3.Abstract

 夢の中での記憶というのは不思議なもので、現実のものとは異なる経験の記憶がただの一瞬で引き出されることもしばしばである。それならばその記憶はいったいいつつくり出されたのかと不思議に思うが、ともかく私はパリでムッシュと長い時間を過ごした。

 私はムッシュと出会ってすぐ、ちょっとした趣のある館で彼と同居するようになった。細かな経緯は覚えていないが、ムッシュに金はない――少なくとも私はそう思っていた――。もしかすると私は家賃のほとんどを負担していたのかもしれない。

 しかし、私の財産に余裕があったのならばそれでよかったのだろう。なんせムッシュの話は面白かった。私達はよく二人で館の近所を散歩したものだ。

 そんなある日のことだ。私がいつものように食後のエスプレッソをすすっていると、向かいで怪しい紅茶を飲みながらジャムをビスケットですくって食べるという理解に苦しむ趣味にいそしんでいたムッシュが新聞から顔を上げ、新しい玩具を見つけた子供のような声を上げた。

「見てくれよ、これ!」

 嬉しそうにムッシュがよこした夕刊を私は気をつけて受け取った。うっかりすると手がジャムでベタベタになってしまうのだ。

「……奇怪な殺人事件? ぶっそうだが、これがどうかしたのかい?」

「まあ、読んでみてくれたまえよ」

「ふむ……」

 そこには、こんなことが書かれていた――。

 なんでもその日の未明に、サンロック地区のモルチュアリィ通りにある邸宅から女性の悲鳴が何度も聞こえたのだそうだ。その邸宅にはカンガーリュ夫人とその娘が二人で暮らしていたそうで、闇夜をつんざく悲鳴に起こされた住民たちはみな邸宅の前に集まり、邸宅の外から声をかけたようだがいくら待っても返事がなかったという。そこでやむをえず扉を壊し、二名の警官と数名の近隣住民あわせて十人ほどが邸宅内に入ったそうだ。そして一行が階段を上がろうとしたところで、上階から二人以上の言い争う声がしたという。声の主を探して三階まで行くと言い争いはやんだそうで、最上階の四階に到着すると一行は手分けして各部屋を回ったそうだ。そして、戦慄の光景が発見される。

 現場は四階奥の大部屋で、内側から鍵がかかっていたため扉をぶち破って中に入ったらしい。すると室内は酷く荒らされていたようで、窓際にあったベッドのマットレスは部屋の中央にあるし、椅子の上には血まみれの包丁が乗っていたのだそうだ。暖炉のそばには長い髪が二束か三束ほど、これもまた血まみれで落ちていたという。床の上には他にもナポレオン金貨が四枚、トパーズのイヤリング、銀の大きなスプーンが三本、やや小ぶりな洋銀のスプーンが三本あり、カバンも二つ置かれていた。中には合わせて四千フランほどの金貨が残っていた。部屋の隅にあったタンスはすべて引き出しが開けられたままになっており、その中も物色された様子だったが、品物はかなり残されていた。他には鉄製の金庫があり、マットレスがかぶされており、鍵が扉に挿さったままで開いていた。中には古い手紙と反故同然の書類しか残されていなかったという。

 まったく見えない住人の姿を探すうち、暖炉に落ちていた煤の量が普通ではないということで、その上の煙突を調べてみたという。すると語るのもおぞましい、娘の遺体があったというのだ。まだ温もりの残る体には、狭い煙突に無理やり押し込まれ、また引っ張り出された時についたと思われる激しい擦過傷さっかしょうが見られた。顔面はなにをどうしたのかぐちゃぐちゃに荒らされ、頸部には黒ずんだ圧迫痕および深い爪痕が残されており、絞殺されたものと思われるというのだ。

