超神化鉛筆コロコロール!〜転売目的でコロコロ鉛筆買ったけどうっかり本物の神様の宿ったコロコロ鉛筆を手に入れてしまったせいで神様から一緒に世界を救ってくれってせがまれた件〜
第ニ転-いきなり世界を救えと言われても困る/無職弄りをしてくるホモガキには気をつけろ。
第ニ転-いきなり世界を救えと言われても困る/無職弄りをしてくるホモガキには気をつけろ。
『まずは状況の確認じゃ。どうやら見渡す限り人間の住処のようじゃが……』
コロコロコロ。
『むっ、なんじゃ? 霊体ではないのに体が動かせるぞ』
コロコロコロ。
『妙じゃのう。私の神体は樹齢1千年を超える巨大な御神木じゃ。枝を揺らすくらいならともかく移動することなど出来なかったはず……というか今のワシの体なにこれ?』
コロコロコロ。
『え、やだこれ……いや! いやいやいやいや! 冗談キツいってこれ鉛筆じゃん!』
「ふぃー腹減ったーー。今日はうどんでパーチーだ…………ぜ?」
『ハッ!?』
「え……っ?」
『……』
「……」
『ひ、暇を持て余した神々のあそ』
「びゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
***
コト。
「粗茶ですが、どうぞ」
『これはご親切に、頂こう』
鉛筆さんは湯呑みに淹れられたお茶に細い体を挿し入れた。
先にいっとくが俺は何もしていない。この喋る鉛筆さんがひとりでに転がり、ひとりでに湯呑みの中に入って行ったのだ、なんで? 俺も分からん助けて。
『んっ、んむ。味は悪くないな』
えっ、もしかして飲んでる!? 鉛筆が!? どうやって!?
『さて其の者、名をアラ太と言ったな。そしてワシは今鉛筆の姿に見えていると』
「誰がどう見ても今巷で話題のコロコロ鉛筆ですね」
『うむ。これは思った以上に由々しき事態かもしれんな……ワシの体内で封じていた
「えっと、鉛筆さんには色々聞きたいことがあって全然考えが纏まらないんですけど……つーかさっきからどこでお茶飲んでるんすか?」
『ワシはもともと木なのでな、水分補給が必要なんじゃよ。ズズズズ、あーありがとう。おかげで生き返ったぞ。五臓六腑に染み渡るとはこの事じゃな』
「俺にはあなたの五臓六腑どころか顔がどこなのかもわからないんですけど!」
そりゃ鉛筆なんだから元は木でしょうよ!
俺が言いたいのはそこじゃねえよ!
『さてと……落ち着いた所で本題に移ろうか』
「は、はぁ……」
俺の中では何一つ疑問が清算出来ていないし、全然落ち着かないんだけど。
『単刀直入に言う、君に世界の危機を救って欲しいのだ』
「はい?」
突然何を言ってるんだこの喋る鉛筆さんは。
世界の危機ってなんだよ。
そもそも喋る鉛筆ってなんだよ。
『申し遅れた、ワシは
さっきから予想の斜め上をいく衝撃展開ばっかりで一向に理解が追いつきませんが、どうやらこの鉛筆さんは実は神様だったらしいです。
というわけで回想終了。そして現在に至る。
「えっと、確か青龍ってあれですよね。よくアニメとか漫画に登場するキャラクターのモデルになる神様ですよね? 元々は中国の神話に登場する神様でしたっけ?」
「それは先代の青龍神がルーツじゃな。ワシはまだまだピッチピチの1200歳じゃぞ。若いじゃろう?」
「人間基準だと仙人とか不老不死とか言われちゃう年齢なんで同意しかねますね」
「なっ!? ど、同期の神から『青龍様は年輪が目立たなくて羨ましいですね』って根っからの評判なんじゃぞ! 木だけに!」
「知らねーよハゲ! 心底どうでもいいわそんなこと!」
『ぐぬぬ……』
よく分かんねーけどそれって人間に例えると『〇〇さんって年齢の割に皺が目立たなくて羨ましいわ、素敵』的なお世辞だろ。何真に受けてんだコイツ。
『そこまでいうなら己の目で確かめてみよ! ほらほら!』
グリグリグリグリ。
「いだだだだだだだだ! 分かりました! 分かりましたからグリグリ体を押し付けてくるのやめて!」
まったく、何が楽しくて鉛筆の断面なんて見なきゃならんのだ。
えーとどれどれ……。
「断面図見る限り……確かに目立って無いですね年輪」
『ふふふ……そうじゃろそうじゃろ。ワシの自慢じゃ』
「まぁ鉛が詰まってて見えないだけなんすけどね」
どうあがいてもただの鉛筆です、本当にありがとうございました。
『ぐっ……うぐぐっ……! ぬわァァァァァァァァン! やっぱワシこんな姿やだァァァァァァァァ! 元に戻してよォォォォォォォォ!』
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!
