捕獲

(愛したものは、閉じ込めてしまえ)


 瞼を持ち上げて真っ先に目に入ったのは黒い格子だった。渚は今、巨大な籠の中に閉じ込められていた。


「目が覚めたんだね」


 その声に反応して顔を向けると、其処には薄く笑みを浮かべた男が居た。椅子に座って足を組んで、自分を優しい眼差しで見つめている。すぐ體を起こそうとして嵌められた枷に両手足を拘束されていると気が付き、それが叶わない事を知る。


「逃げ出そうという考えだけは起こさない方がいい。大丈夫、抵抗さえしなければ君に危害を加えるつもりはないから」


 ゆっくりと近づいてくる男の縦に長い影に、心の底から恐怖を感じる。何か言葉を発しようとするのだけれど、役立たずの喉からは何も言葉は生まれなくて、ただ空気を擦るような音が漏れるばかりだ。男は慈しみに満ちた瞳で自分を見据えながら小指に己の長い指を絡め、顔を寄せてこう云った。


「これで君は――永遠に僕の物だ」


 もう逃げられない事を悟って、籠の中の小鳥は悲しげに高く啼いた。

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