相愛
一つ目は領地が太陽が
奴の国で栽培された作物はとても瑞々しく栄養価が高いためそれらの作物を食べて生きていた
二つ目は
神器の名を
故に
いかに絶対的な兵力差のある国が相手であろうとも
それは単に国王イサナの率いる国兵が屈強だっただけではなく、それを陰で支える
日が没し、
日中の市場の賑わいが嘘だったかのように鈴虫が夜風が奏でる葉音とともに一晩限りの演奏会に興じていた。
「ミコトよ、入るぞ」
イサナが部屋の扉を開けると、着替えの最中であったのか着物をはだけた妙齢の美女が一人。
「あら、イサナ様」
「す、すまん…着替えの最中であったか」
「いえ、問題はありません…むしろミコトは嬉しいのでございます。今晩も来て頂けたんですね」
「たわけ…妻の身体を労らぬ夫が居る訳がなかろう」
「ふふっ」
現在の
ミコトは人見知りな上、体も弱いためあまり人前には姿を見せることもなく一日中部屋から出ない日もあった。
ミコトのことを知る者は実夫のイサナとその子供達を除けば、屋敷に住まうある程度の地位の人間に限られていた。
ミコトの容姿は太陽の生写しと称される程に光輝く艶やかな美女であったとされている。
しかし美人薄命という言葉があるように、ミコトの身体は今、不治の病魔に侵されていた。
「痛むのか…その胸は」
「はい。最初は胸に
ミコトの左乳房は痛々しい程に腫れ上がり左右非対称になっていた。
イサナも苦しそうなミコトの様子に酷く心を痛めていた。
「
「もしも……叶うのなら俺がその苦しみを代わってやりたい。こんな腕っぷしだけが自慢の王なんかより
「ふふっ…イサナ様は未だ御自分の魅力を理解しておられないのですね…」
「イサナ様が戦の先陣を切ることで兵は死に臆することなく立ち向かっていけたのではないのですか?貴方の逞しい背中に、貴方が血反吐を吐きながらも命賭けで掴みとった勝利に
「ミコト…」
「わたくしだってその民の一人です。
「それは俺だって同じことだ…お前がいたから俺は
「よもや両手で抱えきれないほどの幸せをイサナ様から頂いたのにも関わらずまだそのお返しが出来ておりません…もっと
「もうどうすることも出来ないのだな、俺には」
ミコトは力の無い笑顔を貼り付けた。
それはイサナの問いに対する答えであり彼女なりの気遣いでもあった。
「そういえば先程…
「もういい…やめろ。これ以上
「それでもわたくしは己の
「………わかった、申せ。どんな預言を賜ったのだ?」
イサナは渋々聞き入れた。
気弱な見た目に反してミコトが王である自分以上に強情な性分なのはイサナが一番良く分かっていたからだ。
ミコトは預言の内容を鮮明に思い出すため目を閉じ深く呼吸をし、唇を静かに震わせるように言葉を発した。
「アマミコはきっと私以上…いいえ歴代のどの巫女にも勝る偉大な
「あぁ」
「メイはあなたに似て屈強な武人になることでしょう。ですが力に溺れ道を誤ることが無い様に貴方があの子に道を示してあげてください」
「分かった」
「そして最後の預言です」
ミコトは閉じていたまぶたを開き、イナサの顔をしっかりと見据えた。
「今から一月後…
「
鋼鉄の国——
自国が所有する鉱山から掘り出される金銀銅などの豊富な資源と大陸の大国より伝来した高度な鋳造技術によって次々と強力な武器や防具が作られ、それを利用し数々の小国を滅ぼしていった大国だ。
戦がない時でも
大国の中の大国。
最強の中の最強。
両国の兵力差は歴然であった。
しかし同時に天下統一を大成する上で避けては通れない宿敵でもあった。
「大戦の最中…あなたは戦地で
ミコトはかなり無理をしているようだった。
預言を二三行っただけではあったものの、既に息が弾み口調が辿々しくなってしまっている。
「その少年が…いずれ訪れる…亡国の危機を救う…一筋の光と…なるでしょう」
「わかったもういいこれ以上は無理をするな」
「そうですね…少しわたくしも…疲れました」
「あぁ…もう疲れたろう……ゆっくりと休むがよい」
「イサナ様…どうかわたくしの手を…握っていて下さいませんか?わたくしが眠りに着くまでの間だけで構いません」
イサナは弱弱しく差し出されたミコトの手をそっと握った。
生人の手と思えぬほどにミコトの手は冷えきっていた。
命の灯火が消えることを如実に示していたひ弱な体温にイサナは込み上げてくる感情をグッと塞き止め、気丈に振る舞った。
「いくらでも握っていてやる…眠りにつくまでと言わずずっと一緒にいてやるさ」
一枚の布団に二人の大人。
側から見れば些か窮屈に見えるだろう。
ところが当の本人達の姿は幸せに満ち溢れていた。
永遠の愛を誓った日を思い出すかのように。
「あぁ…温かい…今宵に限っては…良き夢が見れそうです」
「おやすみ…ミコト」
「おやすみなさいませイサナ様」
「
今宵の月は欠けの一切無い満月で、月明かりが満遍なく身分の差もなく平等に
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