15話 さる知恵

 リズのお母さんが無事だったことを確認し、僕達はボスステージに来ていた。そして目の前には羽がとんでもなく気持ち悪いが居る。そう…蛾だ。


 やっぱキモイな……別に見なくてもいいけど一応ステータス確認しとくか。



 種族『蛾王キングバタフライ

 Lv58


 進化まで後Lv--


 HP:1532 MP: 452


 攻撃力: 283

 守備力: 261

 素早さ: 341

 魔法耐性: --


 スキル 突風 負を呼ぶ鳴き声


 固定スキル 蛾冥がみょうの鱗粉


 個体特性 最終進化 森の守神 虫




 よしよし。こいつは冒険者時代と変わっていることは無いな。予想通り魔法も効かないようだ。リズのことがあって半分目的を忘れかけていたが…ふっ。スラスケに僕の存在の大切さを理解させてやろう…


 こいつ意外とスキル持ってないんだな?『突風』に『負を呼ぶ鳴き声』か。まぁ問題ないだろ。蛾冥の鱗粉って奴が様々な状態異常をもたらす厄介なスキルだ。まあ当然、僕らスライムには効かないんだけどね。


 なぜ運営が状態異常を効かない設定にしたのかはわからないが、おそらく冒険序盤では冒険者が使い勝手の悪い状態異常をもたらすスキルを持っていることは非常に稀なので「耐性考えるのめんどくさくね? 無効でいいや」て感じのノリでやったのだと僕は推測している。あの運営ならやりかねない…おそらく進化無制限にしたのもめんどくさかったからだろう。すぐ死ぬやつばっかだしな。


 黙って牽制し合っていると、その様相からは想像できないほどしなやかで艶やかな声が頭の中に流れてきた。


「この世のゴミが何をしに来た」


 超毒舌……なんじゃこいつ…。声のわりにクソほど毒舌じゃないか…まぁ、知っていたけど。20年ぶりに聞くこいつの声はやはり衝撃的だな。


 意外にもこいつの羽のクソ作画の理由はこの声にある。そう、別に物語の伏線とか、そんなものでは一切ない。確かこいつの声優は超有名女優で、その人に対する報酬でこいつを作る予算のほとんどを使ってしまったらしく、作画は一般人に募集したらしいが、小学生が描いたこれしか集まら無かった。と言うのが事実だ。


 しかし、スラスケのプライドを煽るにはむしろこれくらいがちょうどいいってもんだ。

「あぁ!? 誰に向かって言ってんだよ!」

 ほらな。

「お前達以外他にいるか?」

「クソ…がぁああああああ!!!」

「スラスケ! やってしまえー(棒)」

「その汚ぇ羽、ぶっちぎって胴体だけのイモムシにしてやんよぉぉおお!!!喰らえ! 俺の最大最強の…」


 え……最大最強の?


「まぁぁあああああ、ほうぉぉぉおお!!!」


 ためたわりにそのまんまかよ!!!


 しかし、その言葉とは裏腹に、スラスケの紫の体から激しくイナズマが走る。そして発動までの時間がいつもより長い…


「なんだ、自分の体をライトアップするのがお前の最大最強のま・ほうか。うほほほほ。笑わせてくれるわねぇ」


 この、ツッコミどころ満載な笑い方…は置いといて。スラスケの魔法のタメが長すぎる。いつもであれば『魔力操作』のスキルはタメをかなりショートカットできる為すぐに魔法は発動する。

 どうしたんだ…? こんなの見たことないぞ…? そう思いながら不安になったのでステータスを覗く。


 種族『魔スライム』

 HP: 764 MP: 324/957


 あれ?あんまり減ってない…?普通に魔法使えば一気に減るはずなんだけど…いや待て!


 MP: 637/957


 増えた!?


 MP: 137/957


 また減った!?


 MP: 720/957


 また増えた!? どういうこと!?


 驚いている間にもスラスケの体に帯びるイナズマの激しさと規模がみるみる大きくなっていく。


「ふはははははは! 俺の全ストックを魔力に変換した、文字通り俺の最大最強の技! 食らうがいいぃぃぃぃぃぃぃ!!! しねぇぇぇええ!!!」


 そんな器用なことができたのかぁぁああ!?

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