第23話 運命の歯車
何時間寝たのだろうか?
部屋の中は真っ暗だ。ゼクサスとハーツは寝ている。
多分やけど夜中だな。俺は人混み嫌いだから寝た、皆んなは観光でもしていたんだろうな。
なんだろう、すごく暇です。
それからしばらくして、ゼクサスとハーツが起きた。
「ふあ〜。おはよ〜シュウ」
ハーツは、目を擦りながら言う。
「しゃ! 今日は祭りだぜ!」
ゼクサスはいつも通りうるせぇ。
コンコン
「ヒナ達か、入っていいぞ」
俺がそう言うと、ヒナとローズが入ってきた。
「あっ・・・・・・」
俺とゼクサス、ハーツは黙り込んでしまう。
「ど、どうかな?」
ヒナはそう言うと、くるりと回って、自分の衣装を見せた。それは紛れもない浴衣だった。
この世界にも浴衣あったっけ? いや、そんな事はどうでもいい。この天女達をずっと眺めていたい。
「は、はは、早く行こうよ」
ヒナは皆んなの考えに顔を真っ赤にして、俺達を祭りへと急かした。
ローズは嬉しそうにしている。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達は朝食を食べずに、祭りへと足を運んだ。
めっちゃ美味そうな匂いがする! やっぱ祭りは最高だな。
たくさんの屋台で、色んなものを食べた。
焼きそばであろうものや、焼き魚、変に甘い木の実、いっぱい食べ歩いた。
皆んなの笑顔に、俺もつられて笑顔になる。
幸せな時間が続いていた。
「そろそろ昼飯の時間だな。何食べたい?」
「ゼクサス、何言ってんだよ、たくさん食べたじゃねぇかよ」
笑いながら答える俺にゼクサスは、
「よしっ! あっちの腕相撲に参加して、お腹空かせようぜ!」
そう言って皆んなで腕相撲をしているところに向かう。
その時だった。俺の時は止まった。
本当に時が止まっていたのかは分からないが、確かに俺の何かが止まった。
俺の視線の先には、白い髪の少女がいた。
その少女は、人混みに紛れてどこかへ行こうとしている。
何故だろう、今すぐに追いかけないと二度と会えない気がした。
追いかけろ!
俺の心がそう叫んだ。後先考えずに俺は走り出していた。
「ちょっ、オイラ達を残してどこ行くんだよーー」
そう言うハーツに俺は振り向きながら叫ぶ。
「悪い! 先に飯食べててくれーー!」
唖然とする皆んなを置き去りに俺は人混みの中へと消えていく。
「すみません! どいて下さい! おめぇどけって!」
人混みをかき分けながら必死に彼女を探す。
くそっ! なんで俺はこんなに焦ってんだよ。今追いかけてる人は、全く知らない人なんだぞ!
俺は自分にそう言い聞かせる。それでも、俺は彼女を探す。
俺が、小さな橋の上に登った時だった、
・・・・・・・・・
俺は息も忘れて、見とれていた。
橋の下の道に彼女はいた。
腰の上辺りまで伸びている白い髪は、陽光を反射し、美しくなびいていた。
彼女、いや、少女と言っておこう。少し離れているが、くっきりと見える。その少女は、美しい顔立ちに、幼さを兼ね備えていて、とても可愛らしい印象だった。
その少女の瞳は、綺麗な茶色い瞳で、とても少女の瞳ではなく、たくさんの苦しみを生き抜いている人のものだった。
その強く、悲しい瞳は、しっかりと俺の両目を捉えていた。
世界から俺達以外の色が消えていた。
俺と見つめ合う少女は、その瞳から一筋の涙を流していた。
全く、可愛いけど変な子だなぁ。
俺は、何かを誤魔化すように自分にそう言った。
あれ? 俺は・・・・・・・・・泣いているのか?
しばらくの間、俺達は見つめ合っていた。
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