16話 仲間を置いていけるわけないだ…ろ!

ぐっ……!!! 腹はないけど腹いてぇええ……!


「「なぜだ……!?」」


 魔法を発動してからしばらく後…蛾とスラスケはお互いにびっくりマーク付きの疑問符を浮かべていた。

 あっちは固定スキルの『蛾冥の鱗粉』が効いていないことに驚き、こっちはこっちで自身最大の魔法が効かなかったことに驚いている。


 「な、なぜ……っ!!…なぜ、だ?」

 深刻そうな演技を続けるのもしんどい。途中で吹き出してしまった。


 「スラオ…こいつヤバイぞ…」

 「お前達…やるわね…」


 ……ッ…!!もうそれ以上喋らないでくれ………たまらず吹き出しそうだから……!!お互いの相性が悪いだけだっつーの!もう笑い堪えるので精一杯だわ!!


 「すまん、スラオ…俺はここまでのようだ。MP使い果たしてもう動けねえ。お前だけでも逃げてくれ…」

 「お、お、ブッ…お前を! ブッ。置いていけ…っ! るかよ!」


 最後まで言えて良かったわ。スラスケのあの深刻な様子、想像以上に面白すぎて笑い堪えるだけでレベル上がりそう!!!


 『チャリン。』


 本当に上がった!? マジこれ以上笑わせようとしないでくれ!! 

 深呼吸をして、心を落ち着かせて、スラスケのに立つ。ここからは俺の演技力が試されるところだ…


 「スラスケ! 僕はお前を守る!! お前を置いていけるわけないだろ…フッ。僕たちは死ぬ時も一緒だ。」

 「スラオ…お前…」

 「こういう時くらいカッコつけさせろよ」

 「俺の全力魔法でも傷ひとつつかなかったんだぞ…お前が勝てるわけ…」

 「……じゃあ、あいつに勝ったら僕はスラスケより強いって事だよね」

 「そうだが…」

 「僕があいつに勝ったら僕の方が偉いって事だよね」

 「そうだが…」

 「僕があいつに勝ったらスラスケは僕のいうことなんでも聞くってことだよね」

 「そうだが……いやそれは違う」


 「ふっ。とうとうこれを見せる日が来てしまったか。」

 「なんだ…!?」

 「アルティメット形態…はっ!!!」


 丸い身体から千手観音顔負けの触手を一気に展開させる。別にこんなことしなくても触手で叩けばステータス的に一瞬で胴体と頭をおさらばできるのだが、アルティメット感を倍増させるために大量のMPを使ってこの形態で闘う。そしてさらにMPを割増で使って輝きをプラス!! これがスラスケを騙すためだけに僕が考え抜いたアルティメット形態Ver.1だ!!

おそらく、ドラゴンボールのナメック星編でクリリンを殺された悟空がスーパーサイヤ人になった時くらいの衝撃は与えられただろう※鳥山明さん。勝手に作品の使ってごめんなさい。『ドラゴンボール』です。


 「お…お前…その姿は……!?」

 「あぁ、まかせろ。僕は君を守る…ッ!!」


 やべえ。笑いそうになった。危ない危ない。


 「さあいくぞ!!覚悟しろ!!!スラスケの仇だ!!!」

 「別にわらわは何もしておらんがの。じゃが、世界のゴミには死あるのみよ!! うほほほほほ!!」

 「……ッ…!!」

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