「とりあえず近所迷惑なんでそのゴロゴロするやつやめてもらっていいですか!!」
ピンポーン!
「こんにちはー! 大家の
『むっ?』
「ハッ……ヤバいヤバいヤバい! 隠れなきゃ!」
『なんじゃアラ太、急に慌てて』
「大家のババアだ! 家賃の徴収に来やがったんだ!」
くっそ……来月末まで待ってろつったのにせっかちなババアだ!
『大家?』
「このアパートで一番偉い人だよ!」
ピンポーン!
「アラ太さーん。隠れたって駄目ですよー。どうせいつもみたいにタンスと壁の間に隠れてやり過ごす気でしょー」
な、なんでそんなことまで知ってんだババアァァァァァァァァ!?
ピンポーンピンポーンピンポーン!
「5秒以内にドア開けないとここから出て行ってもらいますよー」
「っ!?」
「いーち! にさんよーん!」
ちょちょちょ速い速い速い! 2と4の間異常に速い!
待って!今出るから待って!
ガチャ! ズサササーーッ!
「来月にはちゃんと耳揃えて払いますんでお願いします! この歳でホームレスは嫌! 許して! 許せよぉぉぉぉ!」
俺はドアを開けると同時に鮮やかなスライディングと共にこれでもかってくらい床に頭を擦り付けたダイナミック土下座を披露した。
社会人になってから死ぬほど鍛えたスキルの一つだ。
ハハッ、冷たい床は俺の恋人さ!
何度キスの雨を降らせたかわかんねえぜ!
「ぷっっ! あははははは! やっぱおじさん最高だわ!」
「え?」
恐る恐る顔をあげるとそこには当アパート——コーポキサキの大家の姿は無く、ダイナミック土下座をかます俺の頭上には健康的に日焼けした美少年がニヤニヤと小馬鹿にしたような顔で覗き込んでいた。
「おーじーさーん? 心配しなくても母ちゃんは今日いないから安心しろって!」
「あれ、ババ……んん! 君のお母さんは?」
この少年の名前は
俺の天敵であるコーポキサキの大家の息子だ。
「今の母ちゃんの声、オレの声真似なんだ。ニシシ……うめーだろ? その気になればおじさんの声だって完コピ出来るぜ」
何その怪盗ルパンみたいなとんでもスキル。
俺のダイナミック土下座なんかより100倍使えんじゃん。
「じゃあ今日はましろだけかぁ。なんだぁ……脅かすんじゃねーよ」
「なんだとはなんだよ、せっかく遊びにきてやったのに」
「あのなぁましろ……こんな夜遅くに小さい子供が知らないおじさんの部屋なんかに遊びにきちゃいけないよ。帰って宿題でもやってな」
ただでさえあのババアに生殺与奪を握られてる状況だしな。
一緒にいることがバレたら色々とめんどくせーし。
「知らなくなんかないよ! オレとおじさんの仲だろ!」
「お前と俺の関係は平たくいうと魔王の息子とザコ勇者みたいな関係なの! 仲良くおてて繋いでフォークダンスを踊るわけにもいかないんだよ!」
「あっ、ザコって自覚あったんだ! ぷっ、マジウケる!」
「帰れ」
グググググ……。
「しーめーなーいーでー!」
「あーしつけえなぁもう!」
「だってよぉ……母ちゃんは帰ってくるの深夜になるって言ってたし、姉ちゃんも受験生で夜遅くまで塾で勉強してっから暇なんだよぉ……」
「はぁ……」
「頼むよぉ……おじさーん」
「そんな眼をうるうるさせてもダメなものはダーメ。俺だっていろいろ忙しいんだよ」
「仕事もしてないのに? 彼女もいないのに?」
「しばき倒すぞクソガキ! ほらもう帰った帰った」
