第15話 イケメンゴミ説

十五イケメンゴミ説



チュンチュンって鳥が鳴きそうな朝。

鳥は鳴いてないのは説明しなくとも分かるだろうけど、念の為ね。


「よっしゃー! 今日は主人公様の最高にかっけぇところを皆んなに見せつけてやるぜーー!」


苦情が来そうなほど大きな声をだす。


「うるぅぅせーー! お前、朝から大声出すなよ!」


ゼクサスが俺の大声で目を覚ます。


「うがぁぁぁぁぁぁ! オイラを起こすなーー!」


さらにハーツまで起きてしまった。

朝から男子チームの部屋では大乱闘が始まる。

するとそこへ、


「お客様、他のお客様もいらっしゃるのでお静かにお願いします」


やって来た従業員から三人へ向かって殺気が送られてくる。

ローズとヒナが朝ごはんを食べようと俺達の部屋に来た。一階のレストランで腹ごしらえをして、剣聖会の会場に向かう。


「ここが会場か、なんかコロッセオみたいだな」


俺は何気なく元の世界の話をした。


「ん? コロッセオって何だ?」


「あぁ、気にしないでくれゼクサス。元の世界にこの会場に似ているところがあったな〜って」


俺とゼクサスは受け付けを済まし、木刀を受け取り、控え室で自分の番を待つ。

参加者は240人いる。トーナメント制になっている。俺は四回戦目でゼクサスとあたることになっている。


「九十番の方と九十一番の方は試合会場に出て下さい」


「よし! 行ってくるぜ!」


「頑張れよ、ゼクサス」


ゼクサスは九十一番で、俺は九十九番だった。

俺はゼクサスを応援するために一度、観客席にいるヒナ達のところに行った。


「場所取りありがと」


「あっ九十九番だ〜」


「うるせぇよ! 名前で呼べよ!」


俺とハーツの漫才を無視して、ヒナが言った。


「あっ、ゼクサスの登場だよ」


ゼクサスの登場に歓声が湧いた。

何故だろう、ゼクサスが有名な気がする。


「有名かどうかはまだ内緒だよ」


ヒナが人差し指を口元にあてながら言う。


いよいよゼクサスの試合が始まった。

相手は大柄な男で、筋肉もりもりって感じだ。

ゼクサスの相手が木刀を下段に構え、一瞬で十メートルほどの距離を詰める。その直後、大きな音ともに砂埃が会場を覆った。観客全員が目を凝らす。

砂埃がはれる。そこには剣を掲げるゼクサスと、地面に横たわる相手の選手がいた。

展開が呆気なかった気がするが勝利したのだから良いだろう。


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 」」」


歓声が湧いた。

結果はゼクサスの圧勝だ。俺は自分の試合のために

控え室に向かった。そして俺の番が回ってきた。

通路を通り、観客の前に姿を現す。

俺の相手は赤髪のイケメン野郎。クール気取りのクソ野郎って匂いがぷんぷんする。


「善い戦いになると良いですね」


俺の相手はそう言うと木刀を構える。


「あぁ、そうだな。けど俺は、ゼクサスと戦うから負けねぇよ」


互いの目を見つめあう。初めの合図と同時に俺は木刀を振りかぶって思いっきり下ろす。


「喰らえぇぇぇぇ!」


「甘いですねっ!」


相手は俺のがら空きになっている腹部めがけて木刀を振る。


「フェイントだ、馬鹿野郎!」


俺は木刀を振りかぶって思いっきり斬るフリをしたのだ。


ゼクサスとの練習でゼクサスにやられた時に編み出したのだよ!


俺は木刀を真下に突き刺した、狙いは俺の腹部を斬ろうとしている相手の頭だ。

これで俺は勝つはずだった、


「ぐあっ!」


俺が木刀を真下に突き刺した瞬間に、相手は俺の視界から消えた。直後、俺の背中に激痛が走った。


「どうしましたか? この私に負けないのではないのですか?」


立ち上がろうとするのだが、苦しくて立ち上がれない。


「良いフェイントでしたが、それは実践では使えませんね。貴方は遅すぎる」


「黙れ! 何だてめぇは、ハイスペック男子が実はゴミクズ野郎だったみてぇな設定の雰囲気じゃねぇか」


俺は痛みを堪えて思ったことを言う。


「何を仰っているのか知りませんが、弱者は惨めに蹲っているものです。そして貴方は弱者ですよ。貴族の前では、下民などゴミと一緒ですよ」


そう言い終わると、俺めがけて木刀を振り下ろした。


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