第3話 運命

「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 リナが額を床に擦り付けて、赦しを請う。

 場所は、魔都の一軒家だ。


 二人を引き取った俺は、首輪をつけ家に連れ込んでいた。

 首輪をつけたのは、ペットとして飼ってる事を示す為だ。


 野良の人間なんて、見つかれば処分されるからな。


「フレイムは、どうした?」

「……彼女は、魔族に辱めを受けるくらいならと……自爆魔法で……」


 思い出したのか、今度は泣き出す。


——昔と変わらないな。

 こいつは、嫌な事があるとすぐ泣くのだ。


「そうか」


 取り乱す彼女に呆れながら、フレイムらしいなと思い、ニヤリと笑う。


「ひぃ!」


 その笑顔を復讐者と勘違いしたのか、リナは悲鳴をあげた。


「お姉ちゃんをいじめたら、ダメ!」

「殺すぞ、クソガキ」


 リナを庇うように前に出る少女に、殺気を飛ばす。

 殺気に当てられたリナは、失禁していた。


「……お姉ちゃんを……いじめたらダメ」

「俺が怖くないのか?」

「お兄さんは怒ってるけど、本当は優しい気がするもん」


 盲目の少女は、見えない目で俺を観てくる。


「お兄さんって……おまえには、俺が人間に見えるのか?」

「……人間じゃないの?」


 そうか、彼女には、俺がただ怒っているお兄さんに見えるのか……。


「名前は?」

「……ロキ」

「ロキ、お姉ちゃんをいじめて悪かったな」


 そう言って、ロキの頭に手を当てた。


「リナ、故郷に帰りたいか?」

「……無理です。 私達が捕らえられた事を、ギルドは知っています……」


——ハーデスの実験台のせいか。

 ゴブリンの苗床にして、送り返したり、生者に見えるアンデットにして、送り返したりしてたからな……。


 何が仕掛けられているかわからないから、城門に入る前に、味方に殺されるだろう。


「なら、楽に死にたいか?」


 そうリナに問いかけると、


「……嫌」


 口元を押さえて、溢れる涙を止めていた。


 首輪をつけられ、絶望感に浸る彼女に加虐心が刺激される。


「ここは、人間を飼う事には寛容だ。 首輪に、名札をつけといてやるよ」


——魔族は、力こそ全てだ。

 だからこそ、俺の所有物に手を出すバカはここにはいない。


 その言葉を聞いて、リナの表情はまた暗くなるのだった。

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