第25話 リリア
俺が名前を尋ねると、少女は目を見開いたてこう言った。
「私の髪の色が見えますか?」
「白い」
俺が髪の色を答えると、少女は暗い顔をした。
やばい! 綺麗だねとか言うべきだったのか? あちゃー。
気の利いたセリフぐらい言えない主人公だったのか俺はぁあ!
よし! ここは一発、気の利いたセリフを!!
「白って言うよりも、純白と言うのかな? 柔らかく風になびくもんだから、すっげぇ綺麗だなって」
自分で、変な事言っちまったな〜と思っていたら、突然、少女が大粒の涙を流し始めた。
「えっ! ちょっ、すまん! 変な事言ったよな、ごめん」
突然の事に慌ててしまう。
「貴方は・・・・・・私の事が恐ろしくないのですか?」
少女はその茶色い綺麗な瞳を真っ直ぐ、俺に向ける。
俺は、強くて、か弱いその瞳に言葉を詰まらせる。
少女の瞳は、決して少女と呼んでいいものではなかったからだ。
「お願いします。どうか答えて下さい」
「恐ろしいなんて思わないさ。」
少女はその言葉に、驚いたような顔をするが、俺は早く名前を知りたいので、驚いている理由は尋ねない。
「次こそ質問に答えてくれよな。名前を教えてほしい」
すると少女は、ゆっくりと口を開く。
「リリアって言います。人に名前を教えるのは初めてなので・・・・・・嬉しい、です」
少女、いや、リリアは少しだけ口角を上げてくれた。
その顔があまりにも可愛いので、俺は言葉も忘れて見とれてしまった。
「あっ、すみません。変ですね、私」
!!!
「今なんて言った!? もう一回言ってくれ!」
俺はリリアの両肩を掴みながら聞く。
「痛いですっ。離してください。聞いてますか? 痛いっ!」
リリアの声は震えている。
「早く言ってくれ! なんて言ったんだ!」
「やめてください!!」
リリアがそう叫ぶと、世界が一瞬真っ黒に染まった。
気が付くと、俺は地面に転がっていた。
リリアの小さな嗚咽に我に返る。
「はっ。ごめん! ちょっと慌てて・・・・・・」
俺はそこまで言って言葉を失う。
リリアは、涙目になって、肩を震わせている。
俺が急に両肩を掴んだのが怖かったのだろう。その証拠に、リリアは、驚きと恐怖に目を染めている。
「ごめんなさい」
リリアはそう言うと路地裏を抜けて人混みの中に消えてしまった。
俺は今頃になって、立ち上がった。
「待ってくれ!」
リリアを探して、俺も人混みの中に消えていく。
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