 さらに邸内をくまなく捜索したが、夫人も不審なものも見つからないので家の裏手に出たという。すると舗装された庭で、今度は夫人の遺体が発見されたのだそうだ。首はほとんど切断されており、動かした拍子に首が落ち、その顔面もぐちゃぐちゃに荒らされていたという。さらに手足はおかしな方向に曲がっており、胴体の様子も悲惨なものだったというのだ。

 この悲惨な怪事件には、目下のところまったく手がかりがないらしかった――。

 私はこの詳細な事件記事を読み、今し方食べたばかりのものを危うく吐き出してしまいそうになった。なんともむごたらしい事件である。

「読み終わったようだね。どうだったかい?」

 ムッシュはと言えば、自分もおぞましい記事を読んだだろうにけろっとした様子でぐじゃぐじゃとしたジャムをんでいるどころか、今にも鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気ですらあった。

「……恐ろしい事件だね。こんなおぞましいことを人間にできるとは到底思えないが、獣がやったこととも思えない手口だ。今ほど悪霊の存在を信じたいと思ったことはないかもしれない」

「フフ、君らしい意見だ。でもまさか、幽霊やら妖精やらがやったわけではないだろう。これはこの世に生きる者の仕業に違いない。面白いね。実に興味深い……」

「君の感性にはまったくついていけないよ。モルチュアリィ通りと言えば、歩いて行くには遠すぎるが、馬車を使えば一日かかる距離じゃないな。念のため、今晩は戸締りに気をつけよう」

 残ったエスプレッソをもう口にする気にはなれず、そう言いながら席を立った私にムッシュは言った。

「その心配は無いんじゃないかな。まあ、狂人の仕業という可能性も捨てきれないし、物騒なことはこの事件に限った話ではないからね。用心するに越した事はないとは思うが、この事件の犯人が第二の殺人を犯す可能性は低いんじゃないかな?」

「どういうことだい?」

 私はムッシュを振り返り尋ねた。

「その記事によれば、部屋の中は荒らされ物色されていたとあるね? しかし、ほとんどの物品はそのままだったわけだ。金貨にも手が付けられていない。となると、犯人は何か目的の物を探していたことになるだろう。だが、夫人の悲鳴で付近の住民が集まったような立地だ。犯人には余り有余がなかったはずだ。にもかかわらず部屋を物色したということは、犯人にとって何か探すべき物があったということになる。ならば無差別に第二の殺人を起こすことはしないだろう」

 私はムッシュの推理に感嘆し、しばし言葉を失った。

「……あの記事を読んで君はそんなことまで考えていたのかい? てっきり風変わりな事件を舞台でも見るように面白がりながら、ただジャムを貪っていただけかと思っていたよ」

「君は僕を何だと思っているんだい? まあ、ただの憶測にすぎないよ。判断を下すにはまだ情報が少なすぎる。それに……」

 ムッシュが僕の目を見つめ黙り込む。

「それに?」

「犯人がただの狂人なら、論理的な推理など意味をなさないさ」

 その晩、私はいつもより念入りに戸締りを確認し、ベッドについた。

 そして翌日、何の進展も迎えなかった事件の詳細が夕刊に載った。少しでも有意義な証言や意見を求めてのことだろうか。私はその記事を自分なりにノートにまとめてみた。この事件に興味を持った博識なムッシュと、是非とも意見を交わしたかったからである――。


【ラスカルの証言】

 ・洗濯係として三年前から面識

 ・被害者親子は仲が良く、争いがあったとは思えない

 ・仕事の報酬はよかったが、夫人の収入源は不明

 ・小金を貯めているとの噂

 ・カンガーリュ夫人は 占い師 ではないかと じもとでは うたがわれている。

 ・仕事でいつ訪れても二人以外の人を見ていない

 ・家具調度は四階にしかないと思う


【コトリの証言】

 ・四年ほど前からカンガーリュ夫人にたばこを売っていた

 ・俺はこの界隈に生まれ、今も住んでいる、たばこ屋だ。

 ・被害者親子は六年ほど前に越してきた

 ・以前の住人は宝石職人で、上階を複数人に又貸ししていた

 ・所有者は始めからカンガーリュ夫人で、おかしな使い方をされたくないと自らが移り住み、人に貸さなくなった

 ・カンガーリュ夫人は歳のわりに子供っぽい人で、娘はほとんど見かけなかった

 ・親子だけのひっそりした暮らしで、金には困らないとの噂

 ・夫人は占い師だという話を耳にしたことがあるが、俺はそうは思わない。

 ・他人が家に入るところは見ていない。せいぜい荷物屋が一、二回。医者が十回来たか来ないか


【レオポン警官の証言】

 現場に到着したのは午前三時頃。

 二十人から三十人程度が入り口前に集まり、中へ入ろうとしていた。そこで銃剣を使って扉をこじ開けた。扉は二重の折り畳み式で上下方向に掛る錠がなかった。それまで続いていた悲鳴は、扉を開けるのとほぼ同時に止まった。単独または複数の人間が、ひどく苦しがって発する悲鳴のようだった。

 その後、先頭に立って階段を上り、二階についたところで激しく争う二つの声がした。野太い声と、甲高い異様な声だった。前者はフランス人男性のものと思われ、「こら」、「でやっ」っと聞こえた。後者は外国人もの物と思われ、男女の別はわからないが、スペイン語のように思えたが、スペイン語に詳しくないので意味は分からない。

 他は昨日の新聞に載った通りである。


【イーグルの証言】

 近隣に住む銀細工職人。邸内に入った一団の一人で、おおむねレオポンと同じ証言。

 野次馬が膨れ上がる一方であったために、扉をこじ開けた後で閉め直した。

 甲高い声はフランス人ではなく、イタリア人ではないかと思う。イタリア語の知識はないが、音調からイタリア人ではないかと判断した。男女の別はわからないが、どちらかと言えば男のようだった。被害者親子とは面識があり、二人の声ではないとのこと。


【ダックの証言】

 事件時にたまたま通りかかった料理店経営者で、邸内に入った一団の一人。みずから証人として名乗り出た。

 アムステルダム(オランダ)の生まれで、フランス語は苦手なため、通訳を通しての証言。

 野太い声は「こら」、「でやっ」、「もう、だめ」と言っていた。

 甲高い声はフランス人男性のものだと思い、自分は甲高いのではなくざらついた声だったと思う。早口で、怒っているような、怯えているような声だったとのこと。


【ムートンの証言】

 邸内に入った一団の一人で、ほぼ先頭にいた。イギリス人だが二年前からパリにいた仕立屋。

 太い声はフランス人で「こら」、「もう、だめ」と聞こえた。数人でドタバタ騒ぐような音がしていた。

 甲高い声は野太い声より大きく、フランス人の声でもイギリス人の声でもなかった。ドイツ語は知らないが、ドイツ人のような声だった。どちらかといえば女性のようだったとのこと。


【ハニーの証言】

 邸内に入った一団の一人で、イタリア人の菓子屋。

 太い声はフランス人で、たしなめるような口調だった。

 甲高い声はまったくわからない。ロシア人の声だと思うが、ロシア人と話したことはない。


【バクテリアの証言】

 スペイン生まれの葬儀屋。邸内に入ったが、気が弱いため階段を上がるのはやめておいた。

 太い声はフランス人だろうが、内容までは聞こえなかった。

 甲高い声はイギリス人のもので、英語はわからないが、音調で判断し自信がある。


※カンガーリュ嬢の遺体があった部屋は内側から鍵かかけられており、突入時には無音・無人だったという。

 隣の部屋との間にも扉があり行き来でき、その鍵は開いていたが、隣の部屋の廊下に面した扉は内側から鍵が閉かかっていた。

 二つの部屋の窓は全て内側から釘で固定されていた。

 四階奥の小部屋は扉が半開きになっており物置のようで、そこを含め邸宅内はくまなく捜索された。

 カンガーリュ嬢の遺体が見つかった以外の煙突からは何も発見されず、カンガーリュ嬢でさえ無理やり煙突に突っ込まれていた上、その先はさらに細いため人が出入りする余地はない。

 屋根には扉があるが釘で打ちつけてあり、長らく開閉された形跡はない。

 邸内に入った一団と会わずに外へ出る経路はない。

 争う声が聞こえてから部屋に突入するまでにかかった時間は三分とも五分とも言われたが、鍵を開けるのに手間取ったのは確か。複数名がこじ開けようと試みたが開けられなかったため、扉自体を壊して突入した。


【検視結果】

 ・若い女性は酷い外傷を受け表皮剥奪が見られた。煙突に押し込まれ引き出された時についたものと鑑定。

 ・頸部には圧迫痕と爪痕があったことから、扼殺やくさつされたものと鑑定。

 ・母親の遺体は損壊がすさまじかった。右手と右腕の骨はほぼ壊滅状態にあり、脚の骨や、脛骨、肋骨にも亀裂が生じていた。全身に打撲痕があり、これだけの被害をもたらす方法は検討もつかない。

 ・首は包丁により切られたのではないかと推測される。


【キャットの証言】

 ・銀行業、ドロレーヌ街で息子と共同経営

 ・カンガーリュ夫人は八年前に口座を開設。少額の入金のみで下すことはなかったが、殺される三日前に来店し四千フランを引き出した。金貨で支払われ、行員の一人が自宅まで送り届けた


【アドルフの証言】

 ・銀行社員。事件の三日前にカンガーリュ夫人を自宅へ送り届けた行員。

 ・二つのカバンに分けて運び、玄関で出迎えたカンガーリュ嬢が一方を、もう一方を夫人がそれぞれを受け取ったので辞去。

 ・周囲に人通りの無い寂しい横道であった


 ――記事は最後に、パリの犯罪史上でも稀に見る怪事件であり、警察の捜査が完全に行き詰っているのも異例の事態だと締めくくっていた。

 せっかく記事をまとめたのだが、私には犯人も殺害方法も皆目見当がつかなかった。

 さっそくムッシュに意見を聞こうと思ったのだが、昨日の楽しそうな態度とは裏腹に気の無い返事だったので、私はすっかり意気消沈してしまった。

 さらに、その日の夕刊には今回の事件に関して行員のアドルフが逮捕され現在も拘置されていると記述されていたが、詳細は不明であった。

 むしろ私は、昨晩リシュリュー街やサンロック街の付近で怪物の目撃情報があったという小さな記事の方が気になった。何でも暗闇の中を毛むくじゃらの悪魔のようなものが歩いているのを、何人かが見たというのだ。無論、そんなものが実在するはずがない。大方、新聞でモルチュアリィ通りの事件を知った人々が、恐れるあまりに動物か風に揺れる植物かを見間違えたのだろう。

「君はどう思うかね?」

 顔を上げると、やはり落ち込んだ様子でムッシュがこちらを見ていた。私が見間違いに違いないとの見解を述べると、ムッシュはそちらではないと首を振り言った。

「ああ、そっちか。下ろした金貨は手つかずだったのだし、アドルフが犯人だとは思えないが……。じゃあ誰がやったのかと問われれば皆目見当もつかないな。まずどうやって殺したのかがさっぱりだ。君は? 浮かない顔をしているが、流石の君にもこの事件は難しすぎたのかね?」