「なんだぁ残念……おじさんがお腹空かしてると思ってオレがわざわざ手料理作って来てやったんだけどなぁ……」
「……っ!」
「ちゃんとおじさんの好みに合わせて作ってきたのになぁ、鳥の塩唐揚げにポテトサラダに出し巻き卵とか……作りたてでホクホクだぜ?」
「…………っ!!!」
「あっやっべー、ただの炭酸飲料と間違えていつも母ちゃんが飲んでる変な缶ジュース持って来ちまったなー。えーとアサヒスーパードラ」
「よし入れ!!!!!」
「よっしゃあ! さっすがおじさん話が分かるぜ! お邪魔しまーす!」
『アラ太よ……君にプライドという物は無いのか……』
***
「美味い! 美味すぎる! 悪魔的だ!」
「だろ? ここん所は母ちゃんも姉ちゃんも忙しいから飯はオレが代わりに作ってんだぜ。偉いだろ?」
「あぁ腹が満たされていく……生きてるって素晴らしい……っ!」
「ちゃんとオレの話聞いてんのかよ」
「聞いてる聞いてる。おかわりもあるから遠慮すんなってことだろ?」
「頭の中食うことばっかりか! どんだけ腹減ってたんだよ! ほらよそってやるから茶碗出せ!」
「へへぇ……!」
「なんだよその情けねー面は。どうよおじさん、オレの手料理で胃袋掴まれたか?」
「そりゃもうガッチリホールドですよ旦那」
「よしよし。じゃあそれそろオレの物になってくれるって事だな」
「あ? 10年はえーよホモガキが」
「でもおじさんだって満更じゃないんでしょ? 初めて会った時オレを女と間違えてたくらいだし。いざ正体明かししたらめっちゃ動揺してたじゃん。この変質者。ロリコン。万年無職男」
「主に動揺したのはお前が大家の子供だって知ったからだよ!」
昔のましろはやたらと女の子みたいな服装してたから間違えたんだよ。本人曰く姉ちゃんのお下がりばかり着させられてたらしく、それが原因で学校の同級生にいじめられた所に仲裁に入ったら妙に懐かれて今じゃすっかりおもちゃ扱いだ。
ところが大家でもあるコイツの母親は俺とましろが仲良くしているのが勘に触るらしく、コイツに気に入られる程、大家のヘイトゲージが上昇する悪循環に陥っている。
当のましろはそんなこと歯牙にもかけず、ズカズカ侵入しては遊べや付き合えやどっか連れてけやとせがんでくる。
そんなに社会的弱者をいじめて楽しいかよ……。
「あれ、これコロコロ鉛筆じゃん。おじさんコロコロ鉛筆なんて持ってたっけ?」
「あぁ、転売目的で買ったらハズレ引いちまってな。処分に困っていたところだ」
変な神様までおまけで付いてきちゃったし。
踏んだり蹴ったりだよマジで。
「じゃあオレとやろーよ! コロコロ鉛筆!」
「え、お前も持ってんの?」
「うん! これがオレの相棒ヒートファルコンだ!」
ましろが持っていたのは炎を纏った大きな翼を広げ、鋭い爪を見せつけるハヤブサの絵の書かれた赤属性のコロコロ鉛筆——ヒートファルコンだった。
「かっこいいじゃんかよ……」
「おじさんの癖に分かってんじゃん。ヒートファルコンは最新弾の環境じゃ使用率トップクラスのガチ鉛筆だ。時価3万円は下らない一品なんだぜ!」
「けっ、金持ちの坊ちゃんが」
「負けたら勝った方のほっぺにチューな」
「それ結局お前しか得しないじゃん」
「オレは別に唇同士でも……」
「ざけんな! コンプライアンス的にアウトだ!」
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