言うが良い」
悪魔(黒い狼)はそう言ってきた。
「んじゃ、お言葉に甘えて。」
俺は、右手の指を二本立てる。
「俺の質問は二つ。一つ目は、悪魔は戦争に加わっているのかという事。二つ目、悪魔って言うか、お前は何故、俺と契約したい?」
悪魔はゆっくりと口を開き、鋭い牙を覗かせる。
「悪魔は戦争に一切加わっていない。そして、我がソナタと契約したい理由は、二つ。一つ、悪魔は他種族と契約する事でより強くなるからだ。二つ、我と契約する事の出来る者は少ないようだ。我は契約する相手を探して地上を彷徨っていたら、心の中にソナタを感じた。以上だ。」
あ〜、なるほどね。魔聖おばばが魔剣で呼んだ悪魔ってコイツだったのか。
「てか、早く契約しようぜ。リリアって子を追いかけてんだから!」
「よかろう」
悪魔はそう言うと、俺のパーソナルスペースに入ってくる。
悪魔を中心に、紫色の魔法術式が広がる。
「な、何だこれ!」
俺は、見た事ない魔法術式に驚いている。
少なくとも人間には扱えない魔法だろう。
「シュウと我の名の元に、命の契約を成立する」
「命の契約ってお前・・・・・」
俺の言葉はそれ以上続かなかった。何故なら、さっきまで馬サイズだった悪魔は、消防車ほどの大きさになっていたのだ。
「我の目を見よ」
俺はガチガチと震えている。
全てを凍らせるような声の言う通りに、悪魔の目を見る。
「命の契約・ムルチコーネ」
悪魔がそう言い終わると、世界はようやく色を取り戻した。
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