006 聖女様との誓いの儀
僕は聖女ティア様を連れて家に帰った。玄関の扉を開ける勇気がない。
聖女のナイトになった以上、別々に暮らすことは許されない。と言っても家には僕の養父であるじっちゃんがいるから二人っきりじゃない。
世間でいうような未成年者の間違いなんて起きないはず。
だよなタト。
自分に言い聞かす。ナイトと言えば紳士の見本みたいなものだ。欲望剥き出しのビフとは違う。
「あのー、聖女ティア様。本当に僕の家で暮らすのですか」
「はい」
小さな子供みたいにコクンとうなずく聖女ティア様。マジに心臓が痛い。可愛すぎる。理性がぶっ飛びそうだぞ。
「あの、聖女の決まり事ですので・・・」
そう付け足して顔を赤らめる聖女ティア様。
「家に入って落ち着いたら今晩中に誓いの儀を済ませましょう」
口にしてモジモジしだす聖女ティア様。その初々しい姿に緊張感を高めずにはいられないタト。
こっ、今晩中!誓いの儀って・・・。唇と唇を重ねるあの事だよな。僕、まだ十五歳なんだけど・・・。うわっ。緊張で変な汗が出てきた。僕が聖女のナイトになるなんて、未だに信じられない。
「せっ、聖女ティア様。本当に僕なんかでよろしいのですか」
「タト君は私がお相手では嫌ですか」
聖女ティア様の悲しそうな顔にタジタジ。
「いぇっ。ただ、僕達未成年ですよね」
もう少しお互いを知ってからでも・・・。例えば校内予選会の後とか・・・。
「来年には成人します」
そう断言する聖女ティア様。
「いや、その。決まり事でも・・・」
頭の中がパニックに。煮え切らない男なんてカッコ悪いけど、もう、狼狽するしかない。だって、やられっ放しの僕だぞ。
「ならいっそ、ここで済ませましょう」
固まる僕の唇にティア様の唇がそっと触れて離れた。
んんっ。その一瞬で僕の中にもの凄いエネルギーが吹き込まれた。体が燃えるように熱い。
「ふふっ。これでタト君は私の正式なナイトです」
聖女様のナイト。僕は今、正式に聖女様のナイトになったと自覚できる。勇気が心の奥底から湧き上がってくる。
「僕、タトは生涯を聖女ティア様と共にあることを誓います」
こうして僕のファーストキスは聖女様との誓いの儀と言う思いもよらなかった最高の結末を迎えた。玄関前だったことは一生の秘密。誰にも言うものか。
手を取り合い、お互い顔を真っ赤にして向かい合う。感動の余韻にひたる僕達。
ギー。
突然玄関の扉が内側から開いた。顔を覗かせる下着姿同然のムサイ老人と目が合う。
「じっ、じっちゃん」
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