 私がそう言ってやると、ムッシュは首を横に振った。

「いいや、そうじゃないんだ。昨晩、君と別れてから寝室に戻って、僕は事件について考えていたのさ。そこでふと、気づいてしまったんだ。カンガーリュ夫人とその娘さんが殺された。カンガーリュ夫人の娘さんと言えば、少しあか抜けないところはあるが、ふっくらとした顔の可愛いお嬢さんだ。胸は体型に反してやや小ぶりだが、全体的にむっちりとしたいい体をしていてね。いや、勘違いしないでくれたまえ。何も身体だけを褒めているんじゃぁないんだ、僕は。少し暗いところはあるが、真面目ないい子なんだよ彼女は。ああ、ミス・コアーラ……。彼女が殺されてしまうだなんて……。僕は犯人が許せなくなって、必ずこの手で捕まえてやろうとベッドの中で奮い立ったのさ。でも、どうだい? 今朝の新聞を読んで僕は何とも言えない気持ちになってしまったんだ。もし僕の見解が正しければ、犯人を殴るということは運命を殴るような、そんなふわふわしたものになってしまうとね……。僕はそれが悲しくて、今朝から落ち込んでいるのさ……」

 ムッシュの言葉に途中まではあきれてものも言えなかったのだが、最後まで聞いた私は自分の解釈を疑うはめになった。

「……ムッシュ。君のその口ぶりだと、犯人がわかったように聞こえるよ?」

「ああ。あれだけの情報ではまだ確信を得ることが出来ないが、大方の見当はついているよ。後は明日の朝、朝食を済ませたらすぐにでも現場に出かけて確認するだけさ」

「ムッシュ。君、それは本当かい? まさか、出鱈目を言っているわけじゃないだろうね?」

 目を丸くして淡々と問う私に、ムッシュは頷いた。

「ああ、本当だとも。しかし、これは思ったよりもつまらない事件だった。もしも推理小説であったなら、結末まで読んだ堅物の読者が思わず本を投げても仕方がないと僕は思うよ。ああ、こんな結末では、ミス・コアーラも報われないではないか……」

「いったい誰が犯人なんだい。もったいぶらず、教えてくれよ」

 私はかけてあるコートに手をかけた。ムッシュのことだ。こういう時は決まって甘味をねだるのだ。いつもなら渋る気持ちも湧くものだが、今回は事情が違う。この怪事件の真相を知ることができるのならば、今からでも酒場に走って何か上等な甘味を用意させることもやぶさかではなかった。

 しかし、ムッシュは私の予想を裏切り言った。

「悪いがまだ話せないよ。今はまだ単なる憶測の段階だ。今日は早く寝て、明日君も現場に着いてくるといい。材料が揃ったら話させて貰うよ。それじゃあ、おやすみ」

 背を向けて寝室に向かおうとするムッシュを、私はすぐに呼び止める。

「待ってくれよ。このままじゃ気になって夜も眠れない」

「仕方がないなぁ、君は。じゃあ、ヒントだけあげようか。犯人の逃走経路だ」

「犯人の逃走経路?」

 私は眉間にしわを寄せる。

「ああ。扉も窓も内側から閉まっていたとあるだろう。犯人は鍵のかかった部屋からどうやって逃走したと思う?」

「……それがわかれば苦労はしないだろう」

 ムッシュはやれやれといった風に首を振った。

「可能性はいくつか考えられるが、確かなのは一つ。あの部屋は密室に見えて密室でなかったということだ。僕は、警察の捜査に見落としがあったのだと思っている。それも、見落としてしまっても仕方のないような見落としがね。それを明日、僕は確認しに行く」

「見落とし……。隠された秘密の抜け道でもあったというのかい?」

「そんなものがあったとして、あの記事から推理なんかできると思うかい? それじゃあ僕にもお手上げだよ。そういった可能性を抜きにして考えて、あの部屋にあった外界と通ずるか所は三か所。扉、窓、煙突かな?」

「そんなことは僕もわかっているさ」

「なら、十分だろう。新聞の記事にあった証言を信じるのなら、見落としの余地を残す通路は一つしか見当たらないはずさ。それでは、おやすみ」

 ムッシュはそう言うと、もう私の呼びかけには手を振るだけで、今度こそ自分の部屋へと入ってしまった。

 私は一人リビングに残され、悶々とした気分のまま眠りにつくことを約束されたのであった